数字でわかるNo.N14
エビングハウスの忘却曲線は、現代の再実験でも再現されたって、ホント?

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先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
約130年前のエビングハウスの実験を、ひとりの若者が70時間かけて再現しました。描かれた忘却曲線は、元の曲線とよく似ていました。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
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1880年代のドイツで、ひとりの心理学者が、自分自身を相手に奇妙な実験を続けていました。ヘルマン・エビングハウスです。
彼が覚えたのは、意味のない音節でした。日本語でたとえるなら「ぬほ」「てき」のような、意味を持たない音のかたまりです。ふつうの単語は、覚えやすさが単語ごとにばらばらです。意味のない音節なら、条件をそろえやすいと考えたのです。それを13個ならべた列を、2回続けてまちがえずに言えるまで、くり返し読み上げます。
被験者は、エビングハウスただひとり。実験は7か月にわたり、多い日には1日3回行いました。こうして描かれたのが、心理学でいちばん有名なグラフのひとつ、「忘却曲線」です。
覚え直すのが、どれだけ楽か
エビングハウスが記憶を測った方法は、少し変わっています。覚えた列を時間をおいてもう一度覚え直し、最初より何割楽になったかを調べたのです。これを「節約率」といいます。
たとえば、最初は25回くり返して覚えた列を、1日後に20回で覚え直せたとします。5回分、つまり20%の節約です。まったく忘れていなければ100%、ゼロから覚え直しなら0%になります。
ここで気をつけたいのは、節約率は「覚えている割合」とは違うということです。思い出せなくなった列でも、覚え直すのは最初より速いことがあります。
130年後、オランダの22歳が挑んだ
2015年、オランダのミュールとドロスは、この実験をできるだけ忠実に再現しました。被験者は、論文の著者のひとりで当時22歳のドロス本人です。
用意したのは70のリスト。1つのリストは、13個の音節の列が8本、合わせて104音節です。エビングハウスの速さに合わせ、1分間に150拍のリズムで音節を小声で読み上げました。最初はメトロノームを使いましたが、気が散るのでやめ、リズムを体で覚えてからは、ときどき速さを確かめるだけにしました。
覚え直すまでの間隔は、エビングハウスと同じ20分、1時間、9時間、1日、2日、6日、31日。実験の期間は75日、学習にかけた時間は合わせて70時間でした。
曲線は、ほぼ重なった
結果の曲線は、エビングハウスのものとよく似ていました。節約率は、エビングハウスが20分後に58%、1日後に34%。ドロスは20分後に47%、1日後に32%でした。はじめの数時間で急に下がり、そのあとはゆっくり下がっていく形も同じです。
ドイツでは以前にも、ふたりの被験者で同じ実験を再現した研究がありました。エビングハウス、その2人、ドロスの4本の曲線を重ねると、形はよく似ていました。研究チームは、人による違いがあって当然なのに、これほど似ているのは目を見はるほどだと書いています。
違いが大きかったのは31日後です。エビングハウスの21%に対して、ドロスは4%でした。研究チームは理由を推測するしかないとしたうえで、31日のリストを実験の初めのころに覚えたことが影響した可能性などを挙げています。
もうひとつ、曲線はなめらかではありませんでした。ドロスの節約率は、9時間後の28%より、1日後の32%のほうが高かったのです。研究チームは、24時間の点から上向きにはね上がっている可能性が高いと結論しました。
このはね上がりを、睡眠の効果と考える研究者もいます。論文も、睡眠が記憶に影響するという最近の研究を紹介しています。ただし、この実験で原因が睡眠だと確かめたわけではありません。
忘れても、ゼロには戻らない
忘却曲線が教えてくれるのは、覚えたことは最初の数時間で急に失われる、ということです。でも、節約率で見れば、1か月たっても覚え直しは最初より楽でした。忘れたように見えても、頭のどこかに何かが残っているのです。
原田英語のおすすめは、覚えた翌日に1回目の復習をして、そのあと数日後、さらに1週間後と、間隔を広げていくことです。忘れかけたころに覚え直すのは、遠回りではありません。この実験のとおりなら、2回目は1回目より速く終わるはずです。
参考文献
Murre J., Dros J. (2015). Replication and Analysis of Ebbinghaus’ Forgetting Curve. PLOS ONE, 10, e0120644.
doi.org/10.1371/journal.pone.0120644✓ 実在と内容を確認済み
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