勉強法の常識No.S49
自然の中を散歩すると、集中力が回復するって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
木の多い公園を歩いたあとや、自然の写真を見たあとで、注意力のテストの成績が上がった実験があります。人数は少なめですが、結果は一貫していました。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 4:27
副作用が知られておらず、いつでも手に入り、しかもお金をかけずに頭の働きを良くしてくれる。そんな治療法があったらどうでしょう。
2008年、アメリカのミシガン大学の心理学者バーマンらは、論文をこんな問いかけから始めました。彼らの言う治療法とは、自然とふれあうことです。
植物園と大通り、同じ4.5キロ
最初の実験に参加したのは、ミシガン大学の学生38人です。まず、数字の列を聞いて、それを逆の順番で言う課題をします。「3、8、5」と聞いたら「5、8、3」と答える、というものです。注意を自分でコントロールする力を測るのに使われます。
そのあと学生たちは、35分ほどかかる、頭を疲れさせるための課題に取り組みます。そして、散歩に出ました。
散歩のコースは2つです。ひとつは、大学の近くにある植物園。木々に囲まれ、車や人の行き来から離れた道です。もうひとつは、車の多い大通りを中心にした街なかのコース。どちらも約4.5キロで、歩くのに50分ほどかかります。迷わないよう地図を渡し、腕にはGPSの時計をつけてもらいました。
戻ってきた学生は、もう一度、数字を逆に言う課題をします。そして1週間後、今度は前回と違うほうのコースを歩きました。
結果、植物園を歩いたあとは、この課題の成績が平均で1.5ポイント上がっていました。街なかを歩いたあとは0.5ポイントです。テストを受けた月は9月、11月、1月、7月とさまざまでしたが、季節による違いは見られませんでした。
気分のせいではなかった
「自然の中を歩くと気分がいいから、成績も上がっただけでは」と考える人もいるでしょう。たしかに、植物園を歩いたあとのほうが気分は良くなっていました。ところが、気分がどれだけ良くなったかと、課題の成績がどれだけ上がったかには、関係が見られなかったのです。
バーマンらは、カプランが唱えた「注意回復理論」で説明します。街なかには、車のクラクションや広告など、注意を強く引きつけるものがあふれています。しかも、車にひかれないよう、自分で注意を向け続けなければなりません。一方、自然の中の木の葉や景色は、ほどよく注意を引きつけてくれます。そのあいだ、自分で注意をコントロールする力が休めるというのです。
写真を見るだけでも
2つめの実験では、12人の学生に、散歩のかわりに写真を見てもらいました。自然の景色の写真50枚か、街の写真50枚を、約10分かけて眺めます。
自然の写真を見たあとは、注意をコントロールする力を測る課題の成績が上がりました。街の写真では上がりませんでした。2つの部屋はどちらも同じ静かな実験室です。静けさだけでは、この差は説明できません。
ただし、どちらの実験も参加者は大学生で、人数は38人と12人です。効果がどのくらい長く続くのかも、この研究ではわかりません。
休み時間の使い方
勉強の合間の休憩に、多くの人はスマホを手に取ります。けれども、通知や動画は、まさに注意を強く引きつけるものです。頭を休めているつもりで、注意をさらに使っているのかもしれません。
原田英語のおすすめは、休憩時間に、木のある場所を少し歩いてみることです。外に出られないときは、窓から空や木を眺めるだけでもかまいません。注意の力は、ゆるやかに休ませると戻ってきます。
参考文献
Berman M., Jonides J., Kaplan S. (2008). The Cognitive Benefits of Interacting With Nature. Psychological Science, 19, 1207-1212.
doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02225.x✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





