英語の常識No.E48

紙の辞書で引いた方が、電子辞書より単語が記憶に残るって、ホント?

判定日 読了 約3分音声 4:00文献 3件

「紙の辞書で引いた方が、電子辞書より単語が記憶に残る」のイメージイラスト

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?

先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:まだ決着していない

紙が有利だというはっきりした証拠はありません。差がないという研究も、電子が有利という研究もあり、結論は割れています。

まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。

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2010年に出た、辞書の研究の専門誌『国際辞書学ジャーナル』の第23巻第3号。257ページから273ページに1本、そのすぐ次の275ページから306ページにもう1本、紙の辞書と電子辞書を比べた論文が並んでいます。

同じ号の、隣り合った2本の論文。ところが、出した答えは食い違っていました。

「差はない」と「電子が上」

後ろの論文を書いたのは、チェンです。中国の大学では、英語を学ぶ学生の間で、ポケットサイズの電子辞書が広まっていました。チェンは、英語の学習者が電子辞書と紙の辞書をどう使い、どう感じているかを調べ、単語の身につき方も比べました。

使い方や、感じている長所と短所には、違いがありました。けれども、文章の理解、単語を使って書く力、単語の記憶のどれにも、はっきりした差はありませんでした。違ったのは速さで、電子辞書のほうがずっと速く引けました。

前の論文は、ジェミアンコのものです。英語学習者向けの同じ英英辞典の、紙版とオンライン版を比べました。参加したのは、中級の上から上級の学生64人です。意味を読み取る課題と、英語を書く課題のどちらでも、オンライン版のほうが役に立ちました。予告なしに行った記憶のテストでも、オンライン版で引いた人のほうが、意味も、単語の組み合わせも、よく覚えていました。

「紙の辞書は手間がかかるぶん、記憶に残る」という常識は、どちらの論文でも支持されていません。

紙と画面を、そろえ直す

話は、ここで終わりません。ジェミアンコはその後も研究を続けましたが、2017年の論文で、自分の一連の研究どうしでも結論が食い違ってしまった、と書いています。

理由として考えたのは、比べ方の問題です。もともと別々に作られた紙の辞書とオンライン辞書では、ページや画面の見せ方そのものが違います。そのため、差が出ても、紙か画面かのせいなのか、見せ方のせいなのかを切り分けられません。

そこで2017年の研究では、実際のオンライン辞書の画面を印刷して、紙の辞書を作りました。中身も見た目も同じで、違うのは紙か画面かだけ、という条件です。

結果、意味を読み取る課題でも、書く課題でも、辞書の形による差はありませんでした。一方で、あとからの記憶のテストでは、辞書の形がかなり影響していました。

結論が割れる理由

ジェミアンコは、研究ごとに課題も参加者も使った辞書も違うことが、結果が割れる一因になっていると考えています。紙と電子のどちらが記憶に有利かは、いまのところ、研究全体として決着していません。

引いたあとが勝負

決着していない以上、紙か電子かで悩む時間は、あまり意味がありません。それより確かなのは、引いた単語にもう一度出会うことです。

原田英語のおすすめは、引いた単語を、ノートやアプリの単語帳に書き写しておき、数日後に意味を隠してテストすることです。紙で引いても電子で引いても、1回引いただけで覚えられる単語は多くありません。

参考文献

  1. Chen Y. (2010). Dictionary Use and EFL Learning. A Contrastive Study of Pocket Electronic Dictionaries and Paper Dictionaries. International Journal of Lexicography, 23, 275-306.

  2. Dziemianko A. (2010). Paper or Electronic? The Role of Dictionary Form in Language Reception, Production and the Retention of Meaning and Collocations. International Journal of Lexicography, 23, 257-273.

  3. Dziemianko A. (2017). Dictionary form in decoding, encoding and retention: Further insights. ReCALL, 29, 335-356.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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