勉強法の常識No.S60
ご褒美で釣れば、勉強のやる気は上がるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
ほめ言葉は、自分から学ぶ気持ちを高めました。でも、前もって約束する物のご褒美は、その気持ちを弱めることがあります。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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ある遊びが大好きな子どもがいるとします。誰に言われなくても、自由な時間になると、自分からその遊びを始める。そんな子に「やったらご褒美をあげるよ」と約束したら、どうなるでしょうか。ますます夢中になりそうな気がします。
1973年、アメリカの心理学者レッパーらは、この問いを実験で確かめました。
約束したご褒美と、思いがけないご褒美
レッパーらはまず、ふだんの様子を観察して、ある活動に自分から興味を示す子どもたちを選びました。そして、子どもたちを3つの条件に分けました。
ひとつめは、ご褒美をもらうために、その活動をすると約束した子どもたち。ふたつめは、ご褒美のことを何も知らされず、活動のあとで思いがけずご褒美をもらった子どもたち。みっつめは、約束もご褒美もなかった子どもたちです。
そのあと、子どもたちがその活動にどれくらい興味を示すかを調べました。すると、約束されたご褒美をもらった子どもたちは、ほかの2つの条件の子どもたちより、その活動への興味が低くなっていたのです。
同じご褒美をもらっても、約束があったかどうかで、結果が分かれました。レッパーらが確かめようとしたのは、「過正当化」と呼ばれる仮説です。もともと好きでしていた活動でも、外にある目的のための手段としてやらされると、その活動への興味が下がることがある、という考え方です。
128の実験をまとめると
その後、同じような実験は数多く行われました。1999年、デシ、コーストナー、ライアンの3人は、128の実験をメタ分析でまとめました。メタ分析とは、たくさんの研究の結果を数字でまとめる方法です。
ものさしは主に2つです。自由時間に、自分からその課題に取り組むかどうか。そして、本人が「面白い」と感じているかどうかです。
結果は、レッパーらの実験とよく合っていました。「取り組んだらあげる」「やり終えたらあげる」「成績がよければあげる」。どの形で約束したご褒美も、自由時間に自分から取り組む行動を減らしていたのです。差の大きさを表す効果量は、それぞれマイナス0.40、マイナス0.36、マイナス0.28でした。物のご褒美や、前もって予告されたご褒美も、全体として同じように悪い影響がありました。
本人が感じる「面白さ」も、少し下がっていました。「取り組んだらあげる」ではマイナス0.15、「やり終えたらあげる」ではマイナス0.17です。行動ほどではないものの、気持ちの面にも影を落としていたのです。
この悪影響は、年齢によっても違いました。物のご褒美は、大学生より子どもで悪い影響が大きい傾向があったのです。
ほめ言葉は、逆向きに働いた
一方で、正反対の結果が出たご褒美もありました。前向きな声かけ、つまりほめ言葉です。
ほめ言葉は、自由時間に自分から取り組む行動を高めました。効果量はプラス0.33です。本人が感じる興味も、プラス0.31高まりました。ただし、ほめ言葉の効果は、子どもでは大学生ほど大きくない傾向がありました。
なお、この分野では、それまでの4つのメタ分析と結論が食い違ってきました。デシらは論文の中で、自分たちの方法や結果が、先行研究とどう違うのかを詳しく説明しています。長く議論が続いてきたテーマであることは、覚えておいてください。
約束するより、あとでほめる
判定が「半分ホント」なのは、ご褒美の種類によって結果が分かれるからです。ほめ言葉は、自分から進んでやる気持ちを高めました。前もって約束する物のご褒美は、その気持ちを弱めました。
勉強に当てはめるなら、「テストで80点を取ったらゲームを買ってあげる」のような約束は、慎重にしたほうがよさそうです。代わりに、できたことを具体的にほめます。「この問題、前は解けなかったのに解けたね」のように、何がよかったのかを言葉にするのです。
自分で自分を励ますときも、同じ考え方が使えます。「1時間やったらお菓子」と決めるより、終わったあとに「きょうはここまで進んだ」と確かめるほうが、勉強そのものを好きでいられるかもしれません。
この記事に出てくる用語
- メタ分析
- たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
- 効果量
- 効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
参考文献
Deci E., Koestner R., Ryan R. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125, 627-668.
doi.org/10.1037/0033-2909.125.6.627✓ 実在と内容を確認済み
Lepper M. R., Greene D., Nisbett R. E. (1973). Undermining children's intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the "overjustification" hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129-137.
doi.org/10.1037/h0035519✓ 実在と内容を確認済み
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