教科別の常識No.K34

理科は、たとえ話を使うとわかりやすくなることがあるって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:10文献 3件

「理科は、たとえ話を使うとわかりやすくなることがある」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:半分ホント

身近なものにたとえた説明は、理解と記憶を助けます。ただし、たとえと本物の「ずれ」から、まちがった理解が生まれることもあります。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)

0:00 / 4:10

論文での効果細胞を工場にたとえた文章で、2週間後の記憶も向上

今日からできるやり方

  1. 新しい用語を、身近なものにたとえてみる
  2. たとえと本物の「似ている点・ちがう点」を書き出す
  3. 何を学ぶためのたとえかを、先に確かめる

動物の細胞は、ひとつの工場のようなものです。工場には、全体に指示を出す部署、製品を作る部署、できた物を包んで出荷する部署、エネルギーを作る部署があります。細胞の中の小さな部品も、それぞれがこうした持ち場を受け持っている、と考えてみるのです。

理科の先生がよく使う、たとえ話です。このたとえは、本当に理解を助けているのでしょうか。

細胞を工場にたとえる

1998年、グリンとタカハシは、この「細胞は工場」のたとえを使って、中学生を対象に実験をしました。用意したのは、工場と細胞の部品の働きを、図と文章で1つずつ対応させた教材です。比べる組は、たとえ話の入っていないふつうの教材で学びました。

1つめの実験は、日本の中学2年生にあたる8年生が対象でした。たとえ話つきの教材で学んだ生徒は、細胞の各部分の働きを、学んだ直後にも2週間後にも、よく思い出すことができました。

2つめの実験は、それより2学年下の6年生が対象です。たとえ話つきの教材で学んだ生徒は、細胞のしくみを「わかりやすい」と感じていました。思い出すテストでも、選択肢から選ぶテストでも、直後と2週間後の成績が上でした。

著者らは、たとえ話が、生徒がすでに知っていることと、新しく学ぶことの間を取り持ったのだろう、と考えています。

直感から、橋をかける

物理でも、たとえ話を使った授業が試されています。1993年、クレメントは、生徒の思い込みが根強い力学の3つの単元で授業を作りました。机の上の物を机が支える力、摩擦の力、動いている物どうしの作用と反作用です。

授業ではまず、生徒が直感で納得できる身近な例を出発点にします。そこから、少しずつ違う例を橋のようにつないで、問題の場面までたどりつきます。そのたとえが本当に成り立つのかを、クラスで話し合いもしました。

授業の前後のテストを比べると、この授業を受けた組は、ふつうの授業の組より大きく成績を伸ばしていました。

たとえ話が生む誤解

ただし、クレメント自身が、こうも書いています。生徒がたとえに納得できるよう手助けすることに、ふつうよりずっと多くの手間をかけるべきだ、と。たとえ話は、出せば伝わるものではないのです。

1991年、ズックとディベスタは、小学3年生193人が、たとえ話からどんな推測をするかを分析しました。たとえ話から、本物の内容について推測するとき、まちがった理解が生まれることがあります。その仕組みを調べたのです。何を学ぶためのたとえなのかを、はっきり知らされていた子どもたちでは、本物と食いちがう推測が少なくなっていました。

工場には社員がいますが、細胞には社員はいません。どんなたとえも、どこかで本物とずれます。

原田英語のおすすめは、たとえ話を聞いたら、「似ている点」と「ちがう点」を1つずつ書き出すことです。何を説明するためのたとえなのかを、先に確かめておく。たとえ話は理解の入口として使い、最後は本物の説明に戻りましょう。

参考文献

  1. Glynn S., Takahashi T. (1998). Learning from analogy-enhanced science text. Journal of Research in Science Teaching, 35, 1129-1149.

  2. Clement J. (1993). Using bridging analogies and anchoring intuitions to deal with students' preconceptions in physics. Journal of Research in Science Teaching, 30, 1241-1257.

  3. Zook K., Di Vesta F. (1991). Instructional analogies and conceptual misrepresentations. Journal of Educational Psychology, 83, 246-252.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

あわせて読みたい関連する常識

20問・約2分あなたの勉強法は、科学的に何点?科学度診断をはじめる → 10問・ランダム出題ウソかホントか、見抜けるか?判定チャレンジに挑戦 →