勉強法の常識No.S60

ご褒美で釣れば、勉強のやる気は上がるって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:06文献 2件

「ご褒美で釣れば、勉強のやる気は上がる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

ほめ言葉は、自分から学ぶ気持ちを高めました。でも、前もって約束する物のご褒美は、その気持ちを弱めることがあります。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)

0:00 / 5:06

ある遊びが大好きな子どもがいるとします。誰に言われなくても、自由な時間になると、自分からその遊びを始める。そんな子に「やったらご褒美をあげるよ」と約束したら、どうなるでしょうか。ますます夢中になりそうな気がします。

1973年、アメリカの心理学者レッパーらは、この問いを実験で確かめました。

約束したご褒美と、思いがけないご褒美

レッパーらはまず、ふだんの様子を観察して、ある活動に自分から興味を示す子どもたちを選びました。そして、子どもたちを3つの条件に分けました。

ひとつめは、ご褒美をもらうために、その活動をすると約束した子どもたち。ふたつめは、ご褒美のことを何も知らされず、活動のあとで思いがけずご褒美をもらった子どもたち。みっつめは、約束もご褒美もなかった子どもたちです。

そのあと、子どもたちがその活動にどれくらい興味を示すかを調べました。すると、約束されたご褒美をもらった子どもたちは、ほかの2つの条件の子どもたちより、その活動への興味が低くなっていたのです。

同じご褒美をもらっても、約束があったかどうかで、結果が分かれました。レッパーらが確かめようとしたのは、「過正当化」と呼ばれる仮説です。もともと好きでしていた活動でも、外にある目的のための手段としてやらされると、その活動への興味が下がることがある、という考え方です。

128の実験をまとめると

その後、同じような実験は数多く行われました。1999年、デシ、コーストナー、ライアンの3人は、128の実験をメタ分析でまとめました。メタ分析とは、たくさんの研究の結果を数字でまとめる方法です。

ものさしは主に2つです。自由時間に、自分からその課題に取り組むかどうか。そして、本人が「面白い」と感じているかどうかです。

結果は、レッパーらの実験とよく合っていました。「取り組んだらあげる」「やり終えたらあげる」「成績がよければあげる」。どの形で約束したご褒美も、自由時間に自分から取り組む行動を減らしていたのです。差の大きさを表す効果量は、それぞれマイナス0.40、マイナス0.36、マイナス0.28でした。物のご褒美や、前もって予告されたご褒美も、全体として同じように悪い影響がありました。

本人が感じる「面白さ」も、少し下がっていました。「取り組んだらあげる」ではマイナス0.15、「やり終えたらあげる」ではマイナス0.17です。行動ほどではないものの、気持ちの面にも影を落としていたのです。

この悪影響は、年齢によっても違いました。物のご褒美は、大学生より子どもで悪い影響が大きい傾向があったのです。

ほめ言葉は、逆向きに働いた

一方で、正反対の結果が出たご褒美もありました。前向きな声かけ、つまりほめ言葉です。

ほめ言葉は、自由時間に自分から取り組む行動を高めました。効果量はプラス0.33です。本人が感じる興味も、プラス0.31高まりました。ただし、ほめ言葉の効果は、子どもでは大学生ほど大きくない傾向がありました。

なお、この分野では、それまでの4つのメタ分析と結論が食い違ってきました。デシらは論文の中で、自分たちの方法や結果が、先行研究とどう違うのかを詳しく説明しています。長く議論が続いてきたテーマであることは、覚えておいてください。

約束するより、あとでほめる

判定が「半分ホント」なのは、ご褒美の種類によって結果が分かれるからです。ほめ言葉は、自分から進んでやる気持ちを高めました。前もって約束する物のご褒美は、その気持ちを弱めました。

勉強に当てはめるなら、「テストで80点を取ったらゲームを買ってあげる」のような約束は、慎重にしたほうがよさそうです。代わりに、できたことを具体的にほめます。「この問題、前は解けなかったのに解けたね」のように、何がよかったのかを言葉にするのです。

自分で自分を励ますときも、同じ考え方が使えます。「1時間やったらお菓子」と決めるより、終わったあとに「きょうはここまで進んだ」と確かめるほうが、勉強そのものを好きでいられるかもしれません。

この記事に出てくる用語
メタ分析
たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。

用語集をすべて見る →

参考文献

  1. Deci E., Koestner R., Ryan R. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125, 627-668.

  2. Lepper M. R., Greene D., Nisbett R. E. (1973). Undermining children's intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the "overjustification" hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129-137.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

あわせて読みたい関連する常識

20問・約2分あなたの勉強法は、科学的に何点?科学度診断をはじめる → 10問・ランダム出題ウソかホントか、見抜けるか?判定チャレンジに挑戦 →