教科別の常識No.K02

数学ができるかどうかは、生まれつきの才能で決まるって、ホント?

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判定:半分ホント

遺伝の影響はあります。ただ、ふたごの研究でも、遺伝では説明できない部分が大きく残りました。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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論文での効果16歳の数の感覚の個人差で、遺伝32%、遺伝で説明されない差68%(測定誤差を含む)

「うちは親も数学が苦手だったから」。テストが返ってきた日に、そう口にしたことはありませんか。言われてみると、もっともらしく聞こえます。顔や背の高さが親に似るように、数学の得意不得意も親から受け継ぐのだろう、と。

この疑問に、研究者はふたごを使って答えようとしてきました。

ふたごを比べるとわかること

ふたごには2種類あります。遺伝子がほぼ同じ一卵性と、ふつうのきょうだいと同じく半分ほどが同じ二卵性です。どちらのふたごも、同じ家で、同じ親に育てられることが多いという点は変わりません。

もし数学の力が遺伝で強く決まるなら、一卵性のふたごは、二卵性のふたごよりずっとよく似るはずです。逆に、似かたにあまり差がなければ、遺伝の影響は小さいと考えられます。この似かたの違いから、個人差のうち遺伝で説明できる割合を見積もるのが、ふたご研究の考え方です。

10歳の5000人あまり

2007年、コヴァスとプローミンらは、イギリスの10歳のふたご5348人の数学の力を調べました。インターネットで受けられるテストを作り、イギリスの学校で教える数学の3つの分野から問題を出しました。

遺伝の影響は「中くらい」という結果でした。残りの差の多くは、同じ家で育っていても一人ひとりが別々に経験する環境で説明されました。同じ家庭で共有している環境の影響は、小さいものでした。

数学がとくに苦手な子についても調べましたが、得意な子との違いを生む遺伝と環境の組み合わせは同じでした。苦手な子は、特別な原因を持つ別のグループではありませんでした。同じ連続した分布の、端のほうにいる子たちだったのです。男女で、この組み合わせに違いは見られませんでした。

量を見比べる力は32%

数学の土台には、「数の感覚」と呼ばれる力があると考えられています。数えずに、ぱっと見て量の多い少ないを見分ける力です。この力は人間以外の動物にも見られ、人では幼いころから個人差があります。

2014年、トストやコヴァスらは、16歳のふたごでこの数の感覚を調べました。一卵性837組、二卵性1422組という大きな調査です。

個人差のうち、遺伝で説明できたのは32%でした。残りの68%は、一人ひとりが別々に経験する環境と、測定の誤差に割り当てられました。家庭で共有する環境の影響は、見られませんでした。

同じ研究では、血のつながりのない1118人のDNAを、170万か所の目印で直接調べる方法も使われました。この方法では、数の感覚の遺伝の影響はほぼゼロと見積もられました。同じふたご調査のほかの知的な力では、およそ25%と出ていたのにです。

32%は、あなたの32%ではない

こうした割合は、「集団の中の差」を説明する数字です。「あなたの数学の力の32%は遺伝で決まっている」という意味ではありません。どれだけ伸びるかを、一人ひとりについて決める数字でもありません。

また、「一人ひとりが別々に経験する環境」には、いろいろなものが入りえます。どの先生に出会ったか、どんな問題にどれだけ取り組んだか、といったこともそのひとつでしょう。遺伝は無関係ではない。けれど、遺伝だけで決まるわけでもない。2つの研究が示しているのは、そういうことです。

「親も苦手だったから」は、半分だけの説明です。残りの部分には、自分で手をつけられる余地があります。

参考文献

  1. Kovas Y., Haworth C., Petrill S., Plomin R. (2007). Mathematical Ability of 10-Year-Old Boys and Girls: Genetic and Environmental Etiology of Typical and Low Performance. Journal of Learning Disabilities, 40, 554-567.

  2. Tosto M., Petrill S., Halberda J., Trzaskowski M., Tikhomirova T., Bogdanova O., Ly R., Wilmer J., Naiman D., Germine L., Plomin R., Kovas Y. (2014). Why do we differ in number sense? Evidence from a genetically sensitive investigation. Intelligence, 43, 35-46.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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