勉強法の常識No.S71
あくびをすると、脳に酸素がたくさん送られて、頭がすっきりするって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
酸素を多く吸っても、あくびは減りませんでした。あくびのあとに脳が目覚めた証拠もなく、本当の役割は研究の途中です。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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あくび、あくび、あくび。
この文字を読んでいるうちに、あくびをしたくなった人もいるかもしれません。あくびは、人があくびをするのを見ただけで、うつることがあります。
あくびについては、もうひとつ、よく聞く説明があります。あくびは脳に酸素が足りないサインで、大きく息を吸って、脳に酸素を送っている。だから、あくびをすると頭がすっきりする、というものです。
もっともらしく聞こえる説明です。けれども、実験で確かめると、うまく合いません。
純粋な酸素を吸っても、あくびは減らない
1987年、アメリカの心理学者プロヴァインらは、この「酸素説」を実験で調べました。よく引き合いに出されるのに、それまできちんと確かめられていなかった説です。
参加したのは、大学生くらいの年齢の人たちです。吸ってもらったのは、3種類の空気でした。ふつうの空気、酸素100%の空気、そして二酸化炭素を3%または5%に増やした空気です。
考え方はこうです。もし血液中の酸素が足りないせいであくびが出るなら、酸素100%の空気を吸えば、あくびは減るはずです。もし二酸化炭素が多すぎるせいなら、二酸化炭素を増やした空気で、あくびは増えるはずです。
結果は、どちらも外れました。どの空気を吸っても、あくびに、はっきりした変化はありませんでした。呼吸の回数は、酸素でも二酸化炭素でも増えたのに、です。
続く実験では、呼吸の回数が2倍になるほどの運動をしてもらいました。それでも、あくびは増えませんでした。プロヴァインらは、あくびと呼吸は別々の仕組みで動いていて、あくびの主な役割は呼吸ではないと考えました。
あくびのあと、脳は目覚めていなかった
では、あくびで頭は目覚めるのでしょうか。2007年、スイスのグギスベルクらは、強い眠気に悩む人たちを調べました。
参加者は、静かで暗い部屋で、眠らないようにがんばります。そのあいだに出るあくびと、脳波、心拍の変化を記録しました。比べる相手として、ふつうに体を動かしたときの変化も調べています。
あくびの前後には、体を動かしたときより、眠いときに増える脳波が多く出ていました。あくびは、たしかに眠気が強まったときに出ていたのです。ところが、あくびのあとで、脳の目覚めの度合いが上がった様子は、測れるほどには見られませんでした。著者らは、あくびは眠いから出るが、目を覚ます効果を示す証拠はない、と結論しています。
脳を冷やす説と、その先
あくびの役割については、ほかにもいくつかの説があります。そのひとつが、脳を冷やすため、という説です。
2007年、ギャラップらは、人があくびをする動画を見てもらい、あくびがうつる割合を調べました。おでこに温かいパックや室温のパックを当てた人では、あくびがうつった割合は41%。冷たいパックを当てた人では、9%に下がりました。鼻で息をするよう指示された人では、あくびがうつった人はいませんでした。
ただし、この説も決着していません。2010年、グギスベルクらは、それまでの研究を見渡しました。そして、呼吸のため、目を覚ますため、体温調節のため、といった体の働きとしての説には、どれも証拠が足りないとまとめています。かわりに支持を集めつつあるのが、眠気や退屈、軽いストレスを周りに伝える、コミュニケーションとしての役割だというのです。
あくびは、眠気の知らせ
あくびで脳に酸素を送り、頭をすっきりさせる。この説明は、いまの研究とは合いません。あくびが教えてくれるのは、多くの場合、眠いという事実のほうです。
勉強中にあくびが続くなら、席を立って少し体を動かす、短い休憩を取る、といった手を打ちましょう。夜なら、早めに寝て、翌朝に続けるのも立派な作戦です。ふだんの睡眠時間が足りているかを見直すことも大切です。
あくびが出たら、酸素より、睡眠のことを考えましょう。
参考文献
Provine R., Tate B., Geldmacher L. (1987). Yawning: No effect of 3-5% CO2, 100% O2, and exercise. Behavioral and Neural Biology, 48, 382-393.
doi.org/10.1016/S0163-1047(87)90944-7✓ 実在と内容を確認済み
Guggisberg A., Mathis J., Herrmann U., Hess C. (2007). The functional relationship between yawning and vigilance. Behavioural Brain Research, 179, 159-166.
doi.org/10.1016/j.bbr.2007.01.027✓ 実在と内容を確認済み
Gallup A., Gallup G. (2007). Yawning as a Brain Cooling Mechanism: Nasal Breathing and Forehead Cooling Diminish the Incidence of Contagious Yawning. Evolutionary Psychology, 5(1), 147470490700500109.
doi.org/10.1177/147470490700500109✓ 実在と内容を確認済み
Guggisberg A., Mathis J., Schnider A., Hess C. (2010). Why do we yawn? Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 34, 1267-1276.
doi.org/10.1016/j.neubiorev.2010.03.008✓ 実在と内容を確認済み
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