勉強法の常識No.S59
砂糖を食べると、子どもは興奮して落ち着きがなくなるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
中身を伏せた実験をまとめると、砂糖で子どもの行動が変わる証拠は見つかりませんでした。変わったのは大人の目のほうでした。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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たとえば、子どもの誕生日会の終わりごろ。ケーキとジュースのあと、子どもたちは部屋を走り回り、大声で笑い、なかなか寝ようとしません。大人たちは顔を見合わせて言います。「甘いものを食べすぎたからね」。
砂糖を食べると、子どもは興奮する。多くの親が、これを経験から知っていると感じています。ところが、条件をきちんとそろえて調べると、砂糖の出番はほとんどありません。
誰にも中身を知らせずに比べる
1995年、アメリカのウォルレイクらは、この問題を調べた実験を集めて、メタ分析を行いました。メタ分析とは、同じテーマの研究をたくさん集めて、結果を数字でまとめる方法です。
集める実験には、厳しい条件をつけました。子どもに決まった量の砂糖を食べさせること。比べる相手として、人工甘味料を食べる条件を用意すること。そして、子ども本人も、親も、研究スタッフも、どちらを食べたか知らないこと。甘さだけでは区別がつかないようにして、思い込みが入りこむすき間をふさいだのです。
条件を満たしたのは、16本の報告に含まれる23の研究でした。測った項目は14種類で、行動を直接観察したものから、学力のテストまでが含まれます。
結果は、どの項目でも、砂糖の効果はゼロと区別できませんでした。効果の大きさは、行動観察でマイナス0.14、学力テストでプラス0.30と、項目によってばらつきました。しかし、どの数字も、誤差の幅を考えるとゼロでもおかしくなかったのです。著者らは、砂糖は子どもの行動や頭の働きに影響しない、と結論しました。
ただし、慎重な一文もつけ加えています。小さな効果や、一部の子どもにだけ出る影響までは否定できない、というものです。
変わったのは、母親の目だった
では、なぜこれほど多くの親が、砂糖で子どもが変わると信じているのでしょうか。ウォルレイクらは、親の期待や、ふだんからの結びつけによるのかもしれない、と書いています。
その「期待」の力を実験で確かめたのが、1994年のフーバーとミリッチです。
集まったのは、母親から「砂糖に弱い」と言われている5〜7歳の男の子35人と、その母親たちでした。母親たちは、くじ引きで2つの組に分けられました。一方の組には、子どもに砂糖をたくさん与えたと伝えます。もう一方の組には、砂糖の入っていない偽物を与えたと伝えます。
本当は、どちらの組の子どもも、人工甘味料のアスパルテームしか口にしていません。そのあと、母親と子どもが一緒に過ごす様子をビデオで撮影し、母親にそのときの様子を尋ねました。
「砂糖を与えた」と聞かされた母親たちは、わが子をはっきりと「落ち着きがない」と評価しました。ビデオを見ると、行動も違っていました。子どものそばを離れず、行動を抑えようとしていたのです。子どもを批判したり、見つめたり、話しかけたりすることも、多い傾向がありました。考え方が柔軟でない母親ほど、影響が強く出る項目もありました。
子どもが口にしたものは、どちらの組も同じです。違っていたのは、母親が何を聞かされたかだけでした。
お菓子のせいにする前に
2つの研究を合わせると、ひとつの筋書きが浮かびます。子どもが騒ぐ場面には、甘いものがあることが多い。だから大人は砂糖と興奮を結びつけ、その思い込みが、子どもを見る目そのものを変えてしまうのかもしれません。
もちろん、甘いものをいくら食べてもいい、という話ではありません。これらの研究が調べたのは、砂糖が行動や頭の働きを変えるかどうか、という点だけです。
自分の勉強でも、同じ落とし穴があります。集中できない日に「さっきのお菓子のせいだ」と考えると、ほかの原因を見落とします。睡眠が足りないのかもしれません。机の上にスマホが置いてあるのかもしれません。課題が難しすぎるのかもしれません。
原因を決めつける前に、その場の状況と、自分の思い込みの両方を疑ってみる。砂糖の研究が教えてくれるのは、そういう慎重さです。
参考文献
Wolraich M., Wilson D., White J. (1995). The Effect of Sugar on Behavior or Cognition in Children. JAMA, 274, 1617-1621.
doi.org/10.1001/jama.1995.03530200053037✓ 実在と内容を確認済み
Hoover D., Milich R. (1994). Effects of sugar ingestion expectancies on mother-child interactions. Journal of Abnormal Child Psychology, 22, 501-515.
doi.org/10.1007/BF02168088✓ 実在と内容を確認済み
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