勉強法の常識No.S63

上手な先生の講義を聞くのが、いちばん身につくって、ホント?

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判定:ウソ

大学の理系の授業では、名講義を聞くより、自分たちで問題を解く授業のほうが成績は上でした。ただ「わかった感」は逆になります。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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ハーバード大学の物理の授業、学期の12週目。学生たちは、くじ引きで2つの教室に分けられました。

片方の教室では、経験豊富で評判の高い先生が、スライドを使って説明し、実演を見せ、例題を解いてみせます。学生は聞きながら、プリントに答えを書きこみます。もう片方の教室では、学生が小さなグループで例題に取り組みます。先生は教室を歩き回って質問を投げかけ、手を貸します。各グループの作業のあとには、短い解説が入ります。配られたプリントもスライドも、2つの教室でまったく同じでした。

授業の終わりに、学生たちは「この授業でたくさん学べたと感じるか」に答え、続けて12問のテストを受けました。結果は、きれいに食い違いました。

点数と実感が、逆向きに

2019年にこの実験を報告したのは、ハーバード大学のデローリエらのチームです。参加したのは、入門の物理の授業を受ける学生149人。2回の授業で、片方は「静力学」、もう片方は「流体」を扱いました。1回目に講義を受けた学生は、2回目には問題に取り組む教室へ移ります。こうして、全員が両方の授業を体験しました。

テストの点数は、問題に取り組んだ授業のほうが高くなりました。点数のばらつきを物差しにすると、差はおよそ0.46です。ところが「学べた」という実感は、講義のほうが0.56高かったのです。たくさん学んだ授業ほど、学んだ気がしていませんでした。

名講義の満足感にご用心

著者らは、こう考えています。頭を使う大変さを、学生は「よくわかっていない証拠」と受け取ってしまう。反対に、なめらかな講義を聞いていると、わかった気になりやすい。とびきり上手な講義ほど、この「わかった感」は強くなるかもしれない、と著者らは書いています。

この食い違いは、学生のやる気にも影響しかねません。著者らによれば、学期を通して参加型の授業を受けるうちに、学生が自分でその価値に気づいていくこともあります。けれども、最初のうちは「あまり学べていない」と感じるため、学びが妨げられるおそれがあるというのです。

225の研究が示したこと

この結果は、ひとつの実験だけの話ではありません。2014年、フリーマンらの研究チームは、大学の理系の授業で「講義中心」と「参加型」を比べた研究を225本集め、メタ分析でまとめました。メタ分析とは、たくさんの研究の結果を数字でまとめる方法です。

参加型の授業では、試験などの成績が平均で高くなっていました。点数のばらつきを物差しにすると、差は0.47です。試験の点数にすると、およそ6%の上乗せです。単位を落とす割合も違いました。講義中心の授業の学生は、参加型の学生より、1.5倍落第しやすかったのです。

この傾向は、理系のどの分野でも見られました。クラスの人数にかかわらず効果があり、とくに50人以下の少人数のクラスで大きく出ました。効果の出た研究ばかりが発表されたせいではないことも、確かめられています。

「聞いた」を「使った」に変える

もちろん、講義が無意味なわけではありません。新しい考え方を知る入り口として、よい説明はとても役に立ちます。問題は、聞くだけで終わってしまうことです。

デローリエらは、学期の早いうちに、頭を使う大変さこそ学びの証拠だと学生に伝えることを勧めています。早めに小テストをして、実際にどれだけ身についたかを確かめさせることも挙げています。

これは、自分ひとりで勉強するときにも使えます。動画やわかりやすい参考書で学んだら、そこで閉じずに、例題を自分で解き直す。友だちに説明してみる。説明が途中で止まったら、そこがまだ「わかった気」だけの場所です。

原田英語のおすすめは、授業や動画1本につき、最低1問は自分の手で解くことです。解説を見ながらではなく、閉じてから解きます。

なめらかに聞けた授業ほど、あとで自分の手を動かしてください。少し苦しいと感じる時間が、成績に効いてきます。

この記事に出てくる用語
メタ分析
たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。

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参考文献

  1. Freeman S., Eddy S., McDonough M., Smith M., Okoroafor N., Jordt H. et al. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111, 8410-8415.

  2. Deslauriers L., McCarty L., Miller K., Callaghan K., Kestin G. (2019). Measuring actual learning versus feeling of learning in response to being actively engaged in the classroom. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116, 19251-19257.

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