教科別の常識No.K19

国語の読解力はセンスで決まる。勉強しても伸びないって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 5:02文献 4件

「国語の読解力はセンスで決まる。勉強しても伸びない」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

読み方の作戦や背景の知識を教わると、読解力は伸びます。ただ、どのテストで測るかによって、伸びの大きさは変わります。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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論文での効果読むのが苦手な小3〜高3で、読解の効果量0.59(64研究)

今日からできるやり方

  1. 読む前に、何を知りたいか目標を決める
  2. 題名や見出しから、内容を予想してから読む
  3. 段落ごとに、要点を自分の言葉で一文にする
  4. わからない所で止まり、読み直して確かめる

中学生64人が、野球の試合の一場面を描いた文章を読みました。1イニングの半分、つまり片方のチームが攻撃するあいだの出来事です。

読み終えると、生徒たちは人形を動かして、試合の流れを再現しました。言葉でも説明し、あとで要約もしました。

1988年、レクトとレスリーが行ったこの実験には、しかけがありました。生徒たちは前もって、2つの点で分けられていたのです。ひとつは読解力が高いか低いか。もうひとつは、野球にくわしいかどうかです。

読むのがうまい、の中身

結果は、どの測り方でも、野球にくわしい生徒のほうがよく覚えていました。その効果は、読解力の高い生徒でも低い生徒でも、同じように見られました。

文章がどれだけ読めるかは、文章の外にある知識に大きく左右されます。「あの子は読むセンスがある」と見えるとき、その中には、その話題をよく知っているということも含まれているのかもしれません。知識なら、あとから増やすことができます。

4つの作戦を、交代で教え合う

読み方そのものも、教えることができます。1984年、パリンサーとブラウンは、読解が苦手な中学1年生に、4つの作戦を教えました。要点をまとめる。問いを立てる。わからないところをはっきりさせる。次の内容を予想する。

教え方にも工夫がありました。大人と生徒が交代で先生役になり、文章について話し合いを進めるのです。最初は大人がお手本を見せ、少しずつ生徒に任せていきました。

この教え方は、ふつうの授業をまねた方法より大きな伸びを生みました。要約や問いの質が上がり、読解のテストの成績も伸びて、その伸びは時間がたっても続きました。教室の読解テストや標準テストにも、伸びが広がりました。2つめの研究では、ボランティアの先生がふだんの読書グループで教えても、多くの結果がくり返されました。

教室に持ちこむと

その後、こうした研究はたくさん積み重なりました。2022年、フィルダーマンらは、読むのが苦手な小学3年生から高校3年生への指導を調べた64の研究をまとめました。指導を受けた子は、読解力がはっきり伸びていました。効果量は0.59です。とくに効果が大きかったのは、読み方の作戦を教える指導と、文章の背景にある知識を教える指導でした。学年が上がっても、効果は小さくなりませんでした。なお、研究者が自分で作ったテストで測ると、効果は大きめに出る傾向がありました。

ただし、先生がクラス全体に教える場合は、話が少し変わります。2018年、オッキンガらは、そうした52の研究をまとめました。読み方の作戦を使う力そのものは、中くらいに伸びていました。ところが読解力は、研究者が作ったテストでは小さな伸び、広く力を測る標準テストでは、ごく小さな伸びにとどまりました。

研究者が自分で教えた場合のほうが、先生が教えた場合より効果が大きい傾向もありました。どんな文章でも読める力に育てるのは、簡単ではないということです。いっぽうで、「読む目標を立てる」ことを含む指導は、効果が大きい傾向がありました。

センスより、作戦と知識

どれも海外の研究で、日本の国語の授業で確かめたものではありません。それでも、読解力がセンスだけで決まり、勉強しても伸びない、という考えは、研究と合いません。

読む前に、何を知りたいかを決める。題名や見出しから、内容を予想する。段落ごとに、要点を自分の言葉で一文にする。わからないところで止まって、読み直す。そして、ふだんからいろいろな分野の知識をたくわえておく。

センスに見えるもののかなりの部分は、作戦と知識の積み重ねだと考えられます。どちらも、今日から増やしていけます。

この記事に出てくる用語
効果量
効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
追試
同じ実験をもう一度行い、同じ結果が出るかを確かめること。

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参考文献

  1. Filderman M., Austin C., Boucher A., O'Donnell K., Swanson E. (2022). A Meta-Analysis of the Effects of Reading Comprehension Interventions on the Reading Comprehension Outcomes of Struggling Readers in Third Through 12th Grades. Exceptional Children, 88, 163-184.

  2. Okkinga M., van Steensel R., van Gelderen A., van Schooten E., Sleegers P., Arends L. (2018). Effectiveness of Reading-Strategy Interventions in Whole Classrooms: a Meta-Analysis. Educational Psychology Review, 30, 1215-1239.

  3. Recht D. R., Leslie L. (1988). Effect of prior knowledge on good and poor readers' memory of text. Journal of Educational Psychology, 80(1), 16-20.

  4. Palincsar A. S., Brown A. L. (1984). Reciprocal teaching of comprehension-fostering and comprehension-monitoring activities. Cognition and Instruction, 1(2), 117-175.

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