教科別の常識No.K31
先生の実験を見ているだけで、理科はわかるようになるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
ただ見るだけの演示実験では、見なかった人と理解が変わらないという結果があります。先に結果を予想すると、学びが変わります。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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論文での効果先に結果を予想すると、正しく観察できる割合が約20%上がった
今日からできるやり方
- 実験を見る前に、結果を予想してノートに書く
- 予想の理由も、ひとこと書いておく
- 見たあと、予想と結果のちがいを確かめる
- なぜそうなったかを、自分の言葉で説明する
理科の授業で、先生が教卓の上で実験をして見せる。音がしたり、色が変わったり、物が思いがけない動きをしたりして、教室に「おお」という声が上がる。そんな場面を覚えている人は多いでしょう。
では、その実験で何が起きたのかを、何週間かあとに聞かれたら、正しく答えられるでしょうか。そもそも、そのとき本当に正しく見ていたでしょうか。
見た学生と、見なかった学生
先生が見せる実験を、演示実験といいます。2004年、クラウチらは、物理の授業で、演示実験の見せ方によって学びがどう変わるかを調べました。論文の題は「教室の演示実験は、学びの道具か、娯楽か」です。
結果ははっきりしていました。ただ見ていただけの学生は、その実験をまったく見なかった学生と比べて、理解が変わらなかったのです。これは、それ以前の研究とも一致する結果でした。
一方、見る前に結果を予想した学生は、はっきり理解が深まりました。同じ実験を見ても、見る前に頭を働かせたかどうかで、学びの量が変わったのです。
5回に1回は、ちがうものを見ている
なぜ見るだけでは学べないのか。その手がかりになる研究があります。2013年、ミラーらは、2つの大きな大学で、力学と電磁気の入門の授業を調べました。
学生たちは、まず演示実験の結果を予想しました。そして実験を見た直後と、数週間後に、何が起きたかを答えました。それを実際の結果と照らし合わせたのです。
すると、およそ5回に1回、学生の答えは実際に起きたことと食いちがっていました。目の前で見たはずなのに、ちがう結果を見たと思っていたのです。もとの理解が足りない学生ほど、こうした見まちがいや覚えまちがいが起きやすくなっていました。
そして、理解が深まったのは、正しく観察できたときだけでした。見まちがえたままでは、実験から学ぶことはできなかったのです。
予想が外れても、効く
ここで、予想することの効き目がもう一度出てきます。先に結果を予想した学生は、正しく観察できる割合が、およそ20%高くなっていました。
しかもこの効果は、予想が当たったかどうかに関係なく表れました。外れた予想にも、意味があったのです。予想をすることで、何に注目して見ればいいかがはっきりするのかもしれません。
どちらも物理の授業での研究で、ミラーらの対象は大学生です。それでも、中学や高校の理科の授業にも参考になる考え方です。
実験の前に、ノートに一行
原田英語のおすすめは、演示実験が始まる前に、結果の予想を一行だけノートに書くことです。理由もひとこと添えておく。見終わったら、予想と結果のちがいを確かめ、なぜそうなったかを自分の言葉で説明してみる。
当てる必要はありません。外れた予想こそ、実験をよく見るための目印になります。
参考文献
Crouch C., Fagen A., Callan J., Mazur E. (2004). Classroom demonstrations: Learning tools or entertainment? American Journal of Physics, 72, 835-838.
doi.org/10.1119/1.1707018✓ 実在と内容を確認済み
Miller K., Lasry N., Chu K., Mazur E. (2013). Role of physics lecture demonstrations in conceptual learning. Physical Review Special Topics - Physics Education Research, 9, 020113.
doi.org/10.1103/PhysRevSTPER.9.020113✓ 実在と内容を確認済み
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