教科別の常識No.K28
小説を読むと、人の気持ちがわかるようになるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
小説を読むと人の心を読み取る力が少し上がる、という結果はあります。ただ効果は小さく、再現できなかった実験もあります。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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論文での効果小説を読むと、人の心を読み取る課題で効果量0.15〜0.16
今日からできるやり方
- 登場人物の気持ちを、場面ごとに想像する
- なぜその行動をしたのか、理由を考える
- 読んだ物語の感想を、人と話し合う
2013年、ある心理学の研究が大きな注目を集めました。発表したのはキッドとカスターノ。文学作品の一部を読んだ人は、読んだ直後に、相手の気持ちを読み取るテストの成績が上がった、というのです。大衆小説やノンフィクションを読んだ人では、そうはなりませんでした。
使われたのは「目から心を読むテスト」です。その名のとおり、目の表情だけから、その人がどんな気持ちでいるかを答えるテストです。小説を少し読むだけで、人の心がわかるようになる。本好きにはうれしい話でした。
3つのチーム、792人でやり直す
話題になった研究は、別の研究者がやり直して確かめます。2016年、パネロらは、3つの独立したチームで、この実験を再現しようとしました。
参加者は792人。くじ引きで4つの組に分けました。文学作品を読む組、大衆小説を読む組、ノンフィクションを読む組、何も読まない組です。そのあとで、全員が同じ「目から心を読むテスト」を受けました。
結果は、文学作品を読んだ組の成績が、ほかのどの組とも変わらない、というものでした。少し読むだけで気持ちを読む力が上がる、という元の結果は確かめられなかったのです。
長く読んできた人は、成績が高い
ただ、この実験にはもうひとつの結果がありました。参加者は、これまでの人生で小説をどれくらい読んできたかを測るテストも受けていました。その点数が高い人ほど、どの組でも「目から心を読むテスト」の成績が高かったのです。元の研究でも、同じ傾向が見られていました。
パネロらは、2つの可能性を挙げています。人の心を読むのが得意な人が、もともと小説を好むのかもしれない。あるいは、長い年月をかけて小説を読むうちに、少しずつその力が育つのかもしれない。言葉の力など、ほかの要因が関わっている可能性もあります。今の時点では、どれなのかはわかりません。
14本の実験をまとめると
では、小説を読むことに、人の心を読み取る力を上げる効果はまったくないのでしょうか。2018年、ドデルフェダーとタミールは、公表された実験と、まだ論文になっていない実験を集めて、メタ分析をしました。14の研究から、53の効果の大きさを取り出しています。
小説を読んだ人は、ノンフィクションを読んだ人や何も読まなかった人に比べて、人の心を読み取る課題の成績が少し良くなっていました。効果量は0.15から0.16。0.2で「小さい」とされる目安よりも、さらに小さな効果です。それでも、分析のしかたを変えても結果は安定していて、都合のよい結果だけが発表されたせいとも考えにくい、とされました。
著者らは、この力が実際の人間関係にまで生きるのかは、まだ調べる必要があると書いています。
1冊では変わらなくても
1冊の小説で人の気持ちがわかるようになる、というのは言いすぎです。でも、小説を読むことが心を読む力と無関係だとも言えません。
原田英語のおすすめは、読むときに登場人物の気持ちを想像する時間を、意識して作ることです。この人はなぜここで黙ったのか。読み終えたら、その答えを誰かと話してみる。効果は小さくても、積み重ねる時間は長く取れます。
この記事に出てくる用語
- メタ分析
- たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
- 効果量
- 効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
- 追試
- 同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。
参考文献
Dodell-Feder D., Tamir D. (2018). Fiction reading has a small positive impact on social cognition: A meta-analysis. Journal of Experimental Psychology: General, 147, 1713-1727.
doi.org/10.1037/xge0000395✓ 実在と内容を確認済み
Panero M., Weisberg D., Black J., Goldstein T., Barnes J., Brownell H., Winner E. (2016). Does reading a single passage of literary fiction really improve theory of mind? An attempt at replication. Journal of Personality and Social Psychology, 111, e46-e54.
doi.org/10.1037/pspa0000064✓ 実在と内容を確認済み
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