教科別の常識No.K06
そろばんを習うと、頭が良くなるって、ホント?

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判定:半分ホント
そろばん式の暗算で、計算の力はたしかに伸びます。でも、記憶力など頭の働き全体が良くなるという証拠は見つかっていません。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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論文での効果3年間・204人の比較で計算は向上、基本的な認知能力は変化なし
そろばんを長く習った人の中には、そろばんがなくても、驚くほど速く正確に計算できる人がいます。頭の中にそろばんを思い浮かべ、その玉を動かして計算するのです。「珠算式暗算」と呼ばれる方法で、英語では「メンタル・アバカス(頭の中のそろばん)」と呼ばれています。
これだけの計算ができるなら、頭そのものも鍛えられているはずだ。そう考えて、子どもにそろばんを習わせる家庭もあります。この期待は、どこまで当たっているのでしょうか。
頭の中のそろばんは、言葉を使わない
まず、頭の中のそろばんがどういう仕組みで動いているのかを見てみます。
2012年、心理学者のフランクとバーナーは、インドで珠算式暗算を学ぶ子どもたちを調べました。そろばんの絵を覚えておくのは、ふつうなら大変です。目で見たものを一時的に覚えておく力には、限りがあるからです。
調べてみると、子どもたちは頭の中のそろばんを、けたごとの縦の列に分けて覚えていました。1列ずつを、細かい玉の並びを持ったひとまとまりとして、別々に覚えていたのです。
さらに、言葉を使う別の作業で計算をじゃましても、慣れた子どもの計算はあまりくずれませんでした。習っていない子では、そうはいきませんでした。頭の中のそろばんは、言葉ではなく「絵」で数を扱う方法だと考えられます。
3年間、くじで分けて追いかける
では、この方法を学ぶと、頭の働き全体も良くなるのでしょうか。それを確かめるには、もともと頭の働きがよい子がそろばんを選んでいるだけ、という可能性を取りのぞく必要があります。
2016年、バーナーとフランクらは、5〜7歳の小学生204人を、くじで2つのグループに分けました。片方は、ふつうの算数の授業に加えて、珠算式暗算を学校の授業の中で学びます。もう片方は学びません。そして3年間、追いかけました。
まず、計算の成績は、珠算式暗算を学んだ子のほうが上でした。特別な塾でなくても、ふつうの教室で身につけられることがわかりました。
変わらなかったもの
ところが、記憶力のような基本的な頭の働きは、3年間学んでも変わりませんでした。そろばんが頭全体を鍛える、という期待は、この研究では支持されなかったのです。
そのかわりに、逆向きの関係が見つかりました。研究の始めの時点で、形や位置を覚えておく力が高かった子ほど、珠算式暗算をよく身につけていたのです。そろばんがその力を育てたのではなく、その力がある子がそろばんを伸ばしやすかった、ということになります。
そろばんの上手な子が「頭がいい」ように見えるのは、こうした順番の取り違えから来ているのかもしれません。
計算の習い事として選ぶ
ですから、そろばんは「計算の力をつける習い事」として考えるのが、研究の結果に合っています。計算がすばやく正確になることは、それだけで十分に価値があります。
ただ、それで記憶力や考える力まで全体が伸びるとは、期待しすぎないほうがいいでしょう。もし子どもがそろばんに苦戦していても、不思議ではありません。始める時点の力によって身につきやすさに差があることは、研究からも見えています。
そろばんは、計算を速くするための道具です。その目的で選ぶのが、いちばん無理のない期待のかけ方です。
参考文献
Frank M., Barner D. (2012). Representing exact number visually using mental abacus. Journal of Experimental Psychology: General, 141, 134-149.
doi.org/10.1037/a0024427✓ 実在と内容を確認済み
Barner D., Alvarez G., Sullivan J., Brooks N., Srinivasan M., Frank M. (2016). Learning Mathematics in a Visuospatial Format: A Randomized, Controlled Trial of Mental Abacus Instruction. Child Development, 87, 1146-1158.
doi.org/10.1111/cdev.12515✓ 実在と内容を確認済み
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