英語の常識No.E11
外国語訛りがあると、話の内容まで信用されにくくなるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
訛りのある人が読んだ文は、同じ台本でも少し「本当らしくない」と判断されました。ただ、聞き手が意識したり慣れたりすれば減らせます。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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「キリンは、ラクダより長いあいだ水を飲まずにいられる」
この文が本当かどうか、0から14までの目盛りで答えてください。0は「絶対にうそ」、14は「絶対に本当」です。
知っていれば迷いませんが、知らなければ、なんとなくの感覚で答えるしかありません。その「なんとなく」は、文を読み上げた人の話し方に左右されるのでしょうか。
同じ台本を読んだだけなのに
2010年、アメリカのシカゴ大学の心理学者レヴ=アリとケイサーは、この問いを実験で確かめました。聞き手は大学生28人。話し手は9人で、英語の母語話者が3人、軽い訛りのある人が3人、強い訛りのある人が3人です。訛りのある話し手の母語は、ポーランド語、トルコ語、ドイツ語、韓国語、イタリア語などでした。
話し手たちは、キリンとラクダのような雑学の文を、全部で45文読み上げました。聞き手には、どの文も話し手自身の知識ではなく、研究者が用意した文を読んでいるだけだと伝えてありました。話し手が外国の人だから知識があやしい、という理由では判断できないようにしたのです。
それでも、結果には差が出ました。訛りのある話し手が読んだ文は、母語話者が読んだ文より「本当らしくない」と評価されました。14点満点の目盛りで、軽い訛りの文の平均は6.95、強い訛りの文は6.84。どちらも母語話者の文を下回りました。
差は1点に満たない小さなものです。それでも、内容はまったく同じ台本でした。
聞き取りにくさを、うそっぽさと取りちがえる
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。レヴ=アリとケイサーは、訛りのある英語は聞き取るのに少し手間がかかるため、その手間が、文が本当かどうかの判断にまちがって結びつけられたと考えています。
人は、すっと頭に入ってくる話ほど、本当らしく感じやすいものです。訛りのせいで少し聞き取りにくいと、その引っかかりが、話の内容への引っかかりにすり替わってしまう、というわけです。
これは、話し手が悪いのではなく、聞き手の頭の中で起きる偏りです。
知っていれば、慣れていれば
2人は、2つ目の実験もしました。今度は大学生27人に、「聞き取りにくさが判断をゆがめるかどうかを調べる研究だ」と、目的を先に伝えてから同じ課題をしてもらいました。
すると、軽い訛りの文は、母語話者の文と同じくらい本当らしいと評価されました。偏りに気づいた聞き手は、それを打ち消せたのです。ところが強い訛りの文は、目的を知っていても、やはり本当らしくないと評価されました。
2021年には、ボドゥフ=グラプカとレヴ=アリが、別の方法を試しています。聞き手に前もって短い時間、外国語訛りの英語を聞かせておくと、訛りのある人の話を信じにくくなる偏りが小さくなりました。訛りに慣れて聞き取りやすくなったことが、偏りが減った理由だったと報告されています。
判定が「半分ホント」なのは、このためです。訛りがあると、話の内容が少し信用されにくくなる傾向はあります。でもその差は小さく、聞き手が意識したり、訛りに慣れたりすることで減らせます。
話し手として、聞き手として
この研究から、英語を学ぶ私たちが受け取れることは2つあります。
話し手としては、聞き手の手間を減らす話し方を心がけることです。訛りを消す必要はありません。大事な単語をはっきり言い、早口になりすぎず、文の区切りで少し間を取る。聞き取りやすさが上がれば、話の中身もそのまま受け取られやすくなります。
聞き手としては、いろいろな訛りの英語に慣れておくことです。インド、シンガポール、ナイジェリアなど、世界にはさまざまな英語があります。いろいろな英語を聞いておけば、自分の聞き取る力が上がるだけでなく、相手の話を公平に受け止める助けにもなります。
訛りは、話の中身が正しいかどうかとは関係がありません。それを知っているだけで、聞き手のあなたは少し公平になれます。
参考文献
Lev-Ari S., Keysar B. (2010). Why don't we believe non-native speakers? The influence of accent on credibility. Journal of Experimental Social Psychology, 46, 1093-1096.
doi.org/10.1016/j.jesp.2010.05.025✓ 実在と内容を確認済み
Boduch-Grabka K., Lev-Ari S. (2021). Exposing individuals to foreign accent increases their trust in what nonnative speakers say. Cognitive Science, 45(11), e13064.
doi.org/10.1111/cogs.13064✓ 実在と内容を確認済み
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