英語の常識No.E14

バイリンガルは認知症になりにくいって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:03文献 2件

「バイリンガルは認知症になりにくい」のイメージイラスト

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:まだ決着していない

インドの調査では、2つ以上の言葉を話す人の認知症の発症が約4.5年遅れていました。でも、元気なうちから追いかけた研究では差が見られません。

まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。

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「2つの言葉を話す人は、認知症になりにくい」。この問いには、研究のやり方によって、違う答えが出ています。

ひとつは、すでに認知症と診断された人の記録をさかのぼって調べる研究です。もうひとつは、まだ元気なうちから大勢の人を追いかけて、誰が認知症になるかを見る研究です。前者からは「なりにくい」に近い答えが、後者からは「差がない」という答えが出てきました。

どちらの答えを信じればいいのでしょうか。まずは、前者の代表的な研究から見ていきます。

648人のカルテ

2013年、インドのハイデラバードで、アラディらの研究チームは、認知症の専門外来で診断を受けた患者648人のカルテを調べました。このうち391人が、2つ以上の言葉を話す人たちでした。

比べたのは、物忘れなどの最初の症状が出た年齢です。2つ以上の言葉を話す患者は、1つの言葉だけを話す患者より、平均して4.5年遅く認知症を発症していました。

この差は、教育、性別、職業、都市に住んでいるか農村に住んでいるか、といったほかの要因とは関係なく見られました。アルツハイマー型の認知症だけでなく、前頭側頭型や血管性といった別のタイプの認知症でも、同じように発症が遅れていました。

読み書きができない人でも

研究チームがとくに強調したのは、読み書きのできない患者でも同じ傾向が見られたことです。

2つの言葉を話す人は、学校に長く通った人が多いかもしれません。教育を受けた期間が長い人は、認知症の症状が出るのが遅いとも考えられます。もしそうなら、「言葉の数」ではなく「教育」が本当の理由かもしれません。けれども、学校教育をほとんど受けていない人たちの間でも差があったことから、研究チームは、教育だけではこの差を説明できないと考えました。

一方で、3つ以上の言葉を話しても、2つの場合と比べて、さらに発症が遅れることはありませんでした。

元気なうちから追いかけると

ただし、この研究は、すでに認知症になった人の記録をさかのぼる研究です。2つの言葉を話す人とそうでない人とで、言葉以外の暮らしぶりが違っていた可能性は、完全には取り除けません。

2017年、ムカダムらは、この種の研究をまとめて分析しました。1156本の論文から条件に合う13本を選び、元気なうちから追いかけた研究と、記録をさかのぼった研究を分けて調べたのです。

元気なうちから追いかけた研究を合わせると、2つの言葉を話す5527人が認知症になる確率は、1つの言葉を話す人とほとんど変わりませんでした。差を表す数字(オッズ比)は0.96で、1なら差がまったくないことを意味します。一方、記録をさかのぼった研究の多くでは、2つの言葉を話す人のほうが、症状の出る年齢が遅いと報告されていました。

ムカダムらは、記録をさかのぼる研究は、教育の違いや、文化によって認知症で病院にかかるタイミングが違うことなどの影響を受けやすいと指摘しています。そのため、原因と結果の関係を確かめるのには向かない、という結論でした。

たとえば、物忘れが始まってもすぐには病院に行かないことが多い地域があると考えてみてください。そこに2つの言葉を話す人が多く住んでいれば、記録の上では、2つの言葉を話す人の発症が遅く見えてしまいます。言葉の力とは関係のない理由で、差が生まれるわけです。

予防のためより、楽しみのために

判定は「まだ決着していない」です。2つの言葉を話す人の発症が遅いという報告はありますが、2つの言葉を使うことが認知症を遅らせたと言えるほどの証拠は、まだそろっていません。研究のやり方によって答えが変わる以上、どちらとも言い切れないのが今の状況です。

原田英語の考えでは、英語を学ぶ理由を「認知症の予防」に置くのはおすすめしません。効果がはっきりしないものを目的にすると、続ける気持ちが揺らぎやすくなるからです。

英語で好きな映画のせりふがわかる。海外の友だちとやりとりができる。そうした手ごたえのほうが、ずっと確かです。学び続ける習慣そのものは、それだけで人生を豊かにしてくれます。

参考文献

  1. Alladi S., Bak T., Duggirala V., Surampudi B., Shailaja M., Shukla A. et al. (2013). Bilingualism delays age at onset of dementia, independent of education and immigration status. Neurology, 81, 1938-1944.

  2. Mukadam N., Sommerlad A., Livingston G. (2017). The relationship of bilingualism compared to monolingualism to the risk of cognitive decline or dementia: A systematic review and meta-analysis. Journal of Alzheimer's Disease, 58(1), 45-54.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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