年賀状の「去年」「昨年」「旧年」、どれが正しい? 本年・今年の使い分けも
1なぜ「去年」はダメ? 「去る」は忌み言葉
「去年」「昨年」「旧年」。辞書を引くと、意味はどれも「今年の前の年」で同じです。違うのは、文字が持つイメージです。
お祝いの場では、縁起が悪いとされる言葉を避ける習わしがあります。これを忌み言葉といいます。日本郵便の年賀状の解説では、「去る」「失う」「衰える」「枯れる」「倒れる」などを挙げ、前の年を表すときは忌み言葉の「去年」ではなく「昨年」や「旧年」と書くと説明しています。
「去年」の「去」には、去る・離れる・別れるという意味があります。新しい年の始まりを祝うはがきに、別れを思わせる字は入れたくない。そういう気づかいです。
なお、これは年賀状やお祝いの手紙での話です。ふだんの会話で「去年の夏にね」と言うのは、何の問題もありません。
2「旧年中」と「昨年中」、どっちが正しい?
「どちらかが不適切と聞いた」という人がいますが、どちらも正しい言い方です。『デジタル大辞泉』は「旧年」を「去年。昨年」と説明し、用例に「旧年中はお世話になりました」を挙げています。
使い分けのコツは次のとおりです。
・旧年:「旧年中は大変お世話になりました」「旧年中はご愛顧を賜り」のような、お礼の決まり文句にぴったり。少し改まった響きがあります。
・昨年:「昨年10月に結婚し、初めてのお正月を迎えました」のように、具体的なできごとを書くときに自然です。日本郵便の文例でも、結婚の報告にはこちらが使われています。
「旧年のご愛顧」と書いて出してしまった、という人も心配いりません。正しい言い方です。「昨年より成果をあげられるよう」のような文も、そのままで大丈夫です。
| 書きたいこと | 年賀状での書き方 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|
| 前の年へのお礼 | 旧年中は大変お世話になりました | 去年はお世話になりました |
| 前の年のできごと | 昨年は家族で〇〇へ行きました | 去年は〇〇へ行きました |
| 新しい年のお願い(目上へ) | 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます | 今年もよろしく! |
| 新しい年のお願い(友だちへ) | 今年もよろしくね | — |
| 新年のあいさつ | あけましておめでとうございます | 新年あけましておめでとうございます |
3「本年」と「今年」、どちらが丁寧?
これもどちらも使えます。「本年もどうぞよろしくお願いいたします」は、日本郵便の文例にも出てくる定番の形です。漢字の「本年」のほうが改まって聞こえるので、目上の人や仕事の相手には「本年」、友だちや家族には「今年もよろしくね」と使い分けると自然です。
1枚の年賀状の中で「旧年」と「本年」、「昨年」と「今年」のように組み合わせをそろえると、文章が落ち着きます。
会社の年賀状なら「旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます 本年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます」のように、「旧年」と「本年」を組にするのが定番の形です。
4「去年」は忌み言葉なのに、新年の季語でもある
ここで、ちょっと意外な話を。俳句の世界には「去年今年(こぞことし)」という言葉があり、なんと新年の季語です。『デジタル大辞泉』は、新年にあたって、年が去り年が来る時の流れへの感慨を表す言葉と説明しています。
有名なのが、高浜虚子の「去年今年貫く棒の如きもの」。年が改まっても、時間は1本の棒のように貫いて流れている、という句です。「こぞ」は前の年を表す古い言葉で、『古今和歌集』の歌にも使われています。
昔の人にとって「去年」は、新しい年を迎えた感動を表す言葉でもありました。年賀状で避けるのは「去」という字の印象のためで、言葉そのものが悪いわけではないのです。
5ほかにも気をつけたい年賀状の言葉
「去年」のほかにも、年賀状で避けたい書き方があります。
・忌み言葉:失う・衰える・枯れる・倒れる・滅びる・「禍」の字など
・重ね言葉:「新年あけましておめでとうございます」は、「新年」と「年が明ける」が同じ意味なので重複。「あけましておめでとうございます」か「新年おめでとうございます」のどちらかにします。「謹賀新年」と「謹んで新年のお祝いを申し上げます」を並べるのも同じです。
・句読点:「、」「。」は「区切りをつける」ことを思わせるとして、使わないのがマナーと言われています。
❓FAQあわせてよく聞かれる質問
年賀状に「去年」と書いてしまったら失礼?
意味は正しく伝わるので、わざわざおわびをする必要はないでしょう。次から「昨年」「旧年」にすれば十分です。
「旧年中」と「昨年中」はどう違う?
意味は同じで、どちらも正しい言い方です。「旧年中」は少し改まった響きがあり、お礼の決まり文句によく使われます。
年賀状は「本年」と「今年」どっち?
どちらも使えます。目上の人や仕事の相手には改まった「本年」、友だちには「今年」を使うのが自然です。
年始のメールでも「去年」は避ける?
新年のあいさつのメールなら、年賀状と同じく「昨年」「旧年」にしておくと安心です。ふだんのメールや会話では「去年」で問題ありません。
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