心理学ホント

いじめの現場の88%に「見ている子」がいた。止めに入ると、半分以上はすぐ止まった

いじめの現場の88%に「見ている子」がいた。止めに入ると、半分以上はすぐ止まった

読む前に予想してみよう!

周りの子どもがいじめを止めようとしても、ほとんど効果はない

研究カード(どんな研究?)
対象
小学1〜6年生(カナダ)ほか
規模
観察された58人+8,000人超の介入研究
研究の種類
自然観察研究・クラスターRCT・メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

校庭の観察研究で、いじめの88%には周りに子どもがいたが、止めに入ったのは19%。でも止めに入ると57%はいじめが止まった。「見ている子」こそカギだった。

ひとことで言うといじめを見ている子は、止める力を一番持っている人かもしれない。

もくじ
  1. 校庭のいじめを「録画」して数えた
  2. 「見ているだけ」にも役割がある
  3. 「見ている子」を変えるプログラム
  4. まとめ

いじめは、加害者と被害者の「2人の問題」だと思われがちです。でも実際には、その場にはたいてい「見ている子」がいることがわかっています。

カナダの研究者たちが校庭でこっそり(もちろん許可を得て)いじめの場面を記録したところ、ほとんどのいじめに観客がいた。そして、その観客が動いたとき、半分以上のいじめがすぐに止まっていたのです。

01校庭のいじめを「録画」して数えた

止め方には、攻撃的なやり方も半分近く(47%)含まれていました。一方、被害者のそばに行く、2人のあいだに入るといったおだやかな介入もあり、いじめを止める方法は一つではありません。

02「見ているだけ」にも役割がある

フィンランドのSalmivalliさんらは1996年、小学6年生を対象に、いじめの場面で子どもたちがどんな役割を取っているかを調べました。

  • 加害者:いじめを始める
  • 加担者:加害者に加わる
  • はやし立てる子:笑ったり見物したりして盛り上げる
  • 傍観者(局外者):関わらないようにその場を離れる・黙っている
  • 擁護者:被害者を守る、先生に伝える
  • 被害者

この研究のポイントは、いじめが集団の中で起きる現象だということ。笑って見ているだけでも、加害者にとっては「ウケている」というごほうびになりえます。逆に、周りが乗ってこなければ、いじめは続けにくくなります。

いじめを動かすのは、周りを取り囲む「見ている子」たちかもしれない
いじめを動かすのは、周りを取り囲む「見ている子」たちかもしれない

03「見ている子」を変えるプログラム

この考え方から生まれたのが、フィンランドのKiVa(キヴァ)といういじめ防止プログラムです。KiVaは、加害者を罰することより、周りの子が被害者の味方になるよう、授業やゲームを通して働きかけます。

Kärnäさんらは2011年、フィンランドの78校・約8,200人の小学4〜6年生を、くじ引きでKiVa導入校と通常校に分けて比べました。その結果、9か月後にはいじめの被害や加害の報告が減るなど、11項目中7項目で効果が確認されました。

また、Polaninさんらのメタ分析(2012年)は、12のいじめ防止プログラム・約1万3000人のデータから、プログラムによって周りの子が介入する行動が増えたことを示しました。効果は幼稚園〜中学2年生(K-8)のグループより高校生で大きかったそうです。

04まとめ

いじめの現場には、ほとんどの場合「見ている子」がいる。そして、その子が動いたとき、半分以上のいじめがすぐに止まっていました。

正義のヒーローになる必要はありません。笑わない、あとで声をかける、大人に伝える。小さな一歩でも、いじめの空気は変えられる。それが研究の示す希望です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWe often think of bullying as a problem between two people, but most bullying happens with an audience. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

We often think of bullying as a problem between two people, but most bullying happens with an audience. In a Canadian study, researchers used wireless microphones and video cameras to record children on elementary school playgrounds. Peers were present in 88 percent of bullying episodes, yet they stepped in only 19 percent of the time.

When they did intervene, the bullying stopped in 57 percent of cases. A Finnish study showed that children take different roles in bullying. Even those who only laugh and watch can encourage the bully. Based on this idea, Finland developed KiVa, a program that teaches classmates to support victims. In a study of about 8,200 students, it reduced reports of bullying.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

私たちはいじめを2人の間の問題だと考えがちですが、ほとんどのいじめは観客がいる中で起こります。カナダの研究で、研究者たちはワイヤレスマイクとビデオカメラを使って、小学校の校庭での子どもたちの様子を記録しました。いじめの場面の88%で周りに同年代の子どもがいましたが、彼らが割って入ったのは19%だけでした。

介入したときには、57%のケースでいじめが止まりました。フィンランドの研究は、子どもたちがいじめの中でさまざまな役割を取っていることを示しました。笑って見ているだけの子どもでさえ、加害者を勢いづけてしまうことがあります。この考えをもとに、フィンランドは、クラスメートが被害者を支えるよう教えるプログラム「KiVa」を開発しました。約8,200人の生徒を対象にした研究で、このプログラムはいじめの報告を減らしました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. How often did peers step in during bullying episodes?

Q3. Why might laughing and watching encourage the bully?

重要単語

  • bystanderC1
    名詞傍観者・その場にいる人Bystanders can help stop bullying. by(そばに)+stander(立つ人)。bystander effect「傍観者効果」は心理学の入試頻出テーマ。
  • interveneC1
    動詞介入する・止めに入るShe decided to intervene when she saw it. inter-(間に)+vene(来る)=「間に入る」。名詞は intervention(介入)。
  • victimB1
    名詞被害者The victim felt alone until a friend helped. fall victim to ~「~の犠牲になる」は頻出表現。名詞 victimization は「被害を受けること」。
  • defenderB2
    名詞守る人・擁護者Defenders make a big difference in class. 動詞 defend(守る)。defense(防御)とあわせて覚える。
  • reinforceC1
    動詞強める・助長するLaughing can reinforce the bully's behavior. re-(再び)+in-(中に)+force(力)。心理学では「行動を強化する」の意味で使う。
  • anti-bullyingB2
    形容詞いじめ防止のThe school started an anti-bullying program. anti-(反対の)は anti-war、antibiotic(抗生物質)などにも使われる接頭辞。

4コマでわかる

いじめの現場の88%に「見ている子」がいた。止めに入ると、半分以上はすぐ止まったの4コマ漫画
カナダの校庭でいじめを観察した研究で、いじめの88%には周りに子どもがいたのに、止めに入ったのは19%だけ。でも止めに入ると、57%のケースでいじめが止まっていたらしい。「見ている側」には、思った以上に力がある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Hawkins, Pepler & Craig (2001) Naturalistic Observations of Peer Interventions in Bullying, Social Developmentdoi.org
  2. Salmivalli et al. (1996) Bullying as a group process: Participant roles and their relations to social status within the group, Aggressive Behaviordoi.org
  3. Kärnä et al. (2011) A Large-Scale Evaluation of the KiVa Antibullying Program: Grades 4–6, Child Developmentdoi.org
  4. Polanin, Espelage & Pigott (2012) A Meta-Analysis of School-Based Bullying Prevention Programs' Effects on Bystander Intervention Behavior, School Psychology Reviewdoi.org