偉人の勉強法No.F07
リンカーンの言う通り、声に出して読むとよく覚えられるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
声に出すと覚えやすくなるのは確かです。ただ、効くのは「一部だけ声に出す」ときで、全部を音読すればいいわけではありません。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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論文での効果全員が音読する場合、見分けるテストで効果量0.37
今日からできるやり方
- 全部ではなく、特に覚えたい所だけ声に出す
- 大事な語句は、小声でも口を動かして読む
- 読み終えたら本を閉じ、内容を思い出す
- 黙読と音読を混ぜ、大事な所を目立たせる
朝9時ごろ、事務所に着くと、まず新聞を手に取る。古いソファーに寝そべり、片足を椅子に乗せて、声に出して読み始める。
アメリカの法律事務所で、エイブラハム・リンカーンと共同で働いていたハーンドンは、その習慣に悩まされていました。リンカーンは、声に出す以外の読み方を決してしなかった。この癖には我慢の限界までいらいらさせられた、と、リンカーンの死後に書いた伝記で振り返っています。
「二つの感覚でつかまえる」
あるとき、ハーンドンは、なぜ声に出して読むのかと尋ねました。リンカーンの答えはこうでした。声に出して読むと、二つの感覚で考えをつかまえられる。まず、読んでいるものが目に見える。次に、それが耳に聞こえる。だから、よく覚えられるのだ、と。
ただし、これはリンカーン本人が書いた文章ではなく、ハーンドンの回想です。それでも、声に出すと覚えやすいという感覚そのものは、現代の研究で確かめられています。
声に出した単語は、なぜ残るのか
声に出して読んだ言葉が、黙って読んだ言葉よりよく覚えられる現象は、「産出効果」と呼ばれます。2010年、マクラウドらは、8つの実験でこの効果の正体を調べました。
わかったのは、効果が出やすい条件でした。同じリストの中で、一部の単語だけを声に出し、残りを黙読したときに、声に出した単語がよく覚えられたのです。声に出さず、口の形だけを動かしても効果がありました。一方、一部の単語に、声に出す代わりに毎回同じ動作や同じ返事をしても、効果は出ませんでした。
マクラウドらは、これを「目立ち」で説明しています。一部だけを声に出すと、その単語には、ほかの単語にはない独特の手がかりがつく。テストのとき、その手がかりのおかげで、その単語を見分けやすくなる、というのです。
自分の声を聞くこと
では、効いているのは、口を動かすことでしょうか、それとも耳で聞くことでしょうか。2018年、フォリンとマクラウドは、この2つを分けようとしました。
比べたのは4つの条件です。自分で声に出して読む。前もって録音しておいた自分の声を聞く。ほかの人が読む声を聞く。黙って読む。記憶の成績は、この順に並びました。自分の録音を聞く条件は、自分で読み上げる条件と、他人の声を聞く条件の中間でした。
つまり、話すという体の動きと、「自分の声」という独特の音の両方が効いているようです。リンカーンの「目と耳」という説明は、半分当たっていたことになります。
全部を音読すると
ここで気になるのは、最初の実験の条件です。一部だけ声に出すと目立つのなら、全部を声に出したらどうなるのでしょう。
2013年、フォーセットは、全部を音読する人と全部を黙読する人を比べた研究をまとめました。選択肢から見分けるテストでは、音読した人のほうが良く、効果は中程度(効果量0.37)でした。
2023年、フォーセットらは、研究を増やして分析し直しました。見分けるテストの効果は、再び確かめられました。ところが、何も見ずに思い出すテストでは、全体として差が見られませんでした。リストのうち、あとのほうの単語では音読の効果が見られました。また、音読すると、リストになかった言葉をうっかり答えてしまう間違いが減りました。
全部を音読すれば、何でも思い出せるようになるわけではないのです。
原田英語のおすすめは、音読を、特に覚えたい所にしぼって使うことです。教科書なら、大事な定義や公式、英語なら覚えたい表現だけを声に出す。ほかは黙読でかまいません。図書館などで声が出せないときは、口の形だけ動かします。そして読み終えたら本を閉じ、内容を思い出してみましょう。
リンカーンの事務所で毎朝響いていた声は、相棒にとっては迷惑でした。みなさんは、声を出す所を選べば、周りにも記憶にもやさしい音読ができます。
参考文献
Herndon W., Weik J. (1889/1896). Abraham Lincoln: The True Story of a Great Life, Vol. 2, Ch. 1. D. Appleton (Project Gutenberg eBook #38484).
www.gutenberg.org/ebooks/38484✓ 実在と内容を確認済み
MacLeod C., Gopie N., Hourihan K., Neary K., Ozubko J. (2010). The production effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36, 671-685.
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Forrin N., MacLeod C. (2018). This time it's personal: The memory benefit of hearing oneself. Memory, 26, 574-579.
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Fawcett J., Baldwin M., Whitridge J., Swab M., Malayang K., Hiscock B., Drakes D., Willoughby H. (2023). Production improves recognition and reduces intrusions in between-subject designs: An updated meta-analysis. Canadian Journal of Experimental Psychology, 77, 35-44.
doi.org/10.1037/cep0000302✓ 実在と内容を確認済み
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