数字でわかるNo.N16
人間の言語は、どれも1秒あたり約39ビットの情報を伝えているって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
早口の言語も、ゆっくりの言語も、1秒あたりに伝える情報量はほぼ同じ。17言語の平均は、毎秒約39ビットでした。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
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英語のニュースを聞いて、速すぎてついていけないと感じたことはありませんか。英語を話す人は、日本語を話す人より、たくさんの情報を早口でつめこんでいるのでしょうか。
手がかりになる数字があります。日本語と英語で使われる音節の種類を数えると、その比は1対11。日本語は数百種類しかないのに、英語は7000種類近くあるのです。音の最小単位である音素の数も、日本語は25、英語は40を超えます。
「か」「さ」「た」のように、日本語の音節の多くは、子音と母音1つずつでできています。英語には、strength のように、母音1つのまわりに子音がいくつもくっついた音節があります。組み合わせが多いぶん、英語の1音節は、日本語の1音節より多くの情報を運べます。
だとすると、1音節で運べる情報が少ない日本語は、情報を伝えるのが遅い言語なのでしょうか。
17の言語で、同じ文章を読む
2019年、クペらのチームは、この問いに答えるために、17の言語を比べました。ヨーロッパとアジアにまたがる、9つの語族の言語です。日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、トルコ語、ベトナム語、タイ語などが入っています。
まず、それぞれの言語を母語とする大人170人に、同じ内容の15の短い文章を、ふだんの速さで読み上げてもらいました。録音した音声は、合わせて約24万音節です。
そこから2つの数字を出しました。1つめは話す速さで、1秒あたりに何音節話すか。2つめは、1音節あたりの情報量です。こちらは、言語ごとの大量の文章から、それぞれの音節がどれくらい予測しにくいかを計算しました。単位はビットで、1ビットは、2つのうちどちらかを当てる問題1回分の情報にあたります。
速い言語は、1音節が軽い
1音節あたりの情報量は、言語によってかなり違いました。いちばん少ないバスク語で4.8ビット、いちばん多いベトナム語で8.0ビットです。
話す速さも、人によって大きく違いました。いちばんゆっくりな人で1秒に約4.3音節、いちばん速い人で約9.1音節。2倍以上の開きがあります。全体の平均は、1秒に6.63音節でした。
ところが、この2つをかけ合わせて「1秒あたりの情報量」を出すと、数字はぐっとそろいました。平均は毎秒39.15ビットで、言語による差は、話す速さや1音節の情報量の差よりも小さかったのです。
1音節に少しの情報しか乗らない言語は、速く話される。たくさん乗る言語は、ゆっくり話される。そうやって、どの言語も、ほぼ同じ速さで情報を届けていました。
研究チームは、情報がぎっしりつまった音節を速く話す言語や、情報の少ない音節をゆっくり話す言語は、見当たらないと書いています。前者は、話す人にも聞く人にも負担が大きすぎる。後者は、同じ内容を伝えるのに、話す人が長いかたまりを頭にとどめておかなければならない。そうした理由で避けられているのではないか、という考えです。
ただし、この研究で使ったのは、用意された文章を読み上げた音声です。研究チームは、言語どうしを比べやすくするために、あえてこの方法を選んだと説明しています。読んだ文章には、電話で問い合わせをする場面など、いろいろな種類がありました。それでも、文章による違いは、話す人や言語による違いよりずっと小さいものでした。研究チームは、自然な会話でも同じ傾向があるはずだと考えていますが、この研究でそれを確かめたわけではありません。
英語が速く聞こえても、あわてない
論文の冒頭で、研究チームはこう書いています。音節の種類がこれほど違っても、日本語と英語は、情報を伝えるという話し言葉の大事な役目を、同じようにはたしている、と。
英語のニュースや映画のせりふが、ものすごく速く聞こえることがあります。でも、この研究から考えると、英語の話し手が、日本語の話し手より多くの情報を1秒につめこんでいるわけではなさそうです。音節ごとに乗っている情報が多い分、聞き取りに慣れないうちは速く感じるのかもしれません。
原田英語のおすすめは、速さそのものにおびえず、英語の音節の形に耳を慣らしていくことです。子音がつながる音や、弱く短くなる音に慣れてくると、同じ速さの英語が、前より聞き取りやすく感じられるはずです。
参考文献
Coupé C., Oh Y., Dediu D., Pellegrino F. (2019). Different languages, similar encoding efficiency: Comparable information rates across the human communicative niche. Science Advances, 5.
doi.org/10.1126/sciadv.aaw2594✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





