勉強法の常識No.S11
ノートはPCより手書きの方が頭に残るって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:まだ決着していない
「手書きが勝つ」という有名な研究は、同じ方法でやり直した追試では、はっきりとは再現されませんでした。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 3:29
「ペンは剣よりも強し」ということわざがあります。2014年、心理学者のミュラーとオッペンハイマーは、これをもじった題名の論文を発表しました。「ペンはキーボードよりも強し」です。
3つの研究で、講義中に取るノートを比べました。ノートパソコンを使った学生は、手書きの学生より、考え方の理解を問う問題の成績が悪かったのです。
2人が理由として挙げたのは、書き方の違いでした。パソコンだと、講義の言葉をそのまま打ちこみがちです。ノートをたくさん取ること自体は役に立つけれど、言葉を丸写しにして、自分の言葉で言い直さないことが学習を妨げる、と2人は考えました。この研究は、大きな注目を集めました。
同じ方法で、もう一度
2019年、モアヘッド、ダンロスキー、ローソンの3人は、この研究をもとと同じ方法でやり直しました。こうした追試は「直接追試」と呼ばれます。さらに、電子メモ端末に手書きでノートを取るグループと、ノートを取らないグループも加えました。
結果は、もとの研究ほどはっきりしたものではありませんでした。手書きが有利に見える傾向はところどころにあったものの、どのグループの間でも、成績に一貫した差は出ませんでした。ノートを取らなかったグループとさえ、はっきりした差がなかったのです。
ノートを見直すと、差はさらに縮む
実際の授業では、ノートは取って終わりではありません。テストの前に見直して勉強します。モアヘッドらの2つ目の実験では、学生がノートを見直して勉強したあとのテストも調べました。すると、グループ間の差はさらに小さくなりました。
研究チームは、もとの研究と直接追試の結果をまとめた分析もしています。手書きのほうがわずかに有利という向きは出ましたが、その差は小さく、統計的に意味のある差ではありませんでした。
3人の結論は、どちらの方法がノートの役目を果たすうえで優れているかを決めるのは、まだ早い、というものです。
道具より、ノートの使い方
判定を「まだ決着していない」としたのは、このためです。手書きが少し有利な可能性は残っています。でも、パソコンだから不利だ、とまでは言えません。
ミュラーとオッペンハイマーが心配した「丸写し」は、手書きでも起こりえます。黒板をきれいに写すことに集中して、中身はあまり考えていない。そんな手書きノートに、心当たりはないでしょうか。
原田英語のおすすめは、ノートを取る道具で悩むより、授業のあとにひと手間を足すことです。ノートを閉じて、きょうの授業で習ったことを3つ書き出してみる。書けなかったところを、ノートで確かめる。そうすれば、パソコンのノートも手書きのノートも、思い出す練習の材料になります。
この記事に出てくる用語
- 追試
- 同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。
- 想起練習(思い出す練習)
- 教科書を閉じて、自分で答えを思い出す勉強。小テストや問題を解くことも、これにあたる。
参考文献
Mueller P., Oppenheimer D. (2014). The Pen Is Mightier Than the Keyboard. Psychological Science, 25, 1159-1168.
doi.org/10.1177/0956797614524581✓ 実在と内容を確認済み
Morehead K., Dunlosky J., Rawson K. (2019). How Much Mightier Is the Pen than the Keyboard for Note-Taking? A Replication and Extension of Mueller and Oppenheimer (2014). Educational Psychology Review, 31, 753-780.
doi.org/10.1007/s10648-019-09468-2✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





