勉強法の常識No.S61
テストで迷ったら、最初に選んだ答えを変えない方がいいって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
研究では、答えの書き直しは「誤りから正解」が最も多く、変えた人はたいてい点数を上げていました。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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「迷ったら、最初の答えを信じろ」。
テストの前に、先生や先輩からこう言われたことがある人は多いのではないでしょうか。最初にピンときた答えは、たいてい正しい。あとから考えすぎると、かえって間違える。だから、見直しで迷っても、答えは変えないほうがいい。
もっともらしく聞こえるこの作戦は、データで見るとほぼ逆です。
研究のほとんどが、同じ結果を出していた
2005年、アメリカの心理学者クルーガー、ワーツ、ミラーの3人は、この「最初の直感」を信じる考えを検証しました。
彼らがまず指摘したのは、このテーマについてのほぼすべての研究が、同じ結果を示していることでした。選択式のテストで答えを変えると、「誤りから正解」に変わることが最も多い。そして、答えを変えた人は、たいてい点数を上げている、というものです。
それなのに、多くの人は「答えは変えないほうがいい」と信じています。データがこれほどはっきりしているのに、なぜでしょうか。クルーガーらの論文は、このなぞに答えようとしたものです。
「変えなければよかった」は記憶に残る
クルーガーらが目をつけたのは、後悔の偏りです。
2つの失敗を比べてみましょう。ひとつは、正しかった答えを書き直して、間違えてしまったとき。もうひとつは、間違っていた答えを変えずに、そのまま間違えたとき。どちらも1問を落としたことに変わりはありません。
ところが、心に残る悔しさは違います。前者では「最初のままにしておけば」と、強く自分を責めます。後者では、それほど悔やみません。こうした「もし〜していれば」という考えを、心理学では「反実仮想」と呼びます。
悔しさの強い経験ほど、よく思い出されます。そのため、「変えて失敗した」記憶ばかりが手元に残ります。それが、「やはり最初の直感を信じるべきだ」という、もっともらしい証拠に見えてしまうのです。クルーガーらは、この思い込みに従った結果、本来より低い点数に終わっている、と述べています。
「変えてもいい」と教えられた学生たち
では、学生に「答えは変えてもいい」と教えたら、どうなるのでしょうか。2007年、ドイツのミュンヘン大学のバウアーらが、これを試しています。
対象は、医学部3年生79人の期末試験です。試験の前に、学生をくじ引きで2つの組に分けました。41人には、よく考え直して迷うなら答えを変えたほうが得だ、と伝えました。残りの38人には、何も伝えませんでした。どちらの組にも、答えを変えた場所には印をつけてもらいました。
答案を調べると、ここでも書き直しは「誤りから正解」が中心でした。それまでの研究と同じ結果です。
そして、「変えてもいい」と教えられた組は、教えられなかった組より、答えを変える回数がはっきり多くなりました。試験の点数も高めでしたが、書き直しによる点数の伸びの差は、統計的にはっきりしたものではありませんでした。79人という小さな研究なので、点数への効果は、まだ確かめきれていないと考えるのがよさそうです。
迷ったら、根拠で決める
ただし、これは「どんどん答えを変えよう」という話ではありません。バウアーらが勧めているのは、よく考え直して、それでも筋の通った疑いが残るときに、答えを変えることです。なんとなく不安だから変える、というのとは違います。
見直しのときは、自分にこう聞いてみてください。この答えを選んだ根拠は何か。別の選択肢が正しいと言える根拠は見つかったか。後者がはっきりしたなら、書き直します。問題文の読み違いや、計算ミスに気づいたときは、なおさらです。
そのためにも、見直しの時間を最初から残しておきましょう。原田英語のおすすめは、試験時間の最後の数分を、見直し専用にしておくことです。時間ぎりぎりまで解き続けていると、根拠を探す余裕そのものがなくなってしまいます。
最初の直感が当たることもあります。でも、見直して見つけた根拠のほうが、ずっと頼りになります。
参考文献
Kruger J., Wirtz D., Miller D. (2005). Counterfactual Thinking and the First Instinct Fallacy. Journal of Personality and Social Psychology, 88, 725-735.
doi.org/10.1037/0022-3514.88.5.725✓ 実在と内容を確認済み
Bauer D., Kopp V., Fischer M. R. (2007). Answer changing in multiple choice assessment: change that answer when in doubt - and spread the word! BMC Medical Education, 7, 28.
doi.org/10.1186/1472-6920-7-28✓ 実在と内容を確認済み
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