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急いでいる時ほど信号が赤ばかりなのはなぜ?「隣の車線は速い」錯覚と記憶のクセ

急いでいる時ほど信号が赤ばかりなのはなぜ?「隣の車線は速い」錯覚と記憶のクセ

読む前に予想してみよう!

渋滞で「隣の車線のほうが速い」と感じるとき、実際に隣が速いことは絶対にない

研究カード(どんな研究?)
対象
運転を学ぶ人
規模
映像実験の参加者+交通シミュレーション
研究の種類
実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

急ぐ日に赤信号が増えるわけではない。イライラした場面ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よくある」と感じる脳のクセが主な理由と考えられる。隣の車線が速く見えるのは、抜かれる時間のほうが長いことから起きる似た錯覚。

ひとことで言うと赤信号がふえたんじゃない。イライラした赤だけ、よく覚えてるんだ!

もくじ
  1. 「隣の車線は速い」をNatureが検証した
  2. 抜かれる時間は長く、抜く時間は一瞬
  3. 赤信号の記憶は「濃く」残る
  4. どんでん返し:本当に「隣が速い」こともある
  5. まとめ

遅刻しそうな朝に限って、信号が次々と赤になる。のんびりしている日は青ばかりなのに……。

答えを先に言うと、急いでいる日だけ赤信号が増えているわけでは(たいてい)ありません。イライラした出来事ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よく起きる」と感じてしまうという脳のクセが原因です。じつはこれ、「隣の車線のほうが速く見える」錯覚と同じ仲間なのです。

01「隣の車線は速い」をNatureが検証した

実際は自分のほうが速いのに、なぜ隣が速く見えるのでしょう。

02抜かれる時間は長く、抜く時間は一瞬

研究チームはコンピューターで車の流れを再現して、理由を説明しました。

車は、速く流れるときは車間距離が開き、遅いときはぎゅっと詰まります。すると、自分の車線が遅いときは、隣の車がまばらに長い時間をかけて次々と追い抜いていきます。逆に自分が速いときは、詰まった隣の車列を短い時間で一気に抜き去ります。

結果として、たとえ平均速度が同じでも、「抜かれている時間」のほうが長くなりやすいのです。さらに人は、抜かれる側のほうにより注意を向けやすいとも考えられています。

速い流れは車間が開き、遅い流れは詰まる。だから「抜かれる時間」が長く見える
速い流れは車間が開き、遅い流れは詰まる。だから「抜かれる時間」が長く見える

03赤信号の記憶は「濃く」残る

信号も同じ構造です。

急いでいるときの赤信号は、イライラという強い感情と結びついて記憶に残ります。一方、青信号はスムーズすぎて、通り過ぎた瞬間に忘れてしまう。

心理学者のトヴェルスキー(Tversky)さんとカーネマン(Kahneman)さんは1973年、人は思い出しやすいものほど「よく起こる」と判断しがちであることを示し、これを「利用可能性ヒューリスティック」と呼びました。さらに、悪い出来事は良い出来事より強く心に残りやすいことも、多くの研究をまとめた2001年のレビューで指摘されています。

つまり、「急いでいる日は赤ばかり」という感覚は、記憶のサンプルが赤信号のほうにかたよっているだけかもしれないのです。

04どんでん返し:本当に「隣が速い」こともある

ただし、話にはオチがあります。

哲学者のボストロム(Bostrom)さんは、別の見方を紹介しています。遅い車線には車がたくさん詰まっているので、ある瞬間にランダムに選んだ1台の運転者は、遅い車線にいる確率のほうが高い。つまり「隣のほうが速い」と感じている運転者は、統計的には本当に遅い車線にいることが多い、というわけです。

また信号についても、青信号が連続するよう時間を調整している道路では、急いで速く走ると次の信号に早く着きすぎて、かえって赤に当たりやすいこともありえます。

05まとめ

急いでいる時に信号が赤ばかりに感じるのは、イライラした場面ほど記憶に残り、思い出しやすいことを「よくある」と感じる脳のクセのせいでした。隣の車線が速く見えるのも、同じ「見え方・注目のかたより」の仲間です。

赤信号に止まったら、深呼吸。それはあなたを遅らせる敵ではなく、ほんの数十秒の休憩時間です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do traffic lights seem to be red whenever we are in a hurry? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do traffic lights seem to be red whenever we are in a hurry? Usually, there are not really more red lights. Instead, our memory is biased. Red lights make us frustrated, and frustrating moments are easier to remember than smooth ones.

In 1973, two psychologists showed that people judge things that come to mind easily as more common. A similar illusion happens in traffic. In a 1999 study published in Nature, researchers showed video of rush-hour traffic to people learning to drive.

Although the filming car was moving slightly faster than the next lane, about 70 percent of viewers said the next lane was faster. Being passed by other cars seems to stay in our minds longer than passing them.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

急いでいるときに限って、なぜ信号は赤に見えるのでしょうか。たいていの場合、実際に赤信号が増えているわけではありません。そうではなく、私たちの記憶がかたよっているのです。赤信号は私たちをイライラさせ、イライラした瞬間はスムーズな瞬間より思い出しやすいのです。

1973年、2人の心理学者は、人は思い浮かびやすいものほど「よくある」と判断することを示しました。似たような錯覚は交通でも起こります。『Nature』に掲載された1999年の研究で、研究者たちはラッシュアワーの交通の映像を、運転を学んでいる人たちに見せました。

撮影した車は隣の車線より少し速く進んでいたのに、見た人の約70%が隣の車線のほうが速いと答えました。他の車に抜かれることは、抜くことよりも長く心に残るようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. In the 1999 study, which lane was actually faster?

Q3. According to the passage, why might people remember red lights better than green lights?

重要単語

  • biasB2
    名詞かたより、偏見Memory bias makes red lights feel more common. be biased against / toward ~「~に対して偏見がある/~をひいきする」。cognitive bias は「認知バイアス」。
  • overtakeB2
    動詞追い越すA sports car overtook us on the highway. overtake-overtook-overtaken。アメリカ英語では pass もよく使う。「(感情が)襲う」の意味もある。
  • laneB1
    名詞車線The left lane looks faster than ours. もとは「小道」。memory lane(思い出の道)は a trip down memory lane「懐かしい思い出にひたること」。
  • frustrationB2
    名詞いらだち、欲求不満Frustration makes events easier to remember. 動詞 frustrate、形容詞 frustrated(いらだった)/frustrating(いらだたせる)の使い分けに注意。
  • availabilityC1
    名詞思い出しやすさ、利用可能性The availability of a memory affects our judgment. available(利用できる)の名詞形。availability heuristic は行動経済学の重要用語。
  • illusionB2
    名詞錯覚、幻想The faster next lane is often an illusion. optical illusion「目の錯覚」。be under the illusion that ~「~と思い込んでいる」。
急いでいる日に限って信号が赤ばかり…は記憶のクセ。Natureの研究では、実は自分の車線が少し速いのに、映像を見た人の7割が「隣の車線が速い」と答えたらしい。抜かれた悔しさは覚えていて、抜いた時は忘れる。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Redelmeier & Tibshirani (1999) Why cars in the next lane seem to go faster, Naturedoi.org
  2. Tversky & Kahneman (1973) Availability: A heuristic for judging frequency and probability, Cognitive Psychologydoi.org
  3. Baumeister et al. (2001) Bad is Stronger than Good, Review of General Psychologydoi.org