教科別の常識No.K01
数学は暗記だって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
解き方を覚えるのはむだではありません。ただ、意味の理解と行き来させてはじめて、覚えた手順が使える力になります。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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今日からできるやり方
- 解き方を覚えたら「なぜこうするのか」を一言で説明する
- 答えが合ったら、別の解き方がないか考えてみる
- 公式は、自分で導けるか一度ためしてみる
0.25と0.3。大きいのはどちらでしょう。
答えは0.3です。ところが、「25は3より大きい」という整数の感覚をそのまま持ちこむと、0.25を選んでしまいます。小数の計算の手順は覚えていても、0.25が何を表す数なのかがつかめていなければ、こういう問題でつまずきます。
受験では「数学は解き方のパターンを覚えればいい」とよく言われます。限られた時間で点を取るには、見た瞬間に解き方が浮かぶほうが有利です。たしかに、覚えなければ始まらない部分はあります。では、覚えるだけで数学の力はつくのでしょうか。
小数を学ぶ子どもたちを追いかける
2001年、心理学者のリトル=ジョンソン、シーグラー、アリバリの3人は、小学5年生と6年生を対象に、2つの実験を行いました。子どもたちが小数を学んでいく様子を調べたのです。
3人は、数学の知識を2種類に分けて考えました。ひとつは「手順の知識」で、計算をどう進めるかを知っていることです。もうひとつは「概念の理解」で、その数や式が何を意味しているのかがわかっていることです。「数学は暗記だ」という考えは、前者だけを鍛えればよい、という考えだとも言えます。
1つめの実験では、最初の時点で小数の意味をよく理解していた子ほど、そのあと計算の手順が伸びていました。そして、手順が伸びた子は、今度は意味の理解も深まっていました。理解が手順を育て、育った手順がまた理解を深める。2つの知識は、こうして交互に育っていました。
あいだをつないでいたもの
では、理解と手順は何によってつながっているのでしょうか。3人が注目したのは、問題を頭の中でどう描くか、という点でした。最初の理解が手順の伸びにつながるとき、そのあいだには、問題を正しく描けているかどうかが入っていました。
2つめの実験では、この点を確かめるため、問題を正しくとらえるための手助けの量を変えてみました。すると、手助けを多く受けた子どもたちは、手順の力を伸ばしました。
問題の意味が見えていれば、覚えた手順を正しい場面で使えます。意味が見えていなければ、覚えた手順をどこで使えばいいのかがわかりません。冒頭の0.25と0.3は、ちょうどそういう例です。
一方通行ではない
2015年、リトル=ジョンソンは、シュナイダー、スターとともに、その後に積み重なった研究をまとめました。論文の題名は「一方通行ではない」。手順の知識と概念の理解は、どちらか片方が先に立つのではなく、互いに支え合いながら育つ、という結論です。
ただし、まだわかっていないこともあります。手順と意味のどちらを先に教えるのがよいかは、2つの順番を直接比べた研究が少なく、はっきりしません。「まず理解、暗記はあと」とも、「まず暗記、理解はあと」とも、言い切れないのが今の状態です。
覚えたら、なぜかを一言で
ですから、「数学は暗記だ」は半分だけ当たっています。解き方を覚えることは必要です。足りないのは、覚えた解き方と意味のあいだを行き来する作業のほうです。
原田英語のおすすめは、解き方を1つ覚えるたびに「なぜこうするのか」を一言で言ってみることです。たとえば三角形の面積は「底辺×高さ÷2」です。なぜ2で割るのか。同じ三角形を2つ組み合わせると平行四辺形になり、その半分だから、と言えれば、公式を忘れても自分で作り直せます。
言えなければ、そこが意味の抜けている場所です。答えが合ったあとに、別の解き方がないか考えてみるのもよい練習です。
覚えた手順は、意味とつながったときに、はじめて自分で使える道具になります。
参考文献
Rittle-Johnson B., Siegler R., Alibali M. (2001). Developing conceptual understanding and procedural skill in mathematics: An iterative process. Journal of Educational Psychology, 93, 346-362.
doi.org/10.1037/0022-0663.93.2.346✓ 実在と内容を確認済み
Rittle-Johnson B., Schneider M., Star J. (2015). Not a One-Way Street: Bidirectional Relations Between Procedural and Conceptual Knowledge of Mathematics. Educational Psychology Review, 27, 587-597.
doi.org/10.1007/s10648-015-9302-x✓ 実在と内容を確認済み
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