教科別の常識No.K04
数学が苦手なのは勉強不足のせいで、不安とは関係ないって、ホント?

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
数学への不安が強い人ほど成績が低い傾向は、多くの研究で確かめられています。不安は、考えるための頭の余裕を奪うと考えられています。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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論文での効果131研究のまとめで、数学への不安と成績の相関は-0.34
今日からできるやり方
- 不安な気持ちを、ひとりで抱えこまず誰かに話す
- 解ける問題から始めて、小さな「できた」を積む
- 難しい問題は、手順を紙に書き出して整理する
数学のテストが配られる。最初の問題を読んだとたん、手のひらが汗ばみ、頭が白くなる。家では解けたはずの問題なのに、式の続きが出てこない。そんな経験はないでしょうか。
周りからは「それは勉強が足りないからだ」と言われがちです。不安なんて気の持ちようで、問題は勉強量だ、というわけです。ところが研究を見ると、話はそれほど単純ではありません。
131の研究を集めると
数学の問題を前にしたときの緊張やおそれを、心理学では「数学不安」と呼びます。
2019年、ナムクンらは、小学生から高校生までを対象にした131の研究をまとめました。数学不安と成績のあいだには、はっきりしたマイナスの関係がありました。相関はマイナス0.34です。不安が強い子ほど、成績が低い傾向があるということです。
関係が強く出たのは、何段階もの手順を踏む、難しい問題でした。基礎的な計算問題では、関係はもっと弱かったのです。また、研究のために行ったテストより、期末試験や通知表の成績のように、本人の成績に関わる場面で関係が強く出ました。
もうひとつのまとめでも
2021年には、バローソらが、1992年から2018年までの研究から747の数値を集めて分析しました。相関はマイナス0.28で、同じ向きの結果でした。
この関係は子どものころから見られ、大人になっても続いていました。年齢や測り方によって強さは変わりますが、ほとんどの組み合わせで関係ははっきり出ていました。
ただし、細かいところでは2つのまとめの結果が分かれています。バローソらの分析では、学校の数学の試験の成績では、関係はむしろ小さめでした。どんな場面で不安がとくに響くのかは、まだ決着していません。
不安は、頭の作業台をふさぐ
では、不安はどうやって成績に響くのでしょうか。手がかりになるのが、2001年のアッシュクラフトとカークの実験です。
計算をするとき、私たちは途中の数字を頭の中に置いておきます。くり上がりの1を覚えておく、といった作業です。この作業台のような頭の働きを、ワーキングメモリと呼びます。
実験では、数学不安の強い人ほど、ワーキングメモリの容量が小さく出ました。とくに、計算を使って測ったときにその差が目立ちました。さらに、ほかのことを覚えながら暗算をさせると、不安の強い人は、答えるまでの時間も間違いも大きく増えました。
著者らは、これを「一時的な妨害」だと考えています。もともと頭の力が弱いのではなく、不安がその場で作業台の一部をふさいでしまう、という見方です。何段階もある難しい問題で関係が強く出ることとも、話が合います。
勉強と気持ち、両方から
ここまでの研究は、ほとんどが相関を調べたものです。不安が成績を下げるのか、成績が悪いから不安になるのか、どちらの向きもありえます。おそらく両方が、ぐるぐると回っているのでしょう。
だとすれば、勉強量を増やすだけでは片方にしか手が届きません。原田英語のすすめは、まず解ける問題から始めて、小さな「できた」を積むこと。難しい問題は、頭の中だけで抱えず、手順を紙に書き出すこと。作業台からはみ出す分を、紙に置いてしまうのです。そして、不安な気持ちをひとりで抱えこまず、誰かに話してみることです。
数学が怖いのは、怠けているからとは限りません。怖さも、手当てできる相手です。
参考文献
Namkung J., Peng P., Lin X. (2019). The Relation Between Mathematics Anxiety and Mathematics Performance Among School-Aged Students: A Meta-Analysis. Review of Educational Research, 89, 459-496.
doi.org/10.3102/0034654319843494✓ 実在と内容を確認済み
Barroso C., Ganley C., McGraw A., Geer E., Hart S., Daucourt M. (2021). A meta-analysis of the relation between math anxiety and math achievement. Psychological Bulletin, 147, 134-168.
doi.org/10.1037/bul0000307✓ 実在と内容を確認済み
Ashcraft M. H., Kirk E. P. (2001). The relationships among working memory, math anxiety, and performance. Journal of Experimental Psychology: General, 130(2), 224-237.
doi.org/10.1037/0096-3445.130.2.224✓ 実在と内容を確認済み
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