教科別の常識No.K37
歴史は、物語として読むと覚えやすいって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
物語の文章は説明文より理解しやすく、思い出しやすい傾向があります。ただ、同じ内容を物語にすればいつでも得をするとは限りません。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 4:01
今日からできるやり方
- 出来事を「だれが、なぜ、どうした」の流れでまとめる
- 人物の立場になって、出来事を語ってみる
- 流れをつかんだら、教科書で要点を確かめる
血液が心臓から送り出され、全身をめぐって、また心臓に戻ってくる。この道のりを、教科書のような説明文ではなく、登場人物のいるストーリーの中に書きこんだら、もっと覚えやすくなるでしょうか。
歴史の勉強でも、同じことがよく言われます。年号を並べた説明より、人物のドラマとして読むほうが頭に入る、と。歴史マンガや時代劇から歴史が好きになった人も多いでしょう。
3万3000人のデータでは
物語は説明文より理解しやすく、覚えやすい。これは多くの理論が予想してきたことでした。ところが、実際に実験で比べてみると、結果はまちまちでした。
そこで2021年、マーらは、物語と説明文の理解や記憶を比べた実験を集めて、メタ分析をしました。75を超えるグループ、3万3000人以上のデータです。
結果ははっきりしていました。物語のほうが理解しやすく、よく思い出せたのです。この結果は、1つの研究を外しても変わらず、研究の条件の違いにも左右されませんでした。
人物の行動や、出来事の原因と結果で語れる歴史は、この強みを生かしやすい教科だと考えられます。
血液の循環を、物語にしてみると
では、同じ知識を物語の中に入れれば、いつでも得をするのでしょうか。
2007年、ウルフとミエンコは、大学生90人で実験をしました。学ぶ内容は、はじめに書いた血液の循環です。同じ事実を、物語の文章に入れたものと、説明文に入れたものを用意し、どちらかを読ませました。読む前と後で、循環についての知識を測りました。
全体として見ると、物語で読んでも説明文で読んでも、学べた量や思い出せた量に差はありませんでした。
知っている人ほど、説明文で伸びる
違いが出たのは、もともとの知識の量で分けたときです。その分野をよく知っている学生は、物語より説明文のほうでよく学べていました。また説明文では、知識が多いほど多く思い出せましたが、物語では、知識の量と思い出せた量に関係がありませんでした。
著者らは、物語と説明文とでは、読んだ内容を自分の知識と結びつけるやり方が違うのだろう、と考えています。
マーらのまとめには、歴史以外の文章も多く含まれています。物語の強さは確かでも、それが歴史の教科書の暗記にそのまま当てはまるかは、まだわかりません。
流れは物語で、要点は教科書で
物語は、歴史の入口として役に立ちます。時代の流れや人物の動きをつかむには、物語の形がよく効きます。ただ、ある程度知識がついてきたら、要点を整理した説明文で固めるほうが、学びは深まりそうです。
原田英語のおすすめは、2段構えです。まず、出来事を「誰が、なぜ、どうしたか」の流れでまとめ、人物の立場になって語ってみる。流れがつかめたら、教科書で要点と用語を確かめる。物語で入って、説明文で固める。その順番がよさそうです。
参考文献
Mar R., Li J., Nguyen A., Ta C. (2021). Memory and comprehension of narrative versus expository texts: A meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 28, 732-749.
doi.org/10.3758/s13423-020-01853-1✓ 実在と内容を確認済み
Wolfe M., Mienko J. (2007). Learning and memory of factual content from narrative and expository text. British Journal of Educational Psychology, 77, 541-564.
doi.org/10.1348/000709906x143902✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





