勉強法の常識No.S38
カフェインは記憶を良くするって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
覚えたあとのカフェインが、翌日の記憶を少し助けた実験はあります。ただ量は多ければいいわけではなく、夜は眠りをじゃまします。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で、若い人たちが画面に次々と映る写真を眺めていました。写っているのは、身の回りにある物です。覚えてくださいとは言われていません。1枚ごとに、それが屋内の物か屋外の物かを答えるだけです。
写真を見終わると、錠剤が渡されました。半分の人の錠剤にはカフェインが入っていて、残りの半分は見た目が同じ偽物です。どちらを飲んだのかは、本人も、実験をする側も知りません。
飲んだのは、覚えた「あと」
2014年に発表されたボロタらのこの実験には、ひとつ工夫がありました。カフェインを飲むタイミングです。
それまでの研究では、カフェインはたいてい勉強の前に飲ませていました。それでは、記憶が良くなったとしても、目が覚めて集中できたせいなのか、記憶そのものが強くなったせいなのか、区別がつきません。そこでボロタらは、写真を見せ終わってから飲ませることにしました。覚える作業がすんだあとなら、集中力の差は入りこめません。
覚えたばかりの記憶は、まだやわらかい状態です。時間をかけて、少しずつ固まっていきます。この固まっていく過程を「固定化」と呼びます。ボロタらが確かめたかったのは、カフェインがこの固定化を助けるかどうかでした。
参加したのは18歳から30歳の160人で、ふだんカフェインをほとんどとらない人たちです。量は200ミリグラムでした。だ液を調べると、カフェインの成分は飲んで1時間後と3時間後に増え、24時間後にはもとの量に戻っていました。テストを受けるころには、カフェインはもう体に残っていなかったことになります。
そっくりさんを見分ける
テストは24時間後です。画面には3種類の写真が出てきます。前の日に見た写真、初めて見る写真、そして前の日に見た物とよく似ているけれど少しだけ違う写真です。
「見た」「見ていない」の区別では、2つのグループに差はありませんでした。差が出たのは、似ているけれど違う写真です。カフェインを飲んだ人のほうが、「これは前に見たのとは違う、似ているだけだ」と正しく答えられることが多かったのです。記憶が、細かいところまで残っていたことになります。
念のため、別の人たちには、テストの1時間前にカフェインを飲んでもらいました。こちらは偽物の錠剤と差が出ませんでした。カフェインが効いたのは、思い出す場面ではなく、記憶が固まっていく途中だったと考えられます。
多ければいいわけではない
ボロタらは、量を変えた実験もしました。100ミリグラムでは偽物と差がなく、200ミリグラムで差が出ました。300ミリグラムにしても、200ミリグラムより良くはなりませんでした。グラフにすると、山のような形です。ただし300ミリグラムのグループは、条件を満たさない人を除いた結果10人しか残らず、ここははっきりしたことが言えません。
量を増やすと、困ることも増えました。頭痛や落ち着かなさを訴えた人は、偽物の錠剤のグループで16パーセントだったのに対し、300ミリグラムのグループでは45パーセントでした。
この実験にも限界があります。調べたのは写真の見分けで、英単語や年号ではありません。参加したのはカフェインに慣れていない人たちで、毎日コーヒーを飲む人に同じことが起きるかはわかりません。偽物との差も、統計でぎりぎり認められる程度でした。
夜のカフェインは高くつく
もうひとつ気をつけたいのが、眠りです。2013年、ドレイクらは、400ミリグラムのカフェインを飲んでもらい、自宅での睡眠を調べました。飲むのは、寝る直前、寝る3時間前、寝る6時間前のいずれかです。結果は、どのタイミングでも、偽物の錠剤のときより眠りが乱れていました。著者たちは、寝る前の少なくとも6時間は、多めのカフェインを控えるよう勧めています。
眠りは、記憶を固めるための大事な時間です。夜の勉強のあとにエナジードリンクを飲めば、カフェインで少し得をしても、眠りで大きく損をするかもしれません。
原田英語の答えは、昼間の勉強のあとの1杯なら試してもいいけれど、夕方からはやめておく、です。カフェインは、睡眠の代わりにはなりません。
参考文献
Borota D., Murray E., Keceli G., Chang A., Watabe J., Ly M. et al. (2014). Post-study caffeine administration enhances memory consolidation in humans. Nature Neuroscience, 17, 201-203.
doi.org/10.1038/nn.3623✓ 実在と内容を確認済み
Drake C., Roehrs T., Shambroom J., Roth T. (2013). Caffeine Effects on Sleep Taken 0, 3, or 6 Hours before Going to Bed. Journal of Clinical Sleep Medicine, 9(11), 1195-1200.
doi.org/10.5664/jcsm.3170✓ 実在と内容を確認済み
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