英語の常識No.E15

2つの言語で育てると、言葉の発達が遅れるって、ホント?

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判定:半分ホント

1つの言葉だけで比べると、少し遅れて見えます。でも2つの言葉の語彙を合わせると、差はありませんでした。

半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。

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お金を2つの財布に分けて持っている人と、1つの財布にまとめて持っている人がいるとします。片方の財布の中身だけを比べたら、分けて持っている人のほうが貧しく見えるでしょう。でも、2つの財布を合わせれば、持っている金額は同じかもしれません。

2つの言葉で育つ子どもの言葉の発達も、これに似た見方で考える必要があります。

フロリダの2歳児103人

2012年、アメリカの心理学者ホフらは、フロリダ州南部に住む子どもたちの言葉の発達を調べました。スペイン語と英語の2つの言葉で育つ子どもが47人、英語だけで育つ子どもが56人です。どちらのグループも、経済的に恵まれた家庭の子どもたちで、家庭の条件はそろえてありました。

子どもたちが1歳10か月、2歳1か月、2歳6か月のときに、言える単語の数や、単語をつなげた文の複雑さを調べました。測り方は、親が単語のリストを見て、子どもが言える単語にしるしをつける方法です。

片方だけ見るか、合わせて見るか

英語だけで比べると、英語だけで育つ子どものほうが、語彙も文法も進んでいました。単語の数の差は、統計的にもはっきりしたものでした。

ただし、その遅れは長いものではありません。ホフらの見積もりでは、この時期の遅れは3か月に満たないものでした。2歳1か月のバイリンガルの子どもの英語の語彙は、英語だけで育つ子どもの1歳10か月のころと、ほぼ同じくらいだったのです。

では、2つの財布を合わせるとどうなるでしょうか。ホフらは、バイリンガルの子どもが言える英語の単語とスペイン語の単語を足して、「合計の語彙」を出しました。すると、英語だけで育つ子どもとのあいだに、差はありませんでした。

単語をつなげて話し始める時期も、同じように比べられます。英語だけで見ると、1歳10か月の時点ではバイリンガルの子どものほうが遅れていましたが、2歳1か月までに差はなくなりました。どちらかの言葉で単語をつなげていればよいことにすると、初めから差はありませんでした。

2つの言葉で育つ子どもは、言葉を学ぶ力が劣っているわけではありません。覚えた単語が、2つの言葉に分かれて入っているのです。

聞いた量と、伸びの関係

この研究で、もうひとつはっきりしたことがあります。バイリンガルの子どもの中で比べると、家庭で英語を聞く割合が高い子ほど、英語の力が伸び、スペイン語の力は弱くなっていました。家庭で聞く英語がおよそ8割の子どもたちは、英語のほとんどの測定で、英語だけで育つ子どもと差がありませんでした。

それぞれの言葉の力は、その言葉をどれだけ聞いたかと強く結びついている。2つの言葉で育つ子どもは、聞く時間を2つの言葉で分けているので、1つ1つの言葉の伸びはゆっくりに見える、というわけです。

なお、この研究にも限界があります。測ったのは親の記入による1種類のテストだけで、子どもが話す力だけを見ています。調べた年齢も、1歳10か月から2歳6か月までの短い期間です。

判定が「半分ホント」なのは、このためです。1つの言葉だけで比べると遅れて見えるのは本当ですが、2つを合わせれば遅れはありません。

英語を学ぶ私たちへのヒント

この研究は、日本で英語を学ぶ人にとっても大事なことを教えてくれます。言葉の力は、その言葉に触れた量と結びついている、ということです。

毎日日本語の中で暮らす私たちは、英語を聞く割合がとても小さい環境にいます。たとえば起きている時間が1日16時間あるとして、英語の授業が1時間なら、英語は全体の1割にも届きません。家庭で聞く英語が8割だった子どもたちとは、比べものにならない量です。英語の力を伸ばしたいなら、英語に触れる時間を、意識して増やすしかありません。原田英語のおすすめは、すきま時間を英語に回すことです。通学の電車で英語の音声を聞く、寝る前に英語の本を数ページ読む。1回は短くても、毎日続ければ、触れる量は確実に増えていきます。

財布の中身を増やす方法は、入れるお金を増やすことです。英語の財布も同じです。

参考文献

  1. HOFF E., CORE C., PLACE S., RUMICHE R., SEÑOR M., PARRA M. (2012). Dual language exposure and early bilingual development. Journal of Child Language, 39, 1-27.

文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。

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