英語の常識No.E12
バイリンガルは頭の切り替えが得意(バイリンガル優位)って、ホント?

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:まだ決着していない
有名な「バイリンガルは頭の切り替えが得意」説。大人を調べた152の研究をまとめると、偏りを補正したあとには有利さが残りませんでした。
まだ決着していないとは… 研究結果が割れていて、まだ結論が出ていない常識です。
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2つの言葉を話す人の頭の中では、いつも2つの言葉が出番を争っている。そう考える研究者たちがいます。英語で話しているときも、もう一方の言葉が口から出ようとする。それを毎日おさえ続けていれば、じゃまなものをおさえる力や、やることを切り替える力が鍛えられるはずだ、という理屈です。
こうした頭の働きを、心理学では「実行機能」と呼びます。目の前の作業に集中し、関係のない情報を無視し、必要に応じて作業を切り替える力のことです。
筋の通った話に聞こえます。では、データはどうだったのでしょうか。
2004年、有利さが見えた
2004年、心理学者のビアリストクらは、中年と高齢の人を対象に、バイリンガルと1つの言葉だけを話す人を比べました。使ったのは「サイモン課題」です。色や形に合わせて左右のボタンを押す課題で、刺激が押すボタンと反対側に出ると、反応が少し遅れます。この遅れが小さいほど、じゃまな情報をうまくおさえられている、と考えます。
3つの研究で、バイリンガルのほうがこの遅れが小さくなりました。覚えておくことが多い、頭に負担のかかる条件でも、バイリンガルのほうが速く反応しました。しかも、その差は年齢が高いグループほど大きかったのです。
ビアリストクらは、バイリンガルであることが、年をとるにつれて実行機能が衰えるのを、ある程度おさえるのではないかと考えました。この研究は大きな注目を集め、「バイリンガルは頭がいい」という話が広まるきっかけのひとつになりました。
15の目盛りで測り直す
ところが、別の研究者たちが調べると、同じ結果が出ないことが続きます。2013年、パープとグリーンバーグは、3つの研究で、バイリンガルと1つの言葉を話す人を、実行機能の15の指標で比べました。サイモン課題のほか、目の動きをおさえる課題や、色と形でルールを切り替える課題なども使っています。
15の指標のどれでも、バイリンガルが有利だという結果は出ませんでした。グループの差がはっきり出たのは1つの指標だけで、しかもバイリンガルのほうが不利な向きでした。親の学歴をそろえた人たちだけで分析しても、とても流ちょうなバイリンガルだけで分析しても、結果は同じでした。
2人はさらに、もっと根本的な問題も指摘しています。ある課題で「じゃまな情報をおさえる力」を測ったつもりの点数が、似た別の課題で同じ力を測った点数と、あまり一致しないのです。そもそも、これらの課題で同じ1つの力を測れているのかが怪しい、というわけです。
152の研究をまとめると
研究ごとに結果がばらばらなら、まとめて見るしかありません。2018年、レヘトネンらは、大人を対象にした152の研究から、891の結果を集めて分析しました。論文になっていないデータも、できるだけ集めています。
補正する前の分析では、じゃまな情報をおさえる力、切り替える力、覚えながら考える力で、バイリンガルがごくわずかに有利でした。ところが、効果が出た研究ほど論文になりやすいという「出版バイアス」を補正すると、有利さの証拠は残りませんでした。
逆に、ある文字で始まる単語をできるだけ多く言うような「言葉の流ちょうさ」では、バイリンガルが少し不利でした。2つの言葉を使い分けるぶん、1つ1つの言葉に触れる量が少なくなるためかもしれない、とレヘトネンらは述べています。
レヘトネンらの結論は、今ある証拠は、大人のバイリンガルが実行機能で有利だという広く知られた考えを、系統立てて支持してはいない、というものでした。
決着はまだ、でも
この分析は大人を対象にしたもので、子どもや高齢の人について、すべてに答えが出たわけではありません。有利さがあると考える研究者もまだいて、判定は「まだ決着していない」です。ただ、少なくとも「バイリンガルになれば頭が良くなる」と言い切れるほどの証拠はありません。
原田英語の考えでは、それで英語を学ぶ価値が下がることはありません。英語ができれば、読める本、話せる人、行ける場所が増えます。それは、実行機能の点数がわずかに上がるかどうかより、ずっとはっきりした見返りです。
頭が良くなるかもしれないから学ぶのではなく、英語で会いたい人や読みたいものがあるから学ぶ。そのほうが、長く続けられるはずです。
参考文献
Bialystok E., Craik F., Klein R., Viswanathan M. (2004). Bilingualism, Aging, and Cognitive Control: Evidence From the Simon Task.. Psychology and Aging, 19, 290-303.
doi.org/10.1037/0882-7974.19.2.290✓ 実在と内容を確認済み
Paap K., Greenberg Z. (2013). There is no coherent evidence for a bilingual advantage in executive processing. Cognitive Psychology, 66, 232-258.
doi.org/10.1016/j.cogpsych.2012.12.002✓ 実在と内容を確認済み
Lehtonen M., Soveri A., Laine A., Järvenpää J., de Bruin A., Antfolk J. (2018). Is bilingualism associated with enhanced executive functioning in adults? A meta-analytic review.. Psychological Bulletin, 144, 394-425.
doi.org/10.1037/bul0000142✓ 実在と内容を確認済み
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