教科別の常識No.K03
男子のほうが、女子より数学が得意って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
100万人以上のデータをまとめると、数学の成績の男女差はほぼゼロでした。差が出るかどうかは、国によって大きく変わります。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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論文での効果242研究・約129万人で、男女差は効果量0.05(ほぼゼロ)
128万6350人。
2010年に発表されたある分析が、数学の成績を男女で比べるために集めた人数です。1990年から2007年までに出た242の研究を、ひとつにまとめたものでした。これだけの人数を並べたとき、男子と女子のあいだにどれほどの差が見えたのでしょうか。
答えの前に、少し時代をさかのぼります。
かつての定説は「男子が上」
1990年、心理学者のハイドらは、それまでの100の研究、のべ300万人あまりのテスト結果をまとめました。論文の書き出しには、これまでの総説はそろって「男子のほうが数学のテストの成績がよい」と結論してきた、とあります。
ところが、一般の子どもたちを対象にした調査をまとめると、差はごくわずかで、むしろ女子が、無視できるほどわずかに上でした。計算では、小学校と中学校で女子がやや上回っていました。
ただし、男子が上に出た場面もありました。複雑な問題を解く力では、高校と大学で男子のほうが成績がよかったのです。また、成績上位の人だけを選んだ集団ほど、差は大きくなりました。
もうひとつ、差は時代とともに縮んでいました。1973年までに出た研究と、1974年以降の研究を比べると、男女差は半分以下になっていたのです。
128万人の答え
それから20年。2010年、リンドバーグとハイドらは、冒頭の242研究、128万人あまりのデータをまとめ直しました。
男女の差は、効果量で0.05でした。効果量とは、差の大きさを、成績のばらつきを物差しにして表した数字です。ふつう0.2で「小さい差」とされるので、0.05はその4分の1にすぎません。著者らは、これを「男女差はない」と読んでいます。
「男子は成績のばらつきが大きく、上位にも下位にも多い」という説もあります。しかしこの分析では、ばらつきの大きさも男女でほぼ同じでした。アメリカの大きな全国調査を見ても、差は小さいものでした。
国が変わると、差も変わる
同じ2010年、エルス=クエストとハイドらは、世界69か国の14〜16歳、49万人あまりの国際調査を分析しました。
平均すると、男女差はどの指標でもとても小さいものでした。ところが、国ごとに見ると様子が違います。男子が上の国もあれば、女子が上の国もあり、その幅はかなり大きかったのです。
では、何が国ごとの違いを生んでいたのでしょうか。よく説明していたのは、進学の男女平等の度合い、研究職に占める女性の割合、国会議員に占める女性の割合でした。女性が学び、働く機会がどれだけ開かれているか。それと数学の男女差が結びついていたのです。生まれつきの差だけでは、国によってこれほど結果が変わることを説明しにくいでしょう。
差があったのは、自信のほう
この分析では、成績とは別の違いも見つかりました。数学が好きか、自信があるか、という気持ちの面では、男子のほうがやや高かったのです。成績はほとんど同じなのに、自信には差がある。この食い違いは、覚えておく価値があります。
「女子だから数学は苦手」という思いこみは、成績の差よりも、気持ちの差のほうに表れているのかもしれません。数学が苦手かどうかは、性別ではなく、自分の答案を見て確かめましょう。
参考文献
Lindberg S., Hyde J., Petersen J., Linn M. (2010). New trends in gender and mathematics performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 136, 1123-1135.
doi.org/10.1037/a0021276✓ 実在と内容を確認済み
Else-Quest N., Hyde J., Linn M. (2010). Cross-national patterns of gender differences in mathematics: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 136, 103-127.
doi.org/10.1037/a0018053✓ 実在と内容を確認済み
Hyde J. S., Fennema E., Lamon S. J. (1990). Gender differences in mathematics performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 107(2), 139-155.
doi.org/10.1037/0033-2909.107.2.139✓ 実在と内容を確認済み
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