勉強法の常識No.S64
ガムをよく噛むと、集中力や記憶力が上がるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:まだ決着していない
「効いた」「効かない」の両方の結果があります。効くとしても、噛んだあとの短い時間だけのようです。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 4:48
ガムを噛むと、記憶がよくなる。
2002年、イギリスのノーサンブリア大学のウィルキンソンらが、学術誌にこんな短い報告を載せました。健康な人がガムを噛むと、作業記憶、つまり情報を一時的に頭に置いておく力がよくなった。単語を覚えるテストでも、直後に思い出すときと、時間をおいてから思い出すときの両方で成績がよかった。ただし、注意力には効果がなかった、という内容です。
噛むだけで記憶がよくなるなら、こんなに手軽な方法はありません。ところが、この話はそこから、思わぬ方向へ転がっていきます。
調べ直すと、記憶は変わらなかった
2004年、ドイツのレーゲンスブルク大学のトゥッハらが、同じ学術誌で、この結果を確かめ直しました。
トゥッハらは、健康な大人に、4つの条件でテストを受けてもらいました。何も噛まない。ガムなしで、噛むまねだけをする。味のないガムを噛む。スペアミント味のガムを噛む。条件の順番は、人によってばらばらにしました。こうすれば、あごを動かすことの影響と、ガムの味の影響を、分けて見ることができます。
結果、ガムを噛んでも記憶はよくなりませんでした。注意力への影響は、ひとことでは言えないものでした。集中を長く保つ力はよくなった一方で、合図にすばやく反応する力や、注意を切りかえる柔軟さは、噛むことでかえって悪くなったのです。トゥッハらは、ガムで頭の働きがよくなるという主張は、慎重に受け止めるべきだと結論しました。
効くのは、噛んだあとの15分ほど
なぜ、研究によって結果が食い違うのでしょうか。手がかりを示したのが、2011年、アメリカのセントローレンス大学のオナイパーらです。
彼らは、ガムを噛むタイミングに目をつけました。テストの前にガムを噛む人、テストのあいだずっと噛む人、まったく噛まない人を、いくつかの実験で比べたのです。
テストの「前」に5分間ガムを噛んだ人は、いくつもの課題で成績がよくなりました。ただし、その効果はテストが始まってから15〜20分しか続かず、すべての種類の頭の働きに効いたわけでもありませんでした。テストの「最中」にずっと噛み続けた人では、効果は見られませんでした。
オナイパーらは、2つの仕組みを組み合わせて説明しています。ひとつは、噛むことで一時的に目が覚めること。ただし、その効果は長続きしません。もうひとつは、噛みながら考えると、噛む動きと考える作業が、限られた頭の力を取り合ってしまうことです。だから、前に噛めば少し効き、噛みながらでは効かない、というわけです。著者らは、この考え方で、ほかの研究のばらばらな結果も説明できるかもしれない、と述べています。
決着がつくまでの使い方
研究ごとに、測った力も、噛むタイミングもばらばらです。「効いた」「効かない」の両方の報告があり、効くとしても、短い時間に限られるようです。ガムで記憶力が上がる、と言い切れる段階ではありません。
試験中にガムを噛めば集中できる、と考える人もいるかもしれません。けれども、噛みながら解くと記憶や判断がよくなる、という裏づけは、ここで見た研究にはありません。トゥッハらの実験では、すばやく反応する力や、注意を切りかえる力は、むしろ落ちていました。
それを踏まえると、ガムは「勉強を始める前の眠気覚まし」くらいに考えておくのがよさそうです。机に向かう前の5分、ガムを噛んで頭を起こしてから始める。そして、問題を解き始めたら、ガムは出してしまう。今の研究と矛盾しない使い方は、このあたりです。
試験会場ではガムが禁止されていることも多いので、ルールは確認しておきましょう。また、眠気がとても強いなら、ガムより先に睡眠を見直すべきです。
ガムは、試験中に頼る切り札にはなりません。せいぜい、勉強を始めるときの合図くらいのものです。
参考文献
Wilkinson L., Scholey A., Wesnes K. (2002). Chewing gum selectively improves aspects of memory in healthy volunteers. Appetite, 38, 235-236.
doi.org/10.1006/appe.2002.0473✓ 実在と内容を確認済み
Tucha O., Mecklinger L., Maier K., Hammerl M., Lange K. (2004). Chewing gum differentially affects aspects of attention in healthy subjects. Appetite, 42, 327-329.
doi.org/10.1016/j.appet.2004.01.003✓ 実在と内容を確認済み
Onyper S., Carr T., Farrar J., Floyd B. (2011). Cognitive advantages of chewing gum. Now you see them, now you don't. Appetite, 57, 321-328.
doi.org/10.1016/j.appet.2011.05.313✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





