勉強法の常識No.S18

人には視覚型・聴覚型などの「学習スタイル」があり、合わせて教えると伸びるって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:32文献 2件

「人には視覚型・聴覚型などの「学習スタイル」があり、合わせて教えると伸びる」のイメージイラスト

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

好きな学び方があるのは本当です。でも、それに合わせて教えると伸びる、という証拠はほとんど見つかっていません。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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「人は、自分の好みの学習スタイルで情報を受け取ると、よりよく学べる」。

この文は正しいでしょうか。2012年、デッカーらは、イギリスの先生137人とオランダの先生105人に、脳と学習についての文を32個見せて、正しいかどうかを答えてもらいました。答えた先生たちは、脳の科学を教育に生かすことに関心を持っていました。

この文を正しいと答えた先生は、イギリスで93%、オランダで96%でした。

この文は、調査の中で「神経神話」の例として用意されたものです。神経神話とは、脳の科学にもとづいているように見えて、実際には根拠のない思いこみのことです。

「視覚型」に図で教えると伸びるのか

学習スタイルの考え方では、人には「視覚型」「聴覚型」のようなタイプがあるとされます。そして、そのタイプに合った形で教えると、よりよく学べると考えます。「視覚型」の生徒には図や絵を中心に教える、というわけです。

2008年、パシュラーら4人の心理学者は、この考えに科学的な裏づけがあるかを判断する役目を引き受けました。学習スタイルの診断テストや先生向けの手引き書を出す業界がさかんで、先生向けの研修も数多く開かれている、という状況を受けてのことです。

確かめるための実験が、ほとんどない

パシュラーらは、まず、どんな実験ならこの考えを確かめられるかをはっきりさせました。

生徒を学習スタイルでグループに分ける。それぞれのグループの中で、くじ引きで違う教え方に割りふる。全員に同じテストを受けてもらう。そして、タイプによって「いちばん効く教え方」が入れかわることを示す。たとえば、視覚型の生徒は図で伸び、聴覚型の生徒は別の教え方で伸びる、という結果です。

学習スタイルについての研究は山のようにあります。ところが、この形の実験をした研究は、ほんのわずかでした。しかも、その中のいくつかは、タイプに合わせると伸びるという考えと、はっきり食い違う結果になっていました。

パシュラーらは、学習スタイルの診断を一般の教育に取り入れる根拠は、今のところ十分でないと結論しました。限られた教育の資源は、効果の確かめられたほかの方法に使うほうがよい、とも述べています。

好みは、ある

ただし、パシュラーらは2つのことを認めています。ひとつは、どんな形で情報を受け取りたいか、人に好みがあることです。もうひとつは、得意な考え方や、得意な情報の種類に、人によって差があることです。否定されたのは、「好みに合わせて教えると成績が上がる」という部分でした。

また、きちんとした方法の研究が少ないので、ありうる学習スタイルの説がすべて確かめられて否定されたわけではない、とも書いています。多くの説は、まだ確かめられてもいないのです。

デッカーらの調査では、脳についての一般的な知識が多い先生ほど、神経神話を信じやすいという結果も出ています。知識が多ければ神話を見抜ける、とは限らないのです。

自分のタイプより、学ぶ中身に合わせる

「自分は視覚型だから、文字ばかりの参考書は合わない」。そう決めつけると、効く方法を試す機会を自分で減らしてしまいます。

学び方は、自分のタイプより、学ぶ中身に合わせて選ぶ。それが原田英語の考えです。英語の発音なら音を聞く。地理なら地図を見る。数学なら手を動かして解く。そのうえで、どんな中身にも使える、思い出す練習と日をあけた復習を組み合わせましょう。

この記事に出てくる用語
想起練習(思い出す練習)
教科書を閉じて、自分で答えを思い出す勉強。小テストや問題を解くことも、これにあたる。

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参考文献

  1. Pashler H., McDaniel M., Rohrer D., Bjork R. (2008). Learning Styles. Psychological Science in the Public Interest, 9, 105-119.

  2. Dekker S., Lee N., Howard-Jones P., Jolles J. (2012). Neuromyths in Education: Prevalence and Predictors of Misconceptions among Teachers. Frontiers in Psychology, 3.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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