数字でわかるNo.N13
文法の学習能力は、17.4歳ごろまでほぼ保たれるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
約67万人のデータを分析すると、文法を学ぶ力は17.4歳ごろまでほぼ保たれ、そのあと少しずつ下がっていました。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 5:07
「あなたの母語と、英語の方言を当てます」。そんな触れこみの英文法クイズが、インターネットで広まったことがあります。
10分ほどで答えられる問題を解くと、最後に、コンピューターが予想したあなたの母語と方言の候補が3つ出てきます。このしかけが受けて、クイズはフェイスブックだけで30万回以上シェアされました。
このクイズの正体は、研究者たちが仕かけた大がかりな調査でした。ねらいは、外国語の文法を学ぶ力が、何歳まで続くのかを確かめることです。
66万9498人分の答え
クイズを作ったのは、ハーツホーン、テネンバウム、ピンカーの3人です。2018年に発表した論文では、英語を母語とする人と、外国語として学んだ人、合わせて66万9498人分の答えを分析しました。
問題は132問。受け身、関係詞、前置詞、時制の一致など、英文法のいろいろな項目が入っています。日本語や中国語、アラビア語、スペイン語などを母語とする人がつまずきやすい問題も、わざと選んであります。
それまでの研究には、大きな弱点がありました。英語を習い始めた年齢で比べようとしても、始めた年齢、今の年齢、学んできた年数が、どうしてもからみ合ってしまうのです。早く始めた人は、学んだ年数も長くなります。
3人は、この3つを切り分ける計算のモデルを作りました。データが数十万人分あったからこそ、できた分析です。
17.4歳で、カーブが曲がる
結果は、はっきりしていました。文法を学ぶ力は、子どものころから10代の終わりまで、ほとんど落ちていませんでした。そして17.4歳ごろから、着実に下がり始めていたのです。
これは、むずかしい文法だけの話ではありませんでした。ふつうは小さいうちに身につく、やさしい文法でも、同じ傾向が見られました。
学ぶ力が下がり始めるのが思春期の終わりだという結果は、それまで考えられていたよりずっと遅いものでした。研究チームは、学ぶ力の高い時期が、はっきりした区切りを持って終わることを支持する結果だとしています。
大人は学べない、ではない
この結果を「17歳を過ぎたら手遅れ」と読むのは、まちがいです。
論文の中で研究チームは、大人が新しい言語を学べることは明らかだと書いています。問題にしているのは、大人がネイティブとまったく同じ水準まで届くことが、めったにないという点です。論文が紹介している別の研究では、学び始めの数か月に限ると、大人のほうが子どもより成績がよいことも報告されています。
また研究チームの分析では、10〜12歳という少し遅めの年齢で始めた人も、最終的には、生まれたときから2つの言語で育った人とほぼ同じ水準でした。少なくとも英語圏で暮らす場合、ネイティブも学習者も、成績が頭打ちになるまでには30年ほどかかっていました。
そもそも、なぜ子どものほうが外国語に強いのかについては、昔から説がたくさんあります。脳が柔らかいから。早く始めるぶん、学ぶ年数が長いから。母語がじゃまをしないから。まちがいをおそれないから。研究チームは、こうした説のどれが正しいのか、意見はまとまっていないと書いています。
17歳ごろに下がり始める理由も、まだわかっていません。脳の成熟の影響かもしれません。一方で、研究チームは、この年齢が多くの社会で、就職や専門の学校へ進む時期と重なることも指摘しています。生活が変わって、言葉を学ぶ機会や意欲が減るのかもしれない、というわけです。
高校生のうちに、たっぷり浴びる
原田英語のおすすめは、高校生のうちに、できるだけたくさんの英文にふれておくことです。文法を学ぶ力がいちばん保たれている時期に、問題集だけでなく、本物の英語を読んだり聞いたりしておきましょう。
大人の人も、あきらめる必要はありません。ネイティブとまったく同じ文法感覚をめざすのでなければ、大人も十分に学べます。17.4歳を過ぎても、英語の勉強に締め切りはありません。
参考文献
Hartshorne J., Tenenbaum J., Pinker S. (2018). A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognition, 177, 263-277.
doi.org/10.1016/j.cognition.2018.04.007✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





