英語の常識No.E02

L/Rの聞き分けを練習しても、発音はうまくならないって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:07文献 2件

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判定:ウソ

発音の練習を一度もしなくても、LとRの聞き分け訓練だけで発音がよくなった、という実験があります。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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京都にある研究所の一室。ヘッドホンをつけた日本人の若者が、英語の単語を1つ聞いては、ボタンを押していきます。聞こえたのは、LとRだけが違う2つの単語のうちのどちらか。正解ならチャイムが鳴り、まちがえるとブザーが鳴ります。正解するたびに、1円のボーナスがつきました。

1回は20〜30分。これを1日3回、15日間。合わせて45回、時間にすると15時間から22時間半です。この間、彼らは英語の単語を口に出す練習をしていません。やったのは、聞いて、答えることだけでした。

それでも訓練が終わると、彼らの英語の発音はよくなっていました。

口を動かさない発音練習

1997年、研究者のブラッドローらは、この訓練の結果を報告しました。訓練の前と後に、LとRで区別される英語の単語を参加者に読み上げてもらい、録音します。その録音を英語を母語とする人たちに聞いてもらい、発音がよくなったかを2つの方法で確かめました。

ひとつは、訓練前と訓練後の発音を聞き比べてもらう方法です。訓練後の発音のほうが、LやRとしてよい音だと評価されました。

もうひとつは、録音した単語を聞かせて、LとRだけが違う2つの単語のどちらに聞こえるかを答えてもらう方法です。訓練後の発音のほうが、話し手が言おうとした単語として正しく聞き取られました。

耳のほうも、もちろん伸びていました。訓練で聞いたことのない単語を、聞いたことのない人が話しても、聞き分ける力は保たれていたのです。研究者たちは、聞き分けの訓練で身についたものが、話す力にも移ったと結論しています。

3か月たっても残っていた

すぐに消えてしまう変化なら、あまり意味がありません。同じ研究グループは1999年、訓練から3か月が過ぎた参加者を、もう一度テストした結果を発表しました。

その報告によると、訓練を受けたのは、京都の同志社大学で集めた19〜22歳の11人です。海外に住んだことも、特別な英語の訓練を受けたこともない人たちでした。3か月後のテストには、そのうち9人が戻ってきました。

聞き分けの正答率は、平均で訓練前が約65%、訓練直後が約81%、3か月後が約78%。少し下がったものの、直後との差ははっきりしたものではなく、伸びはほぼ残っていました。

発音も同じです。英語を母語とする人が、彼らの発音を聞いて正しい単語を当てられた割合は、訓練前が約68%、直後が約73%、3か月後は約77%でした。3か月後の数字は、訓練前よりはっきり高くなっていました。

ただし、参加者は11人と少なく、全員が同じ大学で集められた人たちです。発音が英語の母語話者並みになったわけでもありません。それでも、口を動かさない訓練で発音が変わり、その変化が3か月残ることは確かめられました。

耳が先、口があと

なぜ、聞くだけで発音が変わるのでしょうか。研究が示したのは「聞き分けで得たものが発音に移った」という結果までで、その仕組みはまだはっきりしていません。考えられる理由のひとつは、自分の声を聞き分けられるようになることです。

LとRの違いが聞こえない人は、自分の発音がLになっているのかRになっているのかも、聞いて判断できません。うまく言えたかどうかを確かめられないので、直しようがないのです。違いが聞こえるようになると、自分の声についても「今のはLに近い」とわかるようになります。

発音練習の前に、耳を作る

発音を直したいとき、多くの人は口の形や舌の位置から練習を始めます。それも大切ですが、順番を少し変えてみましょう。

まず、LとRだけが違う単語のペアを、いろいろな人の声で聞き分けます。この研究の訓練でも、英語を話す5人の声が使われていました。1回20〜30分ほどで十分です。

耳が慣れてきたら、自分の声を録音して、お手本と聞き比べます。違いが聞こえる耳は、いつでもそばにいる発音の先生になります。最初は、お手本との違いがよくわからないかもしれません。そのときは、もう一度聞き分けの練習に戻ればいいのです。

口を変えたいなら、まず耳から。舌の練習をしなかった11人の発音の変化が、そのことを教えてくれます。

参考文献

  1. Bradlow A., Pisoni D., Akahane-Yamada R., Tohkura Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. The Journal of the Acoustical Society of America, 101, 2299-2310.

  2. Bradlow A. R., Akahane-Yamada R., Pisoni D. B., Tohkura Y. (1999). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: Long-term retention of learning in perception and production. Perception & Psychophysics, 61(5), 977-985.

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