勉強法の常識No.S70
目標は、人に言わない方が達成しやすいって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:まだ決着していない
人に言うと「なれた気」になるという研究と、言ったほうが進むという研究があります。誰に、どう伝えるかで変わりそうです。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
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新学期の初日、「今年は毎日、英単語を30個覚える」とSNSに書きこむ。友だちから反応がいくつも届き、なんだか少し、えらくなった気がする。
そして1週間後、単語帳は机の端に置かれたまま。そんな経験はないでしょうか。
「目標は人に言わないほうがいい」という話は、こんな場面と結びつけて語られます。言っただけで満足してしまうから、というのです。この説には、たしかに研究の裏づけがあります。けれども、逆の結果を示す研究も出てきました。
「なりたい自分」は、言うと遠のく
2009年、ゴルヴィツァーらは、4つの実験の結果を発表しました。調べたのは、「なりたい自分」に近づくための行動の予定です。たとえば、弁護士になりたい人が、法律の専門誌を定期的に読むと決めるような場合です。
予定を他人に知られた人は、知られなかった人より、その行動に熱心に取り組まなくなりました。1つ目の実験では、1週間にわたって取り組みを続ける様子を調べています。2つ目と3つ目の実験では、実験室で、行動のチャンスにすぐ飛びつくかどうかを調べました。どちらでも、同じ傾向が出ました。
3つ目の実験からは、この傾向が、なりたい自分に強くこだわっている人で見られることもわかりました。こだわりの弱い人では、見られなかったのです。
理由について、著者らは4つ目の実験から、こう考えています。予定を人に知られると、まだなっていないのに、もう「なりたい自分」になれたような感覚が、早々に生まれてしまう。だから、行動に向かう力が弱まる、というのです。
伝える相手が「上」だと、伸びる
一方、2020年、クラインらは、目標を伝える相手に注目しました。4つの研究で、いろいろな人や目標、場面を調べています。
その結果、目標を伝える相手を、自分より立場が上だと感じるほど、目標へのこだわりが強まり、その後の成績も高くなりました。あいだに入っていたのは、「評価される」という緊張感です。著者らは、目標を人に知らせるだけでは足りず、立場が上だと感じる相手に知らせることが大事だ、と書いています。
話した人ほど、支えを受けた
さらに、2026年に学術誌に載ったピーツらの論文は、4つの研究、合わせて1,035人を調べました。
1つ目の研究では、参加者に自分の目標を挙げてもらい、1週間後に、そのあいだに誰かに目標を話したかを尋ねました。目標を話していた人ほど、周りから多くの支えを受け、目標に向けてより努力していました。
2つ目と3つ目の研究では、次の1週間で誰かに目標を話すよう割り当てられた人が、周りからより多くの支えを受けたと答えました。そしてその支えが、努力や進み具合の高さにつながっていました。4つ目の研究では、その場にいる人に目標を話した組で、努力が高まっていました。ただし、支えが増えたかどうかは、はっきりしませんでした。
著者らは、目標を話すことの利点を示しつつ、誰に、どのように話すかを考える大切さも強調しています。
言うなら、相手と中身を選ぶ
3つの研究は、一見ばらばらです。けれども並べてみると、ひとつの見方が浮かびます。目標を人に言うこと自体の良し悪しより、どんな目標を、誰に、どう伝えるかで結果が変わる、ということです。研究ごとに調べた目標や場面も違うので、まだ決着はついていません。
勉強に当てはめるなら、原田英語のおすすめは次のとおりです。「英語ができる人になる」のような、なりたい自分を宣言して満足しないこと。言うなら、「毎朝15分、単語帳を1周」のように行動の中身を伝え、進み具合を確かめてくれる人を相手に選びます。先生や塾の講師、一緒に勉強する友だちなどです。
そして、言ったあとこそが本番です。「言えた」は、まだ何も始まっていないという印にすぎません。
参考文献
Gollwitzer P., Sheeran P., Michalski V., Seifert A. (2009). When Intentions Go Public. Psychological Science, 20, 612-618.
doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02336.x✓ 実在と内容を確認済み
Klein H., Lount R., Park H., Linford B. (2020). When goals are known: The effects of audience relative status on goal commitment and performance. Journal of Applied Psychology, 105, 372-389.
doi.org/10.1037/apl0000441✓ 実在と内容を確認済み
Peetz J., Buehler R., Wells T. (2026). Goals Out Loud: Telling Others About a Goal Increases Support Received and Facilitates Goal Pursuit. Personality and Social Psychology Bulletin, 52, 3447-3463.
doi.org/10.1177/01461672251382271✓ 実在と内容を確認済み
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