英語の常識No.E19
やさしい本を1冊読めば、新しい単語がたくさん身につくって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
1冊読んで3か月後に意味を覚えていたのは、25語のうち1語ほど。新しい単語を増やすには、読む量がまるで足りません。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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英語の本を1冊、最後まで読み切ったとします。知らなかった単語のうち、いくつが自分のものになったでしょうか。10語でしょうか、20語でしょうか。1冊ぶんの英語に目を通したのですから、それなりの数を期待したくなります。
2003年、ウェアリングとタカキは、この期待を数字で確かめました。3か月後に意味を覚えていた新しい単語は、平均で1語ほどでした。
『小公女』に仕込まれた25語
実験に使われたのは、『小公女(A Little Princess)』を、400語の基本単語で書き直した本です。このように、学習者のレベルに合わせて使う単語の数をしぼった本を、グレーディッドリーダーと呼びます。読んだのは、中級以上の英語力をもつ日本人の女性15人でした。
研究者たちは、本の中の25語に細工をしました。つづりを変えて、だれも見たことのない単語にしたのです。こうしておけば、「もともと知っていた」ということが起こりません。
25語は、本の中に出てくる回数でグループ分けされていました。15〜18回も出てくる単語から、1回しか出てこない単語までです。テストは、読み終えた直後、1週間後、3か月後の3回。単語の形を見分けられるか、ヒントつきで意味がわかるか、ヒントなしで意味が言えるかを調べました。
8回より少ない単語は、ひとつも残らなかった
読むだけで単語が身につくことは、確かにありました。けれども、ほとんどの単語は身につきませんでした。
本の中で何度も出てきた単語ほど、覚えられやすく、忘れにくい傾向がありました。逆に、8回より少なくしか出会わなかった単語は、3か月後には、意味を覚えていたものがひとつもありませんでした。全体では、25語のうち意味を覚えていたのは、平均で1語ほどです。
1冊を読み切るのは、学習者にとって小さくない仕事です。それでも、新しい単語の収穫はこのくらいでした。研究者たちは、読書だけで新しい単語を増やすには、ばく大な量のグレーディッドリーダーを読む必要がある、とまとめています。
ただし、この実験の参加者は15人だけで、読んだ本も1冊だけです。数字は目安として受け取るのがよいでしょう。
では、やさしい本はむだなのか
そうではありません。研究者たちは同じ論文で、グレーディッドリーダーの価値は、新しい単語の数だけで測るべきではない、とも書いています。すでに知っている単語を育て、豊かにする働きにも目を向けるべきだ、というのです。
たとえば、知っている単語でも、いろいろな文の中で出会い直すうちに、使われる場面や、いっしょに出てくる単語が見えてきます。やさしい本が得意なのは、こうした仕事です。
新しい単語は、別の入り口から
原田英語のおすすめは、役割を分けることです。新しい単語は、単語帳やカードで覚える。覚えた単語には、やさしい本の中で何度も出会い直す。1冊で終わらせず、同じレベルの本を何冊も続けて読むと、同じ単語にくり返し出会えます。
8回より少ない出会いでは、ひとつも残らなかった。この数字を覚えておけば、1冊読み終えたあとの物足りなさにも、がっかりせずにすみます。その本は、知っている単語を育てるために読んだのです。
参考文献
Waring R., Takaki M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader?. Reading in a Foreign Language, 15, 130-163.
doi.org/10.64152/10125/66776✓ 実在と内容を確認済み
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