勉強法の常識No.S32
勉強した場所と同じ場所でテストを受けると有利って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
水中で覚えた単語は、水中のほうが思い出しやすい。ただし、この効果は条件しだいで小さくなり、頭の中で場所を思い浮かべるだけでも弱まります。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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ダイバーたちが、水の中で単語のリストを覚えています。陸に上がると、今度は別のリストを覚えます。
1975年、心理学者のゴドンとバドリーが行った実験の一場面です。記憶の研究のなかでも、とりわけよく知られた実験の一つです。
水の中で覚えたら、水の中で
ダイバーたちは、陸の上と水の中という2つの環境で単語のリストを覚えました。そして、覚えたのと同じ環境か、もう一方の環境で、覚えた単語を思い出せるだけ書き出しました。
結果は、とてもきれいに分かれました。水の中で覚えたリストは、水の中で思い出したときにいちばんよく思い出せました。陸の上で覚えたリストは、陸の上でいちばんよく思い出せました。
覚えたときの周りの環境が、思い出すときの手がかりになっている。こうした現象は「文脈依存記憶」と呼ばれます。
もちろん、別の説明も考えられます。水から陸へ、陸から水へと移動すること自体が、ダイバーを疲れさせたり、気を散らせたりしたのかもしれません。そこでゴドンとバドリーは、もう一つ実験をしました。その結果、移動のあわただしさが原因とは考えにくいことがわかりました。
これだけ見ると、「勉強した部屋でテストを受けると有利」という話は、ホントに思えます。
たくさんの研究を集計すると
ところが、話はそう単純ではありません。2001年、スミスとベラは、場所や環境と記憶についての研究を集め、メタ分析を行いました。たくさんの研究の結果をまとめて、効果の大きさを確かめる方法です。
全体として見ると、環境による効果はたしかにありました。ただし、条件によっては、その効果がはっきり小さくなっていました。
ひとつは、覚えるときに、周りの環境以外のことに頭を使っている場合です。たとえば、内容の意味をじっくり考えながら覚えると、記憶は部屋の様子とはあまり結びつきません。もうひとつは、思い出すときに、ほかに強い手がかりがある場合です。問題文そのものがよいヒントになっていれば、部屋の様子はほとんど関係なくなります。
スミスとベラは、こうまとめています。人が自分の頭の中のことに集中していて、周りの環境に注意が向いていないときには、環境による効果は起こりにくい、と。
頭の中で、元の部屋に戻る
もう一つ、メタ分析でわかった大事な点があります。思い出すときに、覚えたときの場所や状況を頭の中で思い浮かべると、環境の違いによる影響が小さくなったのです。
実際にその部屋に戻らなくても、頭の中で戻ればいい。これは、受験生にとってはありがたい話です。
試験会場でできること
試験は、ほとんどの場合、自分の部屋ではなく、見知らぬ教室で行われます。それでも、勉強した部屋でテストを受けられないことを、それほど心配する必要はなさそうです。
原田英語のおすすめは2つあります。ひとつは、勉強するときに、内容の意味をよく考えながら覚えることです。周りの環境に頼りすぎない記憶になると考えられます。もうひとつは、試験中にどうしても思い出せないとき、その内容を勉強していた机や、ノートのページを頭の中に思い浮かべてみることです。
また、いつも同じ部屋だけで勉強せず、図書館や教室など場所を変えてみるのも一つの手です。これは研究で直接確かめられた方法ではありませんが、ひとつの部屋に頼りすぎない工夫として試す価値はあります。
ダイバーの実験は本当です。でも、試験会場を海の底にする必要はありません。
参考文献
GODDEN D., BADDELEY A. (1975). CONTEXT‐DEPENDENT MEMORY IN TWO NATURAL ENVIRONMENTS: ON LAND AND UNDERWATER. British Journal of Psychology, 66, 325-331.
doi.org/10.1111/j.2044-8295.1975.tb01468.x✓ 実在と内容を確認済み
Smith S., Vela E. (2001). Environmental context-dependent memory: A review and meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 8, 203-220.
doi.org/10.3758/BF03196157✓ 実在と内容を確認済み
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