英語の常識No.E05
言語の習得には「臨界期」があるって、ホント?

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
文法を身につける力は、年齢とともに落ちていきます。ただ、その曲がり角は思われていたより遅い17歳ごろでした。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
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フェイスブックで30万回以上シェアされた、英語の文法クイズがあります。名前は「Which English?」。英文が自然かどうかを次々に答えていくと、最後に「あなたの母語は〇〇語、英語の方言は〇〇でしょう」と当ててくれる、という遊びです。
遊び半分で答えた人は、66万9498人にのぼりました。この膨大な答えが、言葉を学ぶ力と年齢の関係を調べる、これまでにない規模のデータになりました。
移住した年齢で、文法の点が変わる
「言葉は、ある年齢までに身につけないと身につかない」という考えを、臨界期説といいます。もとは母語について唱えられたもので、その年齢は思春期ごろとされてきました。
第二言語にも臨界期があるのか。1989年、心理学者のジョンソンとニューポートが確かめました。調べたのは、韓国語か中国語を母語とし、3歳から39歳のあいだにアメリカに移り住んだ46人です。アメリカで暮らした年数は、3年から26年でした。
参加者は、英語のさまざまな文法について、文が正しいかどうかを判断するテストを受けました。結果は、早く移住した人ほど、はっきりと点が高いというものでした。思春期までは、移住した年齢が上がるほど点が下がっていきます。思春期より後に来た人たちは、点が低く、人によるばらつきが大きく、移住した年齢とは関係がなくなりました。
この差は、英語に触れた量や、やる気、恥ずかしがりかどうかなどでは説明できませんでした。テストしたどの文法でも、同じ傾向が出ています。
67万人が示した曲がり角
ただ、移住した年齢で比べるだけでは、わからないことがあります。遅く来た人は、英語を学んだ年数も短いことが多いからです。点が低いのは学ぶ力が落ちたからなのか、まだ学んでいる途中だからなのか、区別がつきません。
2018年、ハーツホーン、テネンバウム、ピンカーの3人は、あのクイズのデータでこの問題に取り組みました。今の年齢、英語を始めた年齢、英語を使ってきた年数を切り分けて、文法を学ぶ力が年齢とともにどう変わるかを、計算で推定したのです。
文法を学ぶ力は、17.4歳ごろまでほとんど落ちず、そこから着実に下がっていく。これが推定の結果でした。この傾向は、身につけるのが難しい文法だけでなく、ふつうは早く覚える簡単な文法でも同じでした。
ただし、学ぶ力が保たれていても、母語話者並みになるには長い時間がかかります。研究者たちの推定では、母語話者並みの文法力に届くには、10〜12歳までに始める必要がありました。点が伸びきるまでには、母語話者でも学習者でも、30年ほどかかっていました。
扉が閉まるわけではない
ここで言う臨界期は、ある年齢で突然、学べなくなるという意味ではありません。学ぶ力は少しずつ下がっていきますが、大人になっても英語は学べます。難しくなるのは、母語話者と見分けがつかないほどの文法感覚に届くことです。
この研究には限界もあります。参加者は、ネットでクイズを見つけて自分から答えた人たちで、年齢などの情報も自己申告です。測ったのは書かれた英文の文法の判断で、発音や聞き取り、語彙は調べていません。17歳ごろから力が落ちる理由も、まだわかっていません。研究者たちは、進学や就職など生活が変わる時期であることや、脳の成熟などを可能性として挙げています。
判定が「半分ホント」なのはこのためです。年齢の影響はあります。でも、それは思春期にぱたんと扉が閉まるような話ではなく、文法についてはもっと遅く、ゆるやかに始まる変化でした。
高校生は、まだ曲がり角の手前
高校生なら、文法を学ぶ力が落ち始める前の時期にいます。原田英語のおすすめは、この時期に英語にたくさん触れておくことです。教科書の文だけでなく、自分のレベルに合った本や記事を読み、聞く量を増やしましょう。
大人の人も、手遅れではありません。母語話者と同じになることは難しくても、使える英語を身につける時間は、まだ十分にあります。67万人近い人の答えが示したのは、学ぶ力が年齢で少しずつ変わることであって、学べなくなる年齢ではありませんでした。
参考文献
Johnson J., Newport E. (1989). Critical period effects in second language learning: The influence of maturational state on the acquisition of English as a second language. Cognitive Psychology, 21, 60-99.
doi.org/10.1016/0010-0285(89)90003-0✓ 実在と内容を確認済み
Hartshorne J., Tenenbaum J., Pinker S. (2018). A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognition, 177, 263-277.
doi.org/10.1016/j.cognition.2018.04.007✓ 実在と内容を確認済み
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