英語の常識No.E36
英文を読むとき、単語の注釈(グロス)は不要って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
注釈つきで読んだ人は、注釈なしの人より1.7倍ほど多く単語を覚えていました。42の研究をまとめた結果です。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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45.3パーセントと、26.6パーセント。英文を読んだあと、そこに出てきた知らない単語の意味をどれだけ覚えていたか。注釈つきで読んだ人と、注釈なしで読んだ人の平均です。
注釈(グロス)とは、本文の横や下に添えた、単語の意味のメモのことです。「注釈に頼ると、自分で考えなくなる」「何も見ずに文脈から読むのが本当の力だ」。そんな助言を聞いたことがある人もいるでしょう。けれども冒頭の数字は、メモがあるかないかで、残る単語の量が1.7倍ほど変わることを示しています。
42の研究をまとめると
この数字を出したのは、ヤナギサワ、ウェッブ、ウチハラの3人です。2020年、3人は注釈と単語学習を調べた42の研究を集め、合わせて3,802人分のデータをまとめて分析しました。たくさんの研究の結果をまとめて、全体の傾向を見る方法で、メタ分析と呼ばれます。
読んだ直後のテストでは、注釈ありが45.3パーセント、注釈なしが26.6パーセントでした。時間をおいたテストでも、33.4パーセント対19.8パーセント。時間がたてば忘れる分はありますが、差はそのまま残っていました。
注釈は、自転車の補助輪のように「早く外すべきもの」と思われがちです。少なくとも単語を増やすという目的では、外さずに使ったほうが得だ、というのがこの分析の答えです。
注釈がないと、読み手は何をするか
なぜ、注釈なしでは覚えにくいのでしょうか。1996年にオランダのフルスティンらが行った実験が、手がかりになります。
参加したのは、フランス語を学ぶオランダの上級の大学生です。フランス語の短編小説を読んでもらい、3つのグループに分けました。知らない単語の訳を余白に書いておくグループ、辞書を使ってよいグループ、何の助けもないグループです。読み終えたあと、本文に出てきた16の単語を覚えているかをテストしました。単語には、本文に1回だけ出るものと、3回出るものがありました。
同じ単語に何度も出会うことの効果は、余白の訳や辞書で意味がわかるときに、より大きく出ました。助けのない読み手は、知らない単語を読み飛ばしたり、意味をまちがって推測したりしがちだ、と著者たちは説明しています。意味がわからないまま何度その単語を目にしても、記憶はなかなか育たないということです。
いちばん効いた注釈の形
ヤナギサワらの分析では、注釈の形による違いも比べられました。
最も効果が大きかったのは、選択式の注釈です。たとえば単語の横に意味の候補をいくつか並べ、文に合うものを読み手が選ぶ形です。反対に効果が低めだったのは、本文の中に意味を埋めこむ注釈と、巻末にまとめた用語集でした。
注釈の言葉は、英語などの学んでいる言語より、母語のほうがよく覚えられました。この傾向は、初級でも上級でも変わりませんでした。文字だけの注釈と、絵や音声のついた注釈の間には、はっきりした差は出ていません。
選択式がなぜよく効くのかは、この分析だけではわかりません。候補から選ぶには、前後の文と照らし合わせる必要があります。その手間が、記憶を助けているのかもしれません。
注釈は、自分でも作れる
多読用の本や学習者向けの読み物には、注釈つきのものがたくさんあります。選べるなら、注釈つきを選んでかまいません。
注釈のない英文なら、自分で作ります。知らない単語を調べたら、余白に日本語で小さく書きこむ。フルスティンらの実験でいえば、辞書を使ったグループに近い読み方です。2回目に読むときは、書きこみを指で隠して、意味を思い出せるか試してみましょう。
原田英語のおすすめは、書きこみを1ページに数語までにすることです。余白が日本語で埋まると、英文より注釈を読んでいる時間のほうが長くなってしまいます。注釈は、使いこなせば単語をためていくための足場になります。
参考文献
Yanagisawa A., Webb S., Uchihara T. (2020). HOW DO DIFFERENT FORMS OF GLOSSING CONTRIBUTE TO L2 VOCABULARY LEARNING FROM READING?. Studies in Second Language Acquisition, 42, 411-438.
doi.org/10.1017/s0272263119000688✓ 実在と内容を確認済み
Hulstijn J. H., Hollander M., Greidanus T. (1996). Incidental Vocabulary Learning by Advanced Foreign Language Students: The Influence of Marginal Glosses, Dictionary Use, and Reoccurrence of Unknown Words. The Modern Language Journal, 80(3), 327-339.
doi.org/10.1111/j.1540-4781.1996.tb01614.x✓ 実在と内容を確認済み
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