教科別の常識No.K29

理科の実験は、本物の器具でやらないと身につかないって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 3:53文献 3件

「理科の実験は、本物の器具でやらないと身につかない」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

画面の中で器具を動かす実験でも、本物の器具と同じくらい学べることが、小学生でも大学生でも確かめられています。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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論文での効果本物の実験とバーチャル実験で、理解の伸びは同じ程度

今日からできるやり方

  1. 実験の前に「何を変えて、何を比べるか」を決める
  2. 教室でできない実験は、シミュレーションで試す
  3. 条件を1つずつ変え、結果を予想してから確かめる

「クリックするか、手でつかんで持ち上げるか」。2003年に、トリオナとクラールが発表した論文には、こんな意味の題がついています。理科の実験を、パソコンの画面でやるか、本物の道具でやるか。その違いを比べた研究です。

理科の実験は、本物の器具を手で扱ってこそ身につく。多くの人がそう感じているはずです。けれど論文の冒頭で2人は、どちらが効くかを予想できるだけの理論も証拠も、まだない、と書いています。

条件を1つだけ変える実験

2人が小学4・5年生に教えたのは、正しい実験の組み立て方でした。比べたい条件だけを変え、ほかの条件はそろえる。そうしないと、結果の違いが何のせいかわからなくなります。

子どもたちは2つの組に分かれました。本物の道具を手で動かす組と、パソコンの画面の中で同じ道具を動かす組です。違いは、それだけでした。

結果は、どちらの組も同じくらいよく学べた、というものでした。条件をそろえた実験を自分で組み立てる力、その実験から正しい予想を導く力、なぜ条件をそろえる必要があるのかを言葉で説明する力。どれについても、差は出なかったのです。

大学生の「熱と温度」でも

2011年、ザカリアとオリンピウは、大学生の物理で同じ問いを確かめました。単元は「熱と温度」です。

182人を4つの組に分けました。本物の器具だけで実験する組、画面の中で実験する組、そして両方を順番に組み合わせた2つの組です。比べる組として、実験をしないふつうの授業を受けた52人もいました。授業の前、途中、後に理解度のテストを行いました。

結果は、4つの実験の組がどれも同じくらい理解を伸ばし、どれも実験をしない組より上でした。

大事なのは「自分で動かすこと」

この結果から、2人はこう結論しています。学びにとって大事なのは、本物かどうかではない。本物でも画面でも、自分の手で操作することだ。少なくとも、この研究のような場面では、と。

2013年、デ・ヨングらは、科学誌「サイエンス」に載せた総説で、本物の実験室とバーチャルの実験室、それぞれの価値を比べました。そのうえで、2つを組み合わせて理科の学びを強めることを勧めています。

画面の中なら、教室では危なくてできない実験や、何度もやり直すのが大変な実験も試せます。一方で、器具を自分で扱う経験にも、それならではの価値があるでしょう。また、比べられた単元や年齢は、まだ限られています。

画面の前でも、自分で決める

原田英語のおすすめは、本物かバーチャルかにこだわるより、「何を変えて、何をそろえるか」を自分で決めることです。条件を1つ変えたら、結果を予想してから確かめる。それができれば、ビーカーでもタブレットでも、実験はちゃんと学びになります。

参考文献

  1. Triona L., Klahr D. (2003). Point and Click or Grab and Heft: Comparing the Influence of Physical and Virtual Instructional Materials on Elementary School Students' Ability to Design Experiments. Cognition and Instruction, 21, 149-173.

  2. Zacharia Z., Olympiou G. (2011). Physical versus virtual manipulative experimentation in physics learning. Learning and Instruction, 21, 317-331.

  3. de Jong T., Linn M., Zacharia Z. (2013). Physical and Virtual Laboratories in Science and Engineering Education. Science, 340, 305-308.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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