英語の常識No.E04

赤ちゃんに英語のDVDを見せれば、英語の耳が育つって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:18文献 3件

「赤ちゃんに英語のDVDを見せれば、英語の耳が育つ」のイメージイラスト

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

生身の人からは外国語の音を学べた赤ちゃんが、同じ内容の映像や音声だけからは学べませんでした。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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英語の歌やお話のDVDを、赤ちゃんの前で流しておく。そんな家は少なくないのではないでしょうか。耳が柔らかいうちに英語の音を聞かせておけば、英語の耳が育つはず。気持ちはよくわかります。

この考えを、ほぼそのまま確かめた実験があります。

中国語の先生が4人やってきた

2003年、研究者のクールらは、英語を話す家庭の生後9か月の赤ちゃん32人を集めました。半分の16人には、中国語(北京語)を話す4人の大人が交代で相手をします。1回25分のうち、10分は絵本を読み、15分は人形や電車のおもちゃで遊ぶ。言葉はすべて中国語です。

これを4週間で12回、合わせて5時間ほど続けました。残りの16人は、同じように絵本とおもちゃで過ごしますが、言葉は英語です。

そのあと、英語にはない中国語の音の区別を、赤ちゃんが聞き分けられるかを調べました。音が切り替わったときに振り向くかどうかで、聞き分けを判定するやり方です。途中で抜けた子もいて、最後まで参加したのは21人でした。

正答率は、中国語で遊んだ赤ちゃんが約66%、英語で遊んだ赤ちゃんが約57%。中国語グループの成績は、台湾で中国語を聞いて育つ同じくらいの月齢の赤ちゃんと、はっきりした差がありませんでした。5時間の中国語で、英語の家庭の赤ちゃんの耳が変わったのです。

同じ先生、同じ絵本、でも画面ごし

クールらは、もうひとつ実験をしました。今度も9か月の赤ちゃん32人です。同じ4人の話し手が、同じ絵本とおもちゃを使う様子を録画して、DVDで見せました。画面には話し手の顔が大きく映り、絵本やおもちゃも見えます。回数も時間も、さっきと同じ4週間で12回です。

半分の赤ちゃんは映像と音を、もう半分は音だけを聞きました。

結果は、どちらのグループにも学習の効果が見られませんでした。成績は、中国語を一度も聞かなかった英語グループと変わらず、生身の人と過ごしたグループより低かったのです。

話し手も、絵本も、聞いた時間も同じでした。違ったのは、目の前に人がいたかどうかです。クールらは、この時期の赤ちゃんの音の学習は、人とのやりとりによって後押しされると考えています。

ただし、この実験で調べたのは、9〜10か月の赤ちゃんが、中国語の1組の音を聞き分けられるかどうかです。言葉の力すべてを測ったわけではありません。

「DVDで言葉が遅れる」とまでは言えない

では、ベビー向けのDVDは、言葉の発達に悪いのでしょうか。2007年、ジマーマンらは、2〜24か月の子どもを持つ親1008人に電話で調査しました。8〜16か月の子どもでは、ベビー向けDVDを1日1時間多く見ているほど、親が答える言葉の発達の質問票の点数が、約17点低いという関連がありました。17〜24か月の子どもでは、こうした関連は見られませんでした。

この結果は大きな話題になりましたが、あくまで「関連」です。DVDが言葉の発達を遅らせたのか、ほかの理由で両方が起きたのかは、この調査ではわかりません。

2014年には、ファーガソンとドネランが同じデータを分析し直しました。すると、分析のしかたによって、DVDの影響はプラスにもゼロにもマイナスにも見え、多くの分析で影響の大きさはほぼゼロでした。教育的な番組を見ることは、言葉の発達とプラスの関連を示す傾向がありました。メディアをまったく見ない子のほうが、言葉の発達の点数が低いという結果まで出ています。2人は、このデータからメディアと言葉の発達の関係について強い結論は出せない、とまとめています。

画面は、話しかけてくれない

つまり、「DVDで言葉が遅れる」という話には、しっかりした根拠がありません。一方で、「DVDで英語の耳が育つ」という期待にも、クールらの実験は否定的な答えを出しています。少なくとも外国語の音については、同じ内容を見せても、画面からは学べなかったのです。

小さな子に英語に触れさせたいなら、映像を流しておくだけでは足りません。大人が英語の歌を一緒に歌ったり、絵本を読んで話しかけたりするほうが、実験の結果に近いやり方です。

クールらの実験で赤ちゃんの耳を変えたのは、4週間、5時間ほど、目の前で絵本を読み、一緒に遊んでくれた人たちでした。

参考文献

  1. Kuhl P., Tsao F., Liu H. (2003). Foreign-language experience in infancy: Effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learning. Proceedings of the National Academy of Sciences, 100, 9096-9101.

  2. Zimmerman F., Christakis D., Meltzoff A. (2007). Associations between Media Viewing and Language Development in Children Under Age 2 Years. The Journal of Pediatrics, 151, 364-368.

  3. Ferguson C., Donnellan M. (2014). Is the association between children’s baby video viewing and poor language development robust? A reanalysis of Zimmerman, Christakis, and Meltzoff (2007).. Developmental Psychology, 50, 129-137.

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