心理学の雑学12選:人に話したくなる「心と脳のクセ」を論文つきで紹介

読む前に予想してみよう!
優秀な人がちょっとしたドジをすると、だれから見ても好感度が上がる
1966年の実験で、優秀な人物がコーヒーをこぼしたときに好感度が上がった差は、偶然の範囲を出なかった。はっきりしたのは、平凡な人物がこぼすと好感度が下がったこと。
- 対象
- 大学生など
- 規模
- 各研究で数十〜数百人
- 研究の種類
- 心理学実験(複数研究のまとめ)
- 確かさ
- ★★★☆☆
優秀な人のちょっとした失敗は好かれる? 頼みごとをすると好かれる? 実験で確かめられた心理学の雑学を12個、元の研究とあわせて紹介する。
ひとことで言うと人の心には、不思議な「クセ」がたくさんある。実験で確かめた12個!
心理学の雑学で、人に話したくなるものを知りたい――そんな人のために、実験で確かめられた「心と脳のクセ」を12個集めました。
結論から言うと、人は「みんなが自分を見ている」と思い込んだり、自分の弱さを必要以上に厳しく見たりと、ちょっとズレた見方をしがちです。
01人間関係の心理学雑学5選
1. 初対面の相手は、あなたを思っているより好き初対面の会話のあと、人は相手からの好感度を低く見積もりがち。この「好かれ度ギャップ」は数か月続くこともあります(→好かれ度ギャップ)。
2. あなたの失敗、みんなそんなに見ていない恥ずかしいTシャツを着て部屋に入った実験で、気づいた人は本人の予想の約半分でした(→スポットライト効果)。
3. 「デキる人のドジは好かれる」は半分だけ本当
「優秀な人のドジは好かれる」は「しくじり効果(プラットフォール効果)」として有名ですが、1970年の研究では、好かれるかどうかが見る人の自尊心によって変わりました。いつでも好かれるわけではなさそうです(→しくじり効果)。
4. 頼みごとを聞いてあげた相手を、人は好きになりやすい1969年の実験では、参加者は実験の中で賞金をもらいました。そのあと実験者本人から「実は自腹なので返してほしい」と頼まれて返した人は、頼まれなかった人より、その実験者を好きだと答えました。「ベンジャミン・フランクリン効果」として知られる現象です。人は「好きでもない人を助けた」という矛盾を嫌い、気持ちのほうを合わせるという説明があります(→認知的不協和)。ただし、この説明のもとになった認知的不協和の有名な実験には、近年の大規模な追試ではっきり再現されなかったものもあります。
5. 弱さを見せるのは、自分が思うほどカッコ悪くないドイツ・マンハイム大学のブルックらは、7つの研究で「好きと告白する」「体の欠点を見せる」「助けを求める」場面を調べました。自分がする場合は弱さに見えるのに、他人がする場合は勇気に見える――「ビューティフル・メス効果」です。
02脳の「うっかり」系の雑学4選
6. ドアを通ると、何をしに来たか忘れやすい脳が出来事を「場面」ごとに区切るためと考えられています。ただし、いつも起きるわけではありません(→ドア効果)。
7. 「考えるな」と言われると、考えてしまう先にシロクマを考えないよう我慢した人は、最初から考えてよいと言われた人より、あとでシロクマを多く思い浮かべました(→シロクマ実験)。
8. 騒がしい場所でも、自分の名前は聞こえる無視しているはずの音声の中の自分の名前に、約3人に1人が気づきました(→カクテルパーティー効果)。
9. 自分で自分をくすぐれないのは、脳の先読みのせい脳が自分の動きから感触を予測して、感覚を弱めているのです(→くすぐったさの正体)。

03「ものの見え方」がゆがむ雑学3選
10. 文字の順番がバラバラでも、なぜか読める脳が前後の文脈などから単語を予測して読むためです。ただし、よく出回る「ケンブリッジ大学の研究によると」という話は、そんな研究は見当たらず、ネットで広まった作り話でした(→タイポグリセミア)。
11. 自分で組み立てた家具には、高い値段をつけたくなる自分で組み立てた収納箱に、完成品より約6割高い値段をつけた実験もあります(→IKEA効果)。
12. 集合写真だと、顔が少し"盛れる"グループの中の顔は魅力的に見えやすい――ただし効果は小さく、日本で2回追試したところ、はっきりとは再現されませんでした(→チアリーダー効果)。
04まとめ
12個の心理学雑学に共通するのは、人の見方は、自分が思うほど正確ではないということです。
落ち込んだときこそ、今日の雑学を思い出してください。相手から見たあなたは、案外すてきに映っているかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPsychology experiments have revealed many surprising habits of the mind.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Our minds have many strange habits. For example, after we meet someone for the first time, they usually like us more than we think. In one old experiment, a very smart person spilled coffee.
People liked him a little more, but the difference was too small to be sure. When an ordinary person did the same thing, people clearly liked him less. Also, if you ask someone for a small favor, they may start to like you more.
78 words ・ CEFR A2
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私たちの心には、不思議なクセがたくさんあります。たとえば、初めて誰かに会った後、相手はたいてい私たちが思うより私たちのことを好きでいてくれます。ある昔の実験では、とても優秀な人がコーヒーをこぼしました。
人々はその人を少し好きになりましたが、その差は小さすぎて、確かとは言えませんでした。平凡な人が同じことをすると、人々ははっきりとその人を好きでなくなりました。また、誰かに小さな頼みごとをすると、その人はあなたのことをもっと好きになるかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1文 Our minds have many strange habits. の具体例が並ぶので B。
Q2. What happened when the ordinary person spilled coffee?
When an ordinary person did the same thing, people clearly liked him less とあるので D。
Q3. In this passage, "a favor" means ...
ask someone for a favor は「頼みごとをする」。相手にしてもらう親切な行いのことなので A。
Psychology experiments have revealed many surprising habits of the mind. In 1966, Elliot Aronson and his colleagues played recordings of quiz contestants to students. When an average contestant spilled coffee at the end, students clearly liked him less. When a highly skilled contestant did the same, his ratings rose only slightly, possibly by chance. The idea that a skilled person's blunder makes him more likable is called the pratfall effect.
In 1969, people who were asked by an experimenter to return their prize money liked him more than those who were not asked. More recently, a German team found that showing vulnerability, such as admitting a mistake, looks weak to ourselves but brave to others. We often judge ourselves more harshly than other people do.
125 words ・ CEFR B1
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心理学の実験は、心の意外なクセを数多く明らかにしてきました。1966年、エリオット・アロンソンさんらは、クイズの出場者の録音を学生たちに聞かせました。平凡な出場者が最後にコーヒーをこぼすと、学生たちのその人への好感度ははっきり下がりました。とても優秀な出場者が同じことをすると、評価はわずかに上がっただけで、偶然だった可能性があります。優秀な人のへまで好感度が上がるという考えは、しくじり効果と呼ばれています。
1969年には、実験者から賞金を返してほしいと頼まれた人は、頼まれなかった人よりもその実験者を好きになりました。より最近では、ドイツのチームが、ミスを認めるなど弱さを見せることは、自分には弱く見えても、他人には勇気あることに見えることを発見しました。私たちは他人よりも自分を厳しく評価しがちなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the pratfall effect?
The idea that a skilled person's blunder makes him more likable is called the pratfall effect とあるので C。実験ではっきりしたのは、平凡な出場者の好感度が下がった方。
Q2. What did the 1969 experiment show?
asked ... to return their prize money liked him more than those who were not asked とあるので A。
Q3. What is the writer's main conclusion?
最終文 we often judge ourselves more harshly than other people do. がまとめなので D。
Many popular facts about psychology come from genuine experiments, though their strength varies. In 1966, Elliot Aronson and colleagues had students listen to recordings of a candidate for a quiz competition. When an average candidate spilled coffee, he was clearly rated as less likable. A highly competent candidate who did the same got higher ratings, but not by enough to rule out chance, so this famous pratfall effect is weaker than it sounds. A 1969 study reported a related twist: participants who were asked by the experimenter to return prize money, supposedly because it was his own, liked him more than those who were not asked, a result often called the Ben Franklin effect and explained by the urge to resolve the contradiction of helping someone we do not particularly like.
But the two older studies were small, and later work suggests that the pratfall effect depends on factors such as self-esteem and gender, so findings like these should be treated as tendencies rather than rules. In 2018, Anna Bruk and colleagues showed across seven studies that confessing feelings, asking for help, or revealing bodily flaws appears weak when we imagine doing it ourselves but courageous when others do it.
200 words ・ CEFR B2
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心理学についてよく知られた事実の多くは本物の実験から来ていますが、その確かさはさまざまです。1966年、エリオット・アロンソンさんらは、クイズ大会の出場候補者の録音を学生たちに聞かせました。平凡な候補者がコーヒーをこぼすと、好感度ははっきり下がりました。とても有能な候補者が同じことをすると評価は上がりましたが、偶然の可能性を否定できるほどの差ではなかったため、この有名なしくじり効果は、聞こえるほど確かなものではありません。1969年の研究は、関連する意外な結果を報告しました。賞金は実は自分のお金だからという理由で実験者に返してほしいと頼まれた参加者は、頼まれなかった参加者よりその実験者を好きになったのです。
これはベンジャミン・フランクリン効果とよく呼ばれ、特に好きでもない人を助けたという矛盾を解消したいという衝動で説明されます。しかし、2つの古い研究は小規模で、その後の研究ではしくじり効果は自尊心や性別などの要因に左右されることが示唆されているので、こうした発見は規則ではなく傾向として扱うべきです。2018年、アンナ・ブルックさんらは7つの研究を通して、気持ちを打ち明ける、助けを求める、体の欠点を明かすといったことは、自分がすると想像すると弱く見えるのに、他人がすると勇気あることに見えることを示しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 1966 study show most clearly?
When an average candidate spilled coffee, he was clearly rated as less likable とあるので A。有能な候補者の評価が上がった差は偶然の範囲だった。
Q2. How is the Ben Franklin effect explained in the passage?
the urge to resolve the contradiction of helping someone we do not particularly like と説明されているので B。
Q3. Why does the writer say the findings should be treated as tendencies rather than rules?
the two older studies were small ... depends on factors such as self-esteem and gender とあるので C。
重要単語
- likableB2形容詞好感の持てるShe seemed more likable after she laughed at her mistake.
like+-able。likeable とつづることもある。名詞は likability(好感度)。 - blunderC1名詞・動詞(うっかりした)へま、失敗Everyone makes a small blunder sometimes.
mistake より「うっかり・不注意」の色が強い。make a blunder「へまをする」。 - favorB1名詞頼みごと、親切な行為Can I ask you a favor?
ask A a favor / ask a favor of A「Aに頼みごとをする」。in favor of ~「~に賛成して」も頻出。 - vulnerabilityC1名詞弱さ、もろさShowing vulnerability can build trust.
形容詞 vulnerable「傷つきやすい」。be vulnerable to ~「~に弱い」。 - competentB2形容詞有能なA competent leader admits mistakes.
名詞 competence「能力」。反対は incompetent。compete(競う)とは別語なので注意。 - biasB2名詞偏り、先入観Our memory has many biases.
cognitive bias「認知バイアス」。be biased against ~「~に偏見を持つ」。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Aronson, Willerman & Floyd (1966) The effect of a pratfall on increasing interpersonal attractiveness, Psychonomic Sciencedoi.org
- Helmreich, Aronson & LeFan (1970) To err is humanizing sometimes: Effects of self-esteem, competence, and a pratfall on interpersonal attraction, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Jecker & Landy (1969) Liking a Person as a Function of Doing Him a Favour, Human Relationsdoi.org
- Bruk, Scholl & Bless (2018) Beautiful mess effect: Self-other differences in evaluation of showing vulnerability, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










