英語の常識No.E09

訛りがあると、英語は通じないって、ホント?

判定日 読了 約4分音声 4:51文献 3件

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。

判定:ウソ

訛りの強さと、伝わりやすさは別のものです。強い訛りがあると評価された英語でも、多くはきちんと聞き取られていました。

ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。

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あなたが、ある実験の聞き手になったとします。ヘッドホンから、英語を学んでいる人の話す英語が流れてきます。あなたの仕事は3つ。聞こえた英文をそのまま書き取ること。訛りがどのくらい強いかを9段階でつけること。そして、どのくらいわかりやすかったかを、やはり9段階でつけることです。

3つの答えは、どのくらい一致するでしょうか。訛りが強ければ、書き取りもまちがいだらけになりそうな気がします。

3つのものさし

1995年、研究者のマンローとダーウィングは、まさにこの実験をしました。聞き手は英語を母語とする18人。話し手は、中国語(北京語)を母語とする英語学習者10人と、比べるための英語の母語話者2人です。学習者たちには、自由に話してもらった英語の一部を使いました。

2人は、ふだんまとめて「発音のよさ」と呼ばれがちなものを、3つに分けて考えました。どのくらい訛って聞こえるかという「訛りの強さ」。聞き手がどのくらい楽にわかったと感じたかという「わかりやすさ」。そして、実際に何語正しく書き取れたかという「聞き取れた度合い」です。

強い訛りでも、言葉は届く

結果は、多くの人の思いこみとは違うものでした。学習者の話した英語は、全体として書き取りの成績が高く、わかりやすさの評価も高くなりました。ところが訛りの評価は幅広く散らばり、「とても訛りが強い」の側に入るものも少なくありませんでした。

訛りが強いと評価された英語でも、聞き手はちゃんと書き取れていたことになります。

聞き手1人ひとりについて関係を調べると、訛りの評価は、話し手の発音や文法のまちがいの数とは、多くの聞き手で関係がありました。訛りとわかりやすさの評価が関係していた聞き手は、それより少なくなります。訛りと実際の書き取りの成績が関係していた聞き手は、さらに少数でした。

マンローとダーウィングの結論は、訛りの強さは伝わりやすさと関係はあるものの、強い訛りが必ずしも伝わりやすさを下げるわけではない、というものです。

日本語訛りでも、ものさしは別々

この研究の話し手は、英語がかなりできる学習者でした。では、まだ中級くらいの学習者ならどうでしょうか。

2人は1997年、話し手を広げて調べ直しました。広東語、日本語、ポーランド語、スペイン語を母語とする中級の学習者の英語を、英語を母語とする26人に聞いてもらったのです。その結果、中級の学習者でも、訛りの強さ、わかりやすさ、聞き取れた度合いの3つが、ある程度ばらばらに動く関係は変わりませんでした。日本語を母語とする人の英語も、その中に含まれています。

聞き手の手間を減らす話し方

ただし、訛りに何の影響もないわけではありません。2人は1995年の別の実験で、英語の母語話者20人に、英語の文を聞いてそれが正しいか間違っているかを判断してもらいました。文を読み上げたのは、英語の母語話者10人と、中国語を母語とする人10人です。

中国語訛りの英文は、判断するのに少し長く時間がかかりました。また、わかりにくいと評価された文ほど、判断に時間がかかる傾向がありました。一方で、訛りの強さそのものと、判断にかかる時間との関係は見られませんでした。

聞き手の負担を左右していたのは、訛りの強さより、わかりやすさのほうだったのです。

判定が「ウソ」なのはこのためです。訛りがあっても英語は通じます。目指すべきは、訛りを消すことより、聞き手が楽にわかる英語です。原田英語のおすすめは、単語の強く読む位置を辞書で確かめること、文の中で大事な単語をはっきり言うこと、そして急がずに話すことです。

たとえば hotel は、英語では後ろの「テル」を強く読みます。日本語の「ホテル」の感覚で読むと、聞き手は一瞬、どの単語かを探すことになるかもしれません。その一瞬が積み重なると、聞き手は疲れてしまいます。訛りそのものより、こうした小さな手間を1つずつ減らしていくほうが、伝わる英語への近道です。

訛りの強さを測るものさしと、伝わるかどうかを測るものさしは、別のものです。満点を取りにいくなら、伝わるかどうかのほうです。

参考文献

  1. Munro M., Derwing T. (1995). Foreign Accent, Comprehensibility, and Intelligibility in the Speech of Second Language Learners. Language Learning, 45, 73-97.

  2. Derwing T. M., Munro M. J. (1997). Accent, intelligibility, and comprehensibility: Evidence from four L1s. Studies in Second Language Acquisition, 19(1), 1-16.

  3. Munro M. J., Derwing T. M. (1995). Processing time, accent, and comprehensibility in the perception of native and foreign-accented speech. Language and Speech, 38(3), 289-306.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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