勉強法の常識No.S17
スマホは机に置いておくだけで集中力を奪うって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:まだ決着していない
有名な「ブレインドレイン」研究は、事前登録した追試で再現されず、研究をまとめた分析でも結果が割れています。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
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「ブレインドレイン」は、もともと優秀な人材が外国へ出ていってしまう「頭脳流出」を表す英語です。2017年、ウォードらは、この言葉を別の意味で論文の題名に使いました。自分のスマホがそこにあるだけで、頭の力が吸い取られてしまう、というのです。
使っていなくても、そこにあるだけで
ウォードらは2つの実験で、スマホが近くにあるだけで、ほかの作業に使える頭の容量が減るかを調べました。結果は、スマホを見ないよう我慢できていた場合でも、スマホがそばにあるだけで、使える頭の容量が減っていた、というものでした。しかもその影響は、ふだんスマホに強く頼っている人ほど大きくなっていました。
スマホを机に置いて勉強している人には、気になる結果です。
同じ方法でやり直すと
2022年、ルイス・パルドとミンダは、ウォードらの2つ目の実験を、同じ方法でやり直しました。どんな結果を予想し、どう分析するかを、実験の前に登録しておく「事前登録」をしたうえでの追試です。あとから都合のよい分析を選べないようにするためのやり方です。
スマホの置き場所は、机の上、ポケットかかばんの中、部屋の外の3通り。さらに、電源を入れておくか切っておくかの2通りを組み合わせて、6つの条件を作りました。参加者は、注意を必要とする記憶の課題と、合図に応じて反応したり反応をこらえたりする課題に取り組みました。
結果は、ウォードらの効果は再現されない、というものでした。スマホがどこにあっても、どちらの課題の成績にも差はありませんでした。2人は、スマホがそこにあるだけでは、頭の働きに影響するには足りないのかもしれない、と述べています。
まとめた分析でも、答えが割れる
では、これまでの研究を全部まとめるとどうなるのでしょうか。ここでも、はっきりした答えは出ていません。
2023年、パリーは、56件の結果、のべ7,093人分のデータをまとめて分析しました。調べた頭の働きのうち、意味のある影響が出たのは、作業記憶と呼ばれる、情報を頭の中にいったん置いておく力だけでした。その影響も、もとの説が考えていたより小さいものでした。パリーは、研究ごとにやり方がばらばらで、効果を見つける力の弱い研究も多いため、今ある研究では説を支持も否定もしきれない、としています。
2024年、ハルタントらは、33の研究、4,368人分をまとめました。こちらは、スマホがあるだけでは頭の働きに意味のある影響はない、という結果でした。スマホにどれだけ頼っているかによっても、結果は変わりませんでした。
置くだけで悪いかどうかより
判定を「まだ決着していない」としたのは、このためです。少なくとも、スマホが机にあるだけで頭の力が大きく奪われる、という強い言い方は、今の証拠では支えきれません。
ただ、これはスマホを机に置いても大丈夫、という意味ではありません。研究が調べたのは、スマホを使わずに置いておいた場合です。通知が鳴れば目が向きますし、手に取れば勉強は止まります。
原田英語のおすすめは、勉強中はスマホを別の部屋に置くことです。置いてあるだけで害があるかどうかは、まだわかりません。でも、手の届かない場所にあれば、少なくとも「ちょっとだけ見る」ことはできなくなります。
参考文献
Ward A., Duke K., Gneezy A., Bos M. (2017). Brain Drain: The Mere Presence of One’s Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. Journal of the Association for Consumer Research, 2, 140-154.
doi.org/10.1086/691462✓ 実在と内容を確認済み
Ruiz Pardo A., Minda J. (2022). Reexamining the “brain drain” effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica, 230, 103717.
doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717✓ 実在と内容を確認済み
Parry D. (2023). Does the Mere Presence of a Smartphone Impact Cognitive Performance? A Meta-Analysis of the "Brain Drain Effect". Media Psychology, 27(5), 737-762.
doi.org/10.1080/15213269.2023.2286647✓ 実在と内容を確認済み
Hartanto A., Lua V., Kasturiratna K., Koh P., Tng G., Kaur M., Quek F., Chia J., Majeed N. (2024). The effect of mere presence of smartphone on cognitive functions: A four-level meta-analysis. Technology, Mind, and Behavior, 5(1), 1-14.
doi.org/10.1037/tmb0000123✓ 実在と内容を確認済み
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