勉強法の常識No.S48

1万時間練習すれば、誰でも一流になれるって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:28文献 2件

「1万時間練習すれば、誰でも一流になれる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

練習はたしかに大切です。でも、練習量で説明できる差は分野によって大きく違い、勉強ではわずか4パーセントでした。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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西ベルリンの音楽大学で、バイオリンを学ぶ学生たちが1週間、日記をつけていました。何時に起きて、何時間練習し、いつ眠ったか。15分刻みで記録していきます。

日記を集めてみると、ある違いが浮かびました。教授たちが「世界的なソリストになれる」と推した学生たちは、ひとりでの練習に1日平均3.5時間ほどを使っていました。音楽の先生を目指す学生たちの、ほぼ3倍です。

そしてもうひとつ。トップクラスの学生たちは、よく眠っていました。1日の睡眠は平均8.6時間で、先生を目指す学生より長く、昼寝の時間も週に2.8時間と、3倍ほどありました。練習が、それだけ頭と体を疲れさせるものだったと考えられます。

18歳までに7,410時間

この研究を1993年に発表したのが、心理学者のエリクソンらです。調べたのは、教授が推した「最も優れた」学生10人、「優れた」学生10人、音楽教育の学科で先生を目指す学生10人でした。

学生たちに、バイオリンを始めてから毎年、週に何時間ひとりで練習してきたかを思い出してもらい、合計を出しました。18歳までの練習時間は、最も優れたグループが平均7,410時間、優れたグループが5,301時間、先生を目指すグループが3,420時間。腕前の順番と、練習時間の順番がぴったり一致しました。

エリクソンらは、生まれつきの才能と思われてきた特徴の多くは、少なくとも10年にわたる厳しい練習の結果だ、と主張しました。ただ練習するのではなく、上達するために工夫された、きつい練習です。これを「意図的な練習」と呼びます。

この研究は、のちに一般向けの本や記事でくり返し取り上げられ、いつしか「1万時間練習すれば誰でも一流になれる」という話として広まっていきました。

分野によって、まるで違う

では、練習量は実際にどのくらい腕前を決めているのでしょうか。2014年、心理学者のマクナマラらは、意図的な練習について調べたあらゆる分野の研究を集めて分析しました。

腕前の個人差のうち、練習量で説明できた割合は次のとおりです。ゲームで26パーセント、音楽で21パーセント、スポーツで18パーセント。そして、教育では4パーセント、仕事では1パーセント未満でした。

音楽でさえ、練習量で説明できるのは2割ほど。残りの8割は、ほかの何かで決まっています。マクナマラらの結論は、「意図的な練習は大切だが、これまで言われてきたほどではない」というものでした。

エリクソンらの研究にも限界があります。各グループは10人ずつと少なく、練習時間は本人の記憶にもとづく見積もりです。そもそも、すでに音楽大学に入った学生どうしの比較でした。

量より、中身のある1時間

それでも、練習が無意味になるわけではありません。どの分野でも、練習量と腕前には関係がありました。大事なのは、時間の数字だけを追いかけないことです。

バイオリンの学生たちの日記には、もうひとつ手がかりがあります。ひとりでの練習は、1回あたり平均80分ほどでした。何時間もだらだら続けるのではなく、集中した練習を区切ってくり返し、よく眠っていたのです。

原田英語のおすすめは、勉強時間を記録するとき、時間の横に「何を練習したか」も書くことです。間違えた問題を解き直したのか、できる問題を眺めていただけなのか。弱点をねらい、答え合わせで直してもらいながら進めた1時間は、なんとなく過ごした3時間より、きっと濃い時間になります。

参考文献

  1. Ericsson K., Krampe R., Tesch-Römer C. (1993). The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance.. Psychological Review, 100, 363-406.

  2. Macnamara B., Hambrick D., Oswald F. (2014). Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis. Psychological Science, 25, 1608-1618.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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