教科別の常識No.K32

理科の思い込みは、まちがいだと指摘して説明すると直りやすいって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:26文献 3件

「理科の思い込みは、まちがいだと指摘して説明すると直りやすい」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

思い込みをはっきり否定してから説明する文章は効きます。でも、昔の思い込みは消えずに、頭の中に残り続けます。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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論文での効果思い込みを否定する文章で、理解が中程度に向上(効果量0.41)

今日からできるやり方

  1. 自分の「なんとなくの考え」を、先に書き出す
  2. 教科書の説明と比べ、どこがちがうかを確かめる
  3. よくあるまちがいと正しい理由を、セットで覚える

「地球は太陽のまわりを回っている」。正しいか、まちがいか。できるだけ速く答えてください。

ほとんどの人は「正しい」と答えるはずです。ところが、科学を何年も学んだ大人でも、この文への答えは少し遅れ、まちがいも増えます。「月は地球のまわりを回っている」という文と比べたときの話です。2012年、シュトゥルマンとバルカルセルが確かめたことです。

思い込みは、上書きされない

2人は、2種類の文を用意しました。1つは、子どものころの素朴な考えでも、科学でも、答えが同じになる文。もう1つは、素朴な考えと科学とで、答えが分かれる文です。

太陽は毎日、東から昇って西へ沈みます。素朴に見れば、動いているのは太陽のほうです。だから「月は地球のまわりを回る」は直感とも科学とも合いますが、「地球は太陽のまわりを回る」は直感とぶつかります。

答えが分かれる文では、判断が遅く、まちがいも多くなりました。天文、進化、分数、遺伝、病原菌、物質、力学、体のしくみ、熱、波。調べた10の分野すべてで同じでした。

科学を学んでも、昔の考えは消えていなかったのです。おさえこまれたまま、何年も科学の知識と同居している。論文の題名も「科学の知識は、昔の直感をおさえこむが、置きかえはしない」でした。

誤解を名指しする文章

では、思い込みを直すには、どう教えればいいのでしょうか。思い込みは、ふつうの説明ではなかなか変わらないことが知られています。

そこで長く研究されてきたのが、「反ばく文」と呼ばれる文章です。たとえば「重い物ほど速く落ちる、と考える人は多いですが、これは誤りです」。このように、よくある思い込みをまず示し、誤りだと述べてから、正しい説明をする文章です。

2010年、ティペットは、理科と読みの教育で行われた20年分の反ばく文の研究を見直しました。結論は、ふつうの説明文を読むより、反ばく文を読むほうが考えを変えやすい、というものでした。年齢による違いは見つかりませんでした。

2022年、シュローダーとクチェラは、44の比較、合わせて3869人分のデータをまとめました。反ばく文には、ほかの学び方と比べて中くらいの効果がありました。効果量は0.41で、さまざまな場面で安定していました。作るのが簡単で、費用もほとんどかからない方法です。

直っても、昔の考えは残る

つまり、思い込みを名指しして否定する説明は、たしかに効きます。ただ、シュトゥルマンらの実験からわかるのは、直ったように見えても、昔の考えは頭の中に残っているということです。急いで判断するときには、それが顔を出します。

この実験は判断の速さを調べたもので、教え方を比べたものではありません。それでも、思い込みが「一度直せば終わり」ではないことを教えてくれます。

思い込みと並べて覚える

原田英語のおすすめは、新しい単元に入る前に、自分の「なんとなくの考え」を先に書き出しておくことです。そして教科書の説明と比べ、どこがちがうかを確かめる。よくあるまちがいと、それがまちがいである理由を、セットで覚えておく。

昔の考えは消せなくても、それに気づいて、止めることはできます。

この記事に出てくる用語
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。

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参考文献

  1. Tippett C. (2010). Refutation Text in Science Education: A Review of Two Decades of Research. International Journal of Science and Mathematics Education, 8, 951-970.

  2. Schroeder N., Kucera A. (2022). Refutation Text Facilitates Learning: a Meta-Analysis of Between-Subjects Experiments. Educational Psychology Review, 34, 957-987.

  3. Shtulman A., Valcarcel J. (2012). Scientific knowledge suppresses but does not supplant earlier intuitions. Cognition, 124, 209-215.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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