偉人の勉強法No.F06

ダ・ヴィンチ流「見ないで描いて手本と重ねる」と、よく覚えられるって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:51文献 4件

「ダ・ヴィンチ流「見ないで描いて手本と重ねる」と、よく覚えられる」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ホント

見ずに描いてから手本と重ねて直す流れは、記憶研究で効果が確かめられた「思い出す練習」と「答え合わせ」そのものです。

ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。

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論文での効果テストの後に答え合わせをすると、正しく思い出せる量がさらに増えた

今日からできるやり方

  1. 覚えたい図や内容を、何も見ずに書き出す
  2. 手本と重ねて比べ、違う所に印をつける
  3. 間違えた部分だけ、手本を見て練習し直す
  4. 寝る前に頭の中で思い出し、翌朝もう一度書く

人の作品の間違いには、すぐ気づく。自分の作品の大きな間違いは、見過ごしてしまう。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、手記の中でそう書き、画家にひとつの工夫を勧めています。描いている絵を、平らな鏡にたびたび映してみること。左右が逆になった絵は、ほかの画家の作品のように見えるので、欠点がよくわかる、というのです。ときどき手を止めて休むこと、少し離れて見ることも勧めています。

自分の仕事を、他人の目で確かめる。ダ・ヴィンチは、ものを覚えるときにも、同じような仕掛けを使っていました。

ガラスに写した手本

手記には「よく暗記する方法について」という短い一節があります。

同じものを何度も描いて、もう覚えたと思ったら、手本を見ずに描いて試してみる。手本は薄く平らなガラスに写し取っておき、それを自分の絵の上に重ねる。写しと合わない所、自分が間違えた所をよく確かめ、同じ誤りをくり返さないよう心に留める。それから手本に戻り、間違えた部分を、しっかり頭に入るまで何度も描き直す。ガラスがなければ、油をしみこませて乾かした、ごく薄い子ヤギの皮を使えばいい。使い終わったらスポンジで洗って、また使える。

500年ほど前の画家の暗記法は、手順に分けると、見ずに描く、重ねて比べる、間違えた所だけ描き直す、の3つです。この流れは、現代の記憶研究とよく合っています。

見ずに描くのは、思い出す練習

手本を見ずに描くのは、記憶から思い出す練習そのものです。

2006年、ローディガーとカーピキーは、大学生に説明文を学ばせました。一方のグループは文章を読み直し、もう一方は何も見ずに思い出せるだけ書き出すテストを受けます。最後のテストを5分後に受けると、読み直したグループのほうが成績は上でした。ところが2日後と1週間後には、思い出すテストをしたグループが大きく上回りました。読み直したグループは、覚えているという自信だけが高まっていました。

「もう覚えたと思ったら、見ずに試す」というダ・ヴィンチの指示は、この自信の落とし穴を避ける方法でもあります。

重ねて比べるのは、答え合わせ

ガラスの手本を重ねる作業は、答え合わせにあたります。

2008年、バトラーとローディガーは、文章を読んだあとに選択式のテストを受けさせる実験をしました。選択式のテストは記憶を強めますが、まぎらわしい誤りの選択肢を選んでしまうと、間違った知識まで覚えてしまう危険があります。そこで、テストのあとすぐ正解を示す、少し時間をおいて示す、示さない、の3つを比べました。

あとのテストで、正解を示した場合は、すぐでも時間をおいても、正しい答えが増え、テストで選んだ誤りの選択肢を答えてしまうことも減りました。思い出したら、そのままにせず確かめる。ダ・ヴィンチがガラスを重ねて「ずれ」を確かめたのと同じです。

暗い寝床で思い出す

ダ・ヴィンチは、もうひとつ、眠る前の習慣も書き残しています。暗い寝床の中で、昼間に学んだ形を思い浮かべてみる。自分で試して少なからず役に立った、記憶に刻むのにすぐれた練習だ、と。

眠りと学び直しについては、2016年、マッツァらの実験があります。40人が外国語の単語を、完璧に言えるまで練習しました。半分の人は朝に学んで、同じ日の夜に学び直します。残りの半分は夜に学んで、眠り、翌朝に学び直します。どちらも間は12時間です。

眠りをはさんだグループは、学び直しに必要な練習量が半分で済みました。1週間後も6か月後も、記憶がよく保たれていました。寝床で思い出すことそのものを調べた実験ではありませんが、眠る前に学んだことを、翌朝もう一度確かめる流れは、この結果と合っています。

なお、ダ・ヴィンチの方法そのものを試した研究はありません。それでも、原田英語のおすすめはこうです。覚えたい図や内容を、何も見ずに書き出す。教科書と重ねるように見比べ、違う所に印をつける。間違えた所だけを練習し直す。そして寝る前に頭の中でもう一度思い浮かべ、翌朝、白紙に書いてみる。

自分の間違いは、自分では見えにくいものです。だから、手本という「他人の目」を借りて確かめます。

この記事に出てくる用語
想起練習(思い出す練習)
教科書を閉じて、自分で答えを思い出す勉強。小テストや問題を解くことも、これにあたる。

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参考文献

  1. Leonardo da Vinci. The Notebooks of Leonardo da Vinci (J. P. Richter, Trans., 1888), §496 and §531 (Project Gutenberg eBook #5000).

  2. Roediger H., Karpicke J. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17, 249-255.

  3. Butler A., Roediger H. (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36, 604-616.

  4. Mazza S., Gerbier E., Gustin M., Kasikci Z., Koenig O., Toppino T., Magnin M. (2016). Relearn faster and retain longer: Along with practice, sleep makes perfect. Psychological Science, 27, 1321-1330.

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