勉強法の常識No.S57

男女で頭の働き方は大きく違うって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:02文献 3件

「男女で頭の働き方は大きく違う」のイメージイラスト

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

46のメタ分析をまとめると、男女はほとんどの心の特徴でよく似ていました。数学のテストの差も、ほぼゼロです。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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「男の子は理系、女の子は文系」。進路の話になると、いまでもこんな言葉を耳にすることがあります。テレビや雑誌でも、「男と女は考え方がまるで違う」という話題は人気があります。

では、心理学のデータを大量に集めて並べると、どんな姿が見えてくるのでしょうか。

46のまとめを、さらにまとめる

2005年、アメリカの心理学者ハイドは、男女の違いについての研究を、大きな規模で見渡しました。使ったのは「メタ分析」です。メタ分析とは、同じテーマの研究をたくさん集めて、結果を数字でまとめる方法です。ハイドは、そのメタ分析を46本集めて、さらに全体を見渡しました。いわば「まとめのまとめ」です。

ハイドがまず指摘したのは、世の中に広まっている見方でした。男女は心理的にまったく違う、という「違いのモデル」が、マスメディアでは主流になっている、というのです。

これに対してハイドは、男女はすべてではないものの、ほとんどの心理的な特徴でよく似ている、という考えを示しました。「ジェンダー類似性仮説」と呼ばれる考え方です。46本のメタ分析の結果は、この仮説を支持していました。

差は、年齢と場面で変わる

ハイドは、もうひとつ大事な点を挙げています。男女の差は、年齢によって大きさがかなり変わり、どんな場面で測るかにも左右される、というのです。男女の差は、いつも同じ大きさで現れるわけではありません。ある年齢で見えた差が、別の年齢では小さくなる。ある測り方で出た差が、別の測り方では目立たなくなる。そういうことが起こりうる、ということです。

ハイドはさらに、男女の差を大げさに言うことには、職場や人間関係などで大きな代償がある、とも書いています。

128万人分の数学のテスト

「それでも、数学だけは男子のほうが上だろう」と思う人もいるかもしれません。この思い込みは根強いものです。ハイドらは2008年、科学誌『サイエンス』にこう書いています。女子や女性は数学の力が劣るという思い込みが、親や先生のあいだにも広く残っている、と。1990年のメタ分析で、一般の人たちの数学の男女差は、すでにごくわずかとされていたにもかかわらず、です。

この点を、より新しいデータで確かめたのが、2010年のリンドバーグ、ハイドらの研究チームです。

チームは、1990年から2007年に発表された242の研究を集めました。テストを受けた人は、合わせて128万6,350人です。男女の差を「効果量」という数字で表すと、0.05でした。効果量は、差の大きさを、点数のばらつきを物差しにして表した数字です。0.05は、男女の点数の分布がほとんど重なっていることを意味します。著者らは、男女の差はないと結論しています。

点数の散らばり方も、男女でほぼ同じでした。アメリカの10代を対象にした大規模な調査をいくつか調べても、差は小さな範囲にとどまりました。

平均の差がこれほど小さいと、男女の差よりも、同じ性別の中での一人ひとりの差のほうが、ずっと大きくなります。クラスでいちばん数学が得意なのが女子でも男子でも、何の不思議もありません。

決めつけを、言い訳にしない

ただし、男女に差がまったくないわけではありません。ハイド自身が「すべてではない」と書いているとおり、差がはっきり出る特徴もあります。それでも、「女子だから数学が苦手」「男子だから語学が苦手」のような決めつけは、研究の全体像とは合いません。

進路を考えるときに、まわりから「女子なのに理系?」「男子なのに文系?」と言われた経験がある人もいるかもしれません。そうした言葉には、データの裏づけがほとんどありません。

テストの点が伸びないとき、性別のせいにするのは簡単です。けれども、そう考えると、原因探しがそこで止まってしまいがちです。苦手な単元はどこか。解き方のどこでつまずいているのか。見るべきなのは、そちらです。

原田英語の答えはシンプルです。性別より、自分の答案を見てください。

この記事に出てくる用語
メタ分析
たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。

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参考文献

  1. Hyde J. (2005). The gender similarities hypothesis.. American Psychologist, 60, 581-592.

  2. Lindberg S. M., Hyde J. S., Petersen J. L., Linn M. C. (2010). New trends in gender and mathematics performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 136(6), 1123-1135.

  3. Hyde J. S., Lindberg S. M., Linn M. C., Ellis A. B., Williams C. C. (2008). Gender similarities characterize math performance. Science, 321(5888), 494-495.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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