英語の常識No.E40

リスニングの練習は、同じ先生の声だけで十分って、ホント?

判定日 読了 約3分音声 3:50文献 3件

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判定:ウソ

1人の声だけで練習した耳は、知らない人の声になるとつまずきました。いろいろな声で練習すると、新しい声にも通用します。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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練習のあいだは、ちゃんと伸びていました。テストの前と後で比べても、成績は上がっていました。ところが、聞いたことのない人の声でテストしたとたん、その伸びは消えてしまったのです。

1993年、アメリカのライヴリーらが報告した実験の一場面です。練習に使ったのは、1人の話し手の声だけでした。

先生が替わると、通じなくなる耳

ライヴリーらは、英語のLとRの聞き分けが苦手な日本人に、聞き分けの訓練をしました。right と light のように、LとRだけが違う単語のペアを聞いて、どちらかを答える練習です。

実験は2つありました。1つめでは、何人もの話し手の声を使い、単語の最初、子音が重なるところ、母音にはさまれたところなど、いろいろな位置のLとRを聞かせました。すると、正答が増え、答えるまでの時間も短くなりました。伸びはほどほどでしたが、統計的にはっきりしたものです。そのうえ、練習で聞いた人の新しい単語にも、初めて聞く人の新しい単語にも、力が通用しました。

2つめの実験では、別の参加者に、1人の話し手の声だけで練習してもらいました。単語の位置は5種類と、こちらも幅を持たせています。参加者は練習中に上達し、テストの前と後でも成績が上がりました。それでも、新しい話し手の声になると、力は通用しませんでした。

著者たちは、声のばらつきが、新しい音のカテゴリーをしっかり作るうえで大事な役わりを果たしている、と結論しています。

聞く練習が、口まで変えた

この「いろいろな声で練習する」方法は、その後も使われました。1997年、ブラッドローらは、日本人の大人に同じ方式で、長い期間にわたって聞き分けの訓練をしました。

全員の聞き分けが上達し、その力は、初めて聞く人の声の新しい単語にも通用しました。この研究で目を引くのは、発音まで変わったことです。訓練の前と後に、参加者がLとRを含む単語を読み上げた録音を、英語を母語とする人たちに聞いてもらいました。すると訓練後の発音のほうが、評価が高く、LかRかを正しく聞き取ってもらえる割合も上がっていました。

発音の練習はしていません。聞く練習だけで、口から出る音も変わったのです。

いろいろな声を集める

ここから言えるのは、聞き取りの練習では、声の種類を増やす価値がある、ということです。同じ1人の声だけでは、その人の声の特徴ごと覚えてしまい、ほかの人の声に対応できない可能性があります。

ライヴリーらの実験は、LとRという1組の音についての研究です。ふつうの会話を聞き取る力に、そのまま当てはめられるとは限りません。それでも、教科書の音声だけでなく、ニュース、ポッドキャスト、映画などで、男女や年齢、話す速さの違う声を聞いておくことは、むだになりません。

原田英語のおすすめは、同じ文を、話し手の違う音声で聞き比べることです。同じ単語が、人によってどう違って聞こえるか。その違いに気づくことが、どの声でも通じる耳への近道です。

参考文献

  1. Logan J., Lively S., Pisoni D. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. The Journal of the Acoustical Society of America, 89, 874-886.

  2. Bradlow A., Pisoni D., Akahane-Yamada R., Tohkura Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. The Journal of the Acoustical Society of America, 101, 2299-2310.

  3. Lively S. E., Logan J. S., Pisoni D. B. (1993). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. II: The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categories. The Journal of the Acoustical Society of America, 94(3), 1242-1255.

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