英語の常識No.E07
子どもは大人よりも速く外国語を覚えるって、ホント?

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判定:ウソ
オランダに移り住んだ人たちの調査では、最初の数か月で速く上達したのは、幼い子より12〜15歳と大人でした。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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家族で海外に引っ越すと、子どもはあっという間に現地の言葉を覚え、親のほうが置いていかれる。そんな話を聞いたことはありませんか。だから語学は子どものうちに、と考える人も多いでしょう。
では、同じ時期に同じ国へ移り住んだ子どもと大人を、同じテストで比べたらどうなるでしょうか。
オランダに来た英語話者たち
1978年、心理学者のスノーとホーフナーヘル=ヘーレは、オランダに移り住んだ英語を話す人たちを調べました。対象は、3〜5歳の幼児から大人まで、いくつかの年齢グループです。授業で学ぶのではなく、オランダで暮らしながら自然にオランダ語を身につけていく様子を追いかけました。
調べ方は、ていねいなものでした。オランダに来て最初の1年のあいだに3回、オランダ語のさまざまな力を測るテストをまとめて受けてもらったのです。
最初の数か月で、いちばん速く上達したのは12〜15歳のグループと大人でした。1年が過ぎた時点で、オランダ語をいちばんよく使いこなしていたのは、8〜10歳と12〜15歳のグループです。そして3〜5歳の幼児は、すべてのテストで最も低い点でした。
スノーらは、この結果は「思春期までに学ばないと言葉は身につかない」という臨界期説を支持しない、と結論しています。
発音でも、最初は年上が有利
発音なら子どものほうが有利だろう、と思うかもしれません。スノーらは前の年の1977年に、発音についても報告しています。
実験室で、外国語の単語を聞いてまねしてもらうと、年齢が上がるほど上手にまねできました。オランダで暮らす人たちの発音を調べると、最初は年上の人のほうが有利でした。その差は、オランダ語を学び始めて4〜5か月でなくなります。10〜11か月たつと、いくつかの音では年下の子どものほうが上手になっていましたが、全体としては年齢による差はありませんでした。
幼い子どもほど発音を速く身につける、という結果は、ここでも出てきませんでした。
速さと、最後に届く高さは別
それなら、「子どものうちに始めたほうがいい」という話は間違いなのでしょうか。ここで分けて考えたいのが、上達の速さと、最後に届くレベルです。
1979年、クラッシェン、ロング、スカーセラの3人は、それまでの研究をまとめて、次のように整理しました。学んだ時間や触れた量が同じなら、文法を身につける最初の段階は、大人のほうが子どもより速く進む。年上の子どもも、年下の子どもより速い。けれども、子どものうちに自然な環境でその言葉に触れ始めた人は、大人になってから始めた人より、最終的に高いレベルに届くことが多い。
つまり、「子どものほうが速い」は誤りですが、「子どものうちに始めた人が最後には高いところまで届きやすい」には根拠がある、ということです。2つの話が混ざって、「子どもは大人より速く覚える」という常識ができあがったのかもしれません。
スノーらの調査は1年間だけのもので、その先どうなったかまではわかりません。最終的な到達度について知るには、長い年月をかけた別の研究が必要です。
年上の学習者が速い理由
なぜ年上の学習者は最初の伸びが速いのでしょうか。はっきりした答えは出ていませんが、文法のルールを理屈で理解したり、自分に合った覚え方を工夫したりできるためだと考えられます。
高校生は、その力をもう十分に持っています。原田英語のおすすめは、この強みを使い切ることです。新しい文法は、なぜそうなるのかを理解してから例文で練習する。単語は、自分でテストして覚えたかを確かめる。幼い子どもには、まだできないやり方です。
たとえば関係代名詞なら、the book which I bought yesterday という文を見ます。which 以下がどの名詞を説明しているのかを、まず理屈で確かめます。そのうえで、自分のことを書いた例文を3つ作って声に出します。理屈と練習をセットにできるのは、年上の学習者ならではの方法です。
語学は子どもにはかなわない、とあきらめる必要はありません。少なくとも最初の数か月、速く走れるのは年上のほうでした。
参考文献
Snow C., Hoefnagel-Hohle M. (1978). The Critical Period for Language Acquisition: Evidence from Second Language Learning. Child Development, 49, 1114.
doi.org/10.2307/1128751✓ 実在と内容を確認済み
Snow C. E., Hoefnagel-Höhle M. (1977). Age differences in the pronunciation of foreign sounds. Language and Speech, 20(4), 357-365.
doi.org/10.1177/002383097702000407✓ 実在と内容を確認済み
Krashen S. D., Long M. A., Scarcella R. C. (1979). Age, rate and eventual attainment in second language acquisition. TESOL Quarterly, 13(4), 573-582.
doi.org/10.2307/3586451✓ 実在と内容を確認済み
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