英語の常識No.E37
速読を身につければ、理解度そのままで何倍も速く読めるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
理解を保ったまま2倍、3倍の速さで読むのは難しいとわかっています。速さを決めるのは、目よりも言葉の力です。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 3:58
1959年、イヴリン・ウッドという人が「リーディング・ダイナミクス」という速読の講座を始めました。それから半世紀以上、速読は形を変えながら人気を保ち、いまではスマートフォンのアプリにもなっています。
「理解はそのままで、読む速さが2倍、3倍に」。もしそうなら、英語の長文で毎回時間が足りなくなる受験生には、これほどありがたい話はありません。
心理学者5人の答え
2016年、レイナーら5人の心理学者が、この問いに正面から取り組みました。人が文字を読むしくみについて、科学がこれまでに明らかにしてきたことをまとめました。そのうえで、速読の講座やアプリにお金を払おうとしている人に向けて、何が言えるかを検討したのです。
答えは、速さと正確さはトレードオフの関係にある、というものでした。片方を上げれば、もう片方が下がるということです。速く読めば読み落としが増え、ていねいに読めば時間がかかる。この関係から自由になれる方法は、見つかっていません。
著者たちは具体的な数字も挙げています。ふつう1分間に250語ほどで読む人が、500語や750語に速度を上げたとします。そのうえで、ふつうの速さで読んだときと同じくらい内容を理解できる見こみは低い、というのです。
1語ずつ流れてくる画面
速読アプリの中には、画面の同じ場所に単語を1つずつ、次々に表示するものがあります。目を動かさなくてすむので速く読める、という考え方です。
2014年、ショッターらはこれを確かめる実験をしました。参加者に文を読んでもらい、目が通り過ぎた単語を、すぐに見えなくする仕掛けを使ったのです。これで、どの単語も1回しか読めなくなります。1語ずつ流れるアプリと、よく似た状況です。
私たちの目は、文を読みながら、ときどき少し前の単語に戻っています。この「読み返し」は、ふつうの読み方の一部です。実験では、読み返しができなくなると、内容の理解が下がりました。まぎらわしい文だけでなく、ふつうの文でも同じでした。著者たちは、目の動きをなくすタイプの速読アプリは、本当に役に立つのか疑わしい、と述べています。
読み返しは、読むのが下手な人のくせではなく、理解を支える動きだったのです。
速く読める人は、何が違うのか
では、速く読める人は何が違うのでしょうか。レイナーらの答えは、言葉の力です。読む速さの中心にあるのは目の動かし方ではなく、言葉を処理する力だと、著者たちは述べています。
ですから、理解を落とさずに速く読みたいなら、読む練習を重ね、語彙を増やして、言葉の使い手として上達することが近道になります。一方で、内容をくわしく理解する必要がないときは、速読や拾い読みで先へ進めば、ある程度の理解は得られるとも書いています。
英語の試験でいえば、設問で探す情報が決まっているときは、拾い読みが役に立ちます。でも、筋をきちんと追う必要がある段落を飛ばし読みすれば、理解が落ちるのは当然です。原田英語のおすすめは、読み方を目的によって切りかえること。そして、ふだんは辞書なしで読めるやさしい英文を、たくさん読むことです。速さは、語彙と読んだ量のあとからついてきます。
参考文献
Rayner K., Schotter E., Masson M., Potter M., Treiman R. (2016). So Much to Read, So Little Time. Psychological Science in the Public Interest, 17, 4-34.
doi.org/10.1177/1529100615623267✓ 実在と内容を確認済み
Schotter E. R., Tran R., Rayner K. (2014). Don't Believe What You Read (Only Once): Comprehension Is Supported by Regressions During Reading. Psychological Science, 25(6), 1218-1226.
doi.org/10.1177/0956797614531148✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





